勢いを増すスマートフォン市場――iPhone、Androidに存在感アナリストの視点(2/3 ページ)

» 2010年06月09日 08時00分 公開
[賀川勝(矢野経済研究所) ,ITmedia]

2010年の見通し

 2010年における国内のスマートフォンの出荷台数は、認知度の高まり、商品ラインアップの充実を受け、前年実績46%増の284万台になる見通しだ。スマートフォンの普及に向けて、特に通信事業者各社が本格的な取り組みを始めており、これが出荷台数を引き上げると予測できる。

 特に、各社によるAndroid搭載製品の投入が進むだろう。NTTドコモが4月に発売した「Xperia」は初回出荷が完売し、店頭での販売ランキングで上位に食い込むなど、立ち上がりは好調だ。またソフトバンクモバイルが4月末に発売した「HTC Desire」も初回出荷分は完売しており、Android端末の人気が顕著に現れている。

 6月にはKDDIが初のコンシューマー向けスマートフォンとして「ISシリーズ」の販売を予定している。また同月には、ソフトバンクモバイルからiPhoneの次世代モデルが発表されるとうわさされている。秋季以降も通信事業者各社はスマートフォンの新機種を打ち出す見通しだ。市場における注目度の高さはしばらく継続すると推察される。

メーカー別の市場推移

 メーカー別ではAppleが引き続き優位性を発揮するとみられる。また、Xperiaを投入したソニーエリクソンやHTC Desireを発売したHTC製の端末は、出荷台数の増加が見込まれる。

 Androidが急速に市場に浸透しつつある一方、これまで日本市場で実績を上げてきたWindows Moblleは、次世代OS「Windows Phone 7」待ちの状況である。また、海外市場で絶大な人気を誇るBlackBerryは、メールを中心としたコミュニケーションツールとしての性格が強い。だが携帯メールが普及した日本市場では、用途がビジネス向けなどに限定されている。

 スマートフォンの投入は海外メーカーが主体であり、国内メーカーからは東芝やシャープなど一部にとどまっている。その背景には、iPhone以外の多くのスマートフォンの出荷が少数にとどまっていることが挙げられる。

 出荷台数は減少傾向にあるものの、1機種当たり20万台以上の出荷実績を残している携帯電話と比べると、スマートフォンの出荷規模は非常に小さい。世界販売を行う海外メーカーはスケールメリットを生かせるが、海外に販路を持たない国内メーカーにとって、スマートフォンの開発は難しいのが実情だ。

 しかし、海外メーカーの製品は国内市場特有のニーズを満たしきれていない。スマートフォンが一般ユーザーに普及するには、ワンセグやおサイフケータイといったハードウェア面に加え、各通信事業者が提供するメールサービスの送受信への対応などが必須となってくる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ