ItaniumとXeon 7500の悩ましい関係伴大作の木漏れ日(2/3 ページ)

» 2010年06月11日 08時00分 公開
[伴大作,ITmedia]

Xeonに対する各ベンダーの対応

 Nehalem搭載サーバは2009年に発表された。僕は当時、ユーザーが求めているサーバ像とのかい離を感じ、「このサーバは一体何に使うのか」と指摘した。その時に、あるベンダーから連絡があり、実際、市場の反応は僕の指摘の通りで、販売状況を危惧しているという話を聞いた。

 現在、経済状況は少し改善されたものの、投資動向は昨年の今ごろと大きな変化はない。つまり、僕が思うに、今回発表された製品もそれほど売れないだろう。

 Nehalemを搭載するような高性能サーバの用途は、金融や流通業の大量のトランザクションを伴うミッションクリティカルなシステム、eビジネスの大手、科学技術計算、CAD、リッチコンテンツの送出サーバなどでの活用が想定されるが、それ以外の用途は意外と多くない。

 こうした中、最も上手な発表をしたのはデルだ。同社は発表において、Googleへの納入実績を強調した(もちろん、特別注文のモデルだが)。クラウドコンピューティングという言葉は、米Googleのエリック・シュミットCEOが最初に使ったといわれている(編集部注:@IT情報マネジメント「クラウドコンピューティング」参照)。クラウドの本家ともいえるGoogleへの納入実績を強調するデルの発表は、巧みなアピールだったといえる。

 他ベンダーも同様に、「Nehalem EXを搭載したサーバの主な用途はクラウドだ」と繰り返している。しかし、彼らがいくら主張しても、デルのような「クラウドを本格的に導入したユーザーへの納入実績」がない限り、説得力は乏しい。

デル以外がXeonに取り組めない事情

 また、デル以外の各社はXeonに本気で取り組めない事情がある。

 例えばIBMだ。「AIXおよびPOWER」を持つ同社では、いくら良いIA(インテルアーキテクチャ)製品を開発したとしても、営業部隊が本気で動くだろうかという懸念が残る。HPも同様の理由で「HP-UXおよびItanium」との競合は避けたいはず。日立もPOWERを採用した製品があり、すみ分けが難しい。NECもHPからのOEM製品と競合するため、売れる条件は乏しい。

 富士通はどうなるのか? 事実、同社はPRIMEQUESTのプロセッサをItaniumからXeon 7500に切り替えた。加えて、SPARCに見切りをつける可能性もある。また米Oracle(=Sun Microsystems)に関しても可能性がないわけではない。しかし、2社におけるItaniumの導入は限定的だ。

 自社の独自RISCプロセッサを持つ企業は、同時に独自のUNIXも持っている場合が多い。つまり、Xeonを採用しようとしても、どの企業も自社の製品やビジネスに対する自縄自縛から抜け出せない状態なのだ。デル以外の企業はいずれも、ItaniumからXeonにすっきりと乗り換えることができない事情を抱えている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ