企業とクラウド事業者をつなぐ存在に、シトリックスが戦略説明

シトリックスは、クラウドコンピューティング市場における同社の立場を説明した。

» 2010年06月09日 08時45分 公開
[國谷武史,ITmedia]
米Citrix Systemsのスーニル・プティ氏

 シトリックス・システムズ・ジャパンは6月8日、クラウドコンピューティング分野における同社の事業戦略について国内メディア向けに説明した。NetScaler製品に関する新施策も併せて発表した。

 クラウド分野での戦略について、米Citrix Systemsネットワーク&クラウド製品グループのバイスプレジデントを務めるスーニル・プティ氏は、まず企業顧客から寄せられているニーズを紹介した。

 クラウドコンピューティングは、企業が自社でシステム環境を構築・運用する「プライベートクラウド」と、データセンター事業者などのプロバイダーが提供する環境を利用する「パブリッククラウド」に大別される。プティ氏によれば、プライベートクラウドではセキュリティや統制が、パブリッククラウドでは柔軟性のあるサービス形態やコストが特徴になるという。「企業はプライベートとパブリックの双方の機能を利用したいと考えている。われわれの戦略ではそれを支援する施策が柱になる」(プティ氏)という。

 同社は、5月に米国サンフランシスコで開催したユーザーカンファレンスで、クラウドサービス事業者向けのソリューションを発表している。

 クラウドサービス事業者向けのソリューションの特徴についてプティ氏は、オープン性、拡張性、「ターンキー(完成品での受け渡し)」を挙げている。オープン性では「Citrix Open Cloud Framework」という構想を打ち出した。これは、MicrosoftやVMwareなど他社の製品を含めた仮想化プラットフォームとクラウドサービスをつなぐオープンなフレームワークであるという。

 拡張性では、プライベートクラウド環境とパブリッククラウド環境を接続して、パブリッククラウドのリソースをプライベートクラウドの一部として仮想的に統合する「Cloud Bridge」や、プライベートクラウド環境とパブリッククラウド環境の間でシームレスなユーザー認証などを可能にする「Cloud Access」を発表した。ターンキーについては、クラウドサービスでのメニュー化を支援する7種類のソリューションを提供する。

シトリックスが提起するクラウド環境でのデータセンターに求められる要素

 プティ氏は、「これらはクラウド環境で必要とされる利用シーンに基づいて開発した。特にサービス事業者はソリューションを活用して差別化したサービスを開発、提供できるようになるだろう」と語った。

 併せて発表したNetScalerについて、OS新バージョンの提供、アプライアンス版「MPX」でのデータセンター向けハイエンドモデルの追加、ソフトウェア版「VPX」の強化、新ライセンス「Burst Pack」の追加を順次リリースする。NetScalerはアプリケーション配信分野で多くの導入実績があるといい、同社のクラウド分野における戦略では重要な製品の1つになる。

 最新版OSのバージョン9.2は、マルチコアCPUのサポートを強化したことでパフォーマンスを向上させたほか、マルチテナント環境における複雑なルーティング処理への対応、大容量データを扱うアプリケーション配信の安定性の向上、Webアプリケーションファイアウォールの機能強化などを図った。

 MPXの新製品は、最大スループットが20〜50Gbpsの3モデルで、同一筐体のままライセンスを変更することで上位製品の機能を利用できる「Pay as-You-Grow」ライセンスモデルを利用できる。VPXでは、スループットが3Gbpsの「VPX-3000」を今年7〜9月頃に発売する予定。また、Microsoft Hyper-Vへの対応を年内に予定する。

 Burst Packは、90日間限定で上位製品の機能を利用できるライセンスモデルとなる。同社では、季節商戦やキャンペーンなどで一時的にオンライン処理が増加する時期での利用を想定する。提供開始は今年7〜9月頃の予定。

 NetScalerを担当するシニアプロダクトマネジャーの的場謙一郎氏は、「インターネットビジネスでは、オンラインサービス利用者や大容量のリッチコンテンツの増加、Webシステムを狙う攻撃の拡大などの課題があり、新施策でこれらの課題に対処していく」と意気込みを語った。

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