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» 2010年06月24日 14時23分 UPDATE

ENZEE UNIVERSE 2010 REPORT:情報系システムが差別化の鍵――その裏にある2つの周期性

「日本ではどこも業務システムにかなり先行投資しており、そこでの差別化は難しい。これからの差別化要素としては、情報系システム」と話す日本ネティーザ代表取締役のダグラス・エッツェル氏。そこには、集中と分散、情報系と業務系、という2つの周期が密接に影響している。

[西尾泰三,ITmedia]

 企業内に蓄積された情報に対してさまざまな分析を行い、意志決定を支援するDWH(データウェアハウス)。製造業や金融業、インターネット小売業など、さまざまな業種がNetezzaのDWHアプライアンスを利用し、企業競争力の源泉としている。

 Netezzaが米国ボストンで開催中のユーザーカンファレンス「ENZEE UNIVERSE 2010」では、DWHアプライアンスの新たな局面として「Advanced Analytics」が打ち出された。日本ネティーザ代表取締役のダグラス・エッツェル氏に話を聞いた。

企業の差別化要因は情報系システムにあり

tnfignz.jpg ネティーザに参画してそろそろ6年となるダグラス・エッツェル代表取締役

―― まず、今回開催されたユーザーカンファレンス「ENZEE UNIVERSE 2010」について、どのような印象を持ちましたか?

エッツェル 毎年ユーザーカンファレンスでは、われわれが想定していなかったような活用の仕方を目にします。業種も活用法もさまざまですが、DHWアプライアンスを使って情報を活用し、実際に価値を得ているのです。われわれは技術のための技術を提供しているのではなく、顧客の問題を顧客が解決するためにアプライアンスを提供していますが、それが顧客の業務改善あるいは強化として具体的に寄与していることを感じて喜ばしく思います。

―― 今回のユーザーカンファレンスのテーマとしてDWHアプライアンスとより高度な分析が結びついた「Advanced Analytics」が掲げられていますが、これは既存のBI(ビジネスインテリジェンス)と何が違うのでしょうか?

エッツェル 重要なのは、「今までできなかった分析が可能になる」ということです。従来のBIはレポーティングが主でしたが、それさえもなかった時代からすると、これでも立派に役立っていました。BIはこれからも変わらず重要ですし、必要なものですが、そこまでで終わってはならないということです。言い換えれば、情報の活用の仕方にはまだまだ可能性があります。高度な分析――例えばアドホック分析やマルチファクト分析――を行えば、データの中に眠っている価値をまだまだ引き出せるわけですが、一般的なDWHシステムが抱える限界や、分析の仕方にまだ課題があり、それができていない部分がありました。Advanced Analyticsは、その両方を改善するものです。BIの真価を発揮させるわれわれのアプローチであるといってもよいでしょう。このメッセージは日本でも強調していきたいと考えています。

―― ネティーザはDWHアプライアンスの完成度を高めているように思いますが、それによって高度な分析が可能になっても、それに反応する企業はまだ少数なように思います。企業はどのようなステップでDWHシステムを導入することが望ましいと考えますか?

エッツェル DWHシステムの導入はトップダウンで行う必要があると思います。企業の経営者というのは、国内外を問わず、自分の「勘」をやや過大に評価する傾向があるものです。しかし、業務というのは勘に基づいて行うものではなく、事実に基づいて進めていくべきです。そのためにDWHシステムは存在します。

 ある企業でDWHシステムの再構築を検討されていると聞き、詳しくお話を伺ったところ、構築は3年掛けて行うつもりだといいます。ガチガチに仕様を固めたDWHシステムを構築してしまうと、毎日のように変化する業務には対応できません。業務系システムは、業務を効率よく回すために構築するので、1年や2年掛けてうまく設計し、その後構築するというアプローチで正しいのですが、情報系は業務を見える化するためのものですから、業務の変化に対応できなくては意味がありません。業務系システムと同じ感覚で情報系システムを構築すると必ず失敗します。しかし現実には、そうした例は枚挙にいとまがないのです。

 業務系のシステムが建物を建てるようなものであると考えてみてください。精緻(せいち)な設計図を作ってから建築を始める、これが一般的です。しかし、情報系のシステムは、どちらかといえば工場を建てるようなイメージです。工場は製造ラインで材料を流すわけですが、これはある意味でプロセスです。場合によっては流し方も変わるし、ラインを増やすこともあります。それに対応できるようなものでなければならないのです。

 英語で「Time to Value」というワーディングがよく用いられますが、価値を得るまでの時間を短縮し、かつ、そのための作業も簡略化するのが、性能と簡易性を特徴とするわれわれのDWHアプライアンスです。ミッションスペシフィックな業務上の課題に範囲を絞って、まずはそれを解決するためにDWHアプライアンスを導入する、というスモール&ファストスタートのアプローチをわれわれは推奨しています。

 アナリティクスというのは2つの段階があると考えています。データの中に隠れているトレンドや傾向を見つけ出すステップと、それを実際の業務に生かすステップです。詰まるところ、最終的なアクションにつなげていく必要があるわけです。前者で得られた分析結果を後者につなげていくのは容易なことではないですが、だからこそ、スモールスタートで始めてもらいたいと思うわけです。先にお話ししたように、業務上で一番課題となっているところから始め、成功体験を横展開していくことがポイントだと思います。

――日本の導入事例で興味深いと思ったのは?

エッツェル 例えば製造業界では、すでに発表させてただいているオリンパスの事例が興味深いですね。オリンパスでは、全世界の工場と販売拠点からデータを集め、われわれのDWHアプライアンスに入れて分析を行っています。ここで、工場や販売拠点からデータを集めるということは、作業が発生します。本社の人間がそうしたデータを分析したいというのは自然ですが、工場や販売拠点で発生する作業負荷に対して、彼らに何も価値が還元されないのは不自然であると考え、そうしたエンドユーザーにもBIを開放している点は、エンドユーザーを考慮したうまい使い方だなと思いました。

 あとは通信事業者の事例でしょうか。彼らはあらゆる種類の膨大なデータを有しているわけですが、例えば顧客の行動履歴をより高度に分析したいという課題を抱えています。明細データを用いた予測モデルなどに踏み込んだ高度な分析をされていますね。

―― 今回のユーザーカンファレンスの肝は、DWHアプライアンス内で分析まで行おうとするものだと理解しています。そのための鍵となるのが「i-Class」だと思うのですが、これについて少し説明を加えてもらえますか?

エッツェル i-Classが提供する価値には2つの側面があります。1つはDWHアプライアンス内のデータにアクセスする手段の自由度を高めるというインフラ面での改善です。従来のネティーザはある意味ブラックボックスであり、データにアクセスする手段はSQLだけだったのですが、これを顧客が望む方法、具体的には、JavaやPythonなどをはじめとするプログラミング言語でもアクセスできるようにAPIを用意しています。

 もう1つは、マイニングでよく用いられる関数をTwinFin上で並行処理できるように実装し、顧客側で車輪の再開発を行わずにすむようにしました。

 実は日本でも、i-Classのβ版に相当するものを一部のお客様にはすでに使っていただいていますが、これを大々的に展開することになります。実際には、i-Classを顧客が直接使うケースというよりも、われわれのパートナーがすでに持っているソリューションの中に組み込まれる形での提供となるでしょう。例えば彼らは金融業界でいうとリスク管理などのソリューションを持っています。これをネティーザのDWHアプライアンス上で、しかもi-Classにより、これまでできなかったような分析ができるようになります。そうした強力なソリューションが提供されていくことになるでしょう。

―― 日本企業はアナリティクスに関して遅れているという声もありますが、どう思いますか?

エッツェル わたしは必ずしもそうだとは思っていません。確かに、米国ではアナリティクスが1つの分野として確立しているのに対し、日本ではまだそうではないといった違いはありますが、データもあり、業務上の課題もあり、それを解決したいという意識もあるのは同じです。

 企業競争力という観点で考えると、日本ではどこも業務システムにかなり先行投資しており、そこでの差別化は難しいでしょう。例えば金融業界、ここでは銀行を例に挙げてお話しすると、ATMやオンラインバンキングを提供していない銀行はありませんよね。そうした部分での差別化は難しいわけです。これからの差別化要素としては、情報系システムになると思います。情報系システムは業務システムと比べれば投資費用もわずかでしたが、これが見直されていくでしょう。

集中型の情報系システムが注目を集める必然性を説くNEC

tnfignz3.jpg 一般には初披露となるNECの「InfoFrame DWH Appliance」。前面パネルも実はこだわりのデザインだ

 ここまで、Netezzaの視点でDWHアプライアンスの意義をエッツェル氏のインタビューを通して紹介してきたが、以下では同社のパートナーの動きについても触れておく。

 日本国内におけるNetezzaの代理店パートナー(Netezza製品の販売、一次サポート、構築・開発サービスを提供するパートナー)をみると、日本ユニシス、日本電気(NEC)、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、新日鉄ソリューションズ(NSSOL)の4社が名を連ねている。このうち、NECはハードウェアを手がける強みを生かし、独自の戦略を展開している。

 NetezzaのDWHアプライアンスの主力製品である「TwinFin」は、IBM製の汎用ブレードサーバやストレージで構成されているが、ハードウェアも手がけるNECからすると、競合他社の製品を販売することを意味する。この場合、NECが保守を一括して請け負えないというジレンマを抱えることになる。

 FPGAを用いていることを除けば、TwinFinはコモディティ製品で構成されている。ならば、自分たちのサーバやストレージと組み合わせたDWHアプライアンスも作れるはずだ――そう考えたNECは、TwinFinの発表からわずか半年後の2010年2月、Netezzaからソフトウェアや技術のOEM供給を受け、自社のサーバやストレージと組み合わせたDWHアプライアンス「InfoFrame DWH Appliance」を発表した。今回のユーザーカンファレンスでは、このInfoFrame DWH Applianceが参考出展されていた。日本では、この5月から販売を開始しているが、一般に公開されるのはおそらくこれが初となる。

 自社のサーバやストレージを組み合わせてDWHアプライアンスを販売するというのは、文字にするとさほど苦労がないように映るが、NECのような大企業で短期間のうちに、関係部署間の調整、あるいは人的リソースの配分などを図る手間は相当なものだったと予想される。この立役者が、NECのITプラットフォームソリューション事業部Decision Navigatorソリューショングループでグループマネージャを務める石井吉之氏。同氏は、出展しているInfoFrame DWH Applianceに対する海外の反応が期待以上だと笑みをこぼしながら、すでに国内でも2件受注し、今月末には1社のカットオーバーを予定していると明かす。

 「当初4月としていた出荷開始時期が5月になったため、TwinFinで受注した案件もある。これが非常に残念」と話す同氏だが、その先行きには自信を見せている。自社製品で構築していることで、付加価値による差別化が図りやすいというのもその理由の1つだが、マクロな流れの中で、こうした製品に注目が集まっていると石井氏は説明する。

tnfignz2.jpg NECの石井吉之氏。InfoFrameの展開に自信を見せた

 ITシステムが集中と分散を繰り返しながら発展しているという歴史的経緯をご存じの方であれば、今日は、高度に分散化したシステムが再び集中の方向に向かっていることを感じ取っていることだろう。昨今のトレンドであるクラウドコンピューティングも、内部的には分散しつつも、表面的には集中している。

 DWHシステムもこの動きに同期している。10年ほど前のDWHといえば、ローカルにデータを移してExcelで分析するという、いわば分散型のシステムだったものが、NetezzaのようなDWHアプライアンスの登場により、明らかに集中の時代になっている。

 集中と分散という周期に加え、注目したいのは情報系システムと業務系システムという2つのシステムに対する企業の投資周期だ。2008年に世界を襲った経済危機で若干足踏みした感もあるものの、現在は情報系システムへの投資意欲が高まりつつある。集中と分散、情報系と業務系という2つのサイクルがある中で、今日の状況は、集中型の情報系システムというNetezzaやInfoFrameの方向性と合致しているというのが、石井氏の自信につながっている。今回の出展での好反響に、海外展開の含みを持たせたNECもまた、DWHアプライアンスへの期待値は大きい。



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