ItaniumとXeon 7500の悩ましい関係伴大作の木漏れ日(3/3 ページ)

» 2010年06月11日 08時00分 公開
[伴大作,ITmedia]
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科学技術分野にNehalem EXの活路をみいだすNEC

 こうした中、悩めるベンダーの1つであるNECは、科学技術分野に活路を見いだそうとしているようだ。同社は4月9日、東北大に「Express 5800/スケーラブル HAサーバ」を納入し、運用を開始している。

 このシステムは、8コアのNehalem EX、4プロセッサを1ノードとする6ノードで構成され、最大演算性能は1735.68GFLOPSに達する。単純な比較は慎むべきだが、性能では同社のベクトル型スーパーコンピュータ「SX-9」に匹敵する。これは2009年11月15日、オレゴン州ポートランドで開催されたスーパーコンピュータのカンファレンス「SC09」で、IntelがNECと提携した結果だと考えられる。

 NECは、Nehalem EXを科学技術分野に採用したことに続き、2011年に登場が予定されている「Intel AVX」次世代マイクロアーキテクチャ(開発コード名:Sandy Bridge)につなげていくだろう。ベクトル型で圧倒的な経験を持つNECが、世界におけるイニシアティブを科学技術分野で握ろうとしているのは明らかだ。同社はスカラー型スーパーコンピュータの生産を休止しているが、やがて、Sandy Bridgeで新たなモデルを打ち出し、再び同市場に参入してくるに違いない。

 NECの今後の動向は、Intelが今まで進めてきたItanium、Xeonの高性能化の流れを変えるかもしれない。一般ユーザーが求めている製品はコストと性能のトレードオフであり、絶対的な高性能を要求する顧客は一握りである。そのようなユーザーを握っているのは限られたベンダーであるという事実を、Intelは認めざるを得ないということだろう。

もう1つの潮流

 話は別の方向に流れるが、携帯電話のCPUで大きなシェアを獲得しているARM(Advanced RISC Machine)のCPUをサーバに利用できないかという研究も進んでいる。「3億4千万円のストレージ」でも取り上げたが、クラウドの進化の過程において、米EMCや米IBMのストレージ製品に代表される高性能、多機能、高セキュリティを売りにした製品が出てきた。その一方で、米Isilonのように合理的な価格を売りにする製品にも人気が集まっている。

 クラウドが本格化しつつある現在、僕はアプリケーションやサービスごとに異なったシステム構成を取ることが必ず求められるようになると考えている。高度なセキュリティと瞬時のレスポンスを必要とする金融業、絶対にサービスを停止させないという安定性を求める公共関連の企業、社会インフラなどの分野では、確かに高額なシステムが求められる。これは、Nehalem EXをはじめとする高性能CPUを搭載した製品が担保すべき分野だ。

 一方、システムの安定性を差し引いても、低廉な構築運用コストを求めるニーズも高まっていく。むしろ、クラウドコンピューティングを軸に新たなパラダイムシフトが起こるアプリケーションやサービスは、その新規性から、低廉なコストによる構築・運用が欠かせなくなってくる。

 その意味から、ARMやAtom、ゲーム機に用いられているPOWER系のCPUが各種サーバに採用される可能性はいっそう高まる。しかもその適用分野は無限だ。だがこの分野においても、国内よりも海外のベンダーが先行していることが、歯痒くて仕方がない。



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