仮想化したIT基盤で素早い業務システム構築とスマートな運用管理を実現するためには

本格的なクラウド時代の到来を前に、今企業システムのあり方が変わろうとしている。その要となるのが仮想化技術であり、企業システムを仮想化するための環境も整いつつある。しかし、単純にシステムを仮想化しただけで十分な効果は得られるだろうか? 今回は、仮想化導入の効果を発揮するための計画的な仮想環境への移行について考えてみる。

» 2010年06月28日 14時00分 公開
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激変する企業IT環境、ユーザーはどうすべき?

 インターネットの普及が始まり、15年以上がたった。この間、ユーザーを取り巻くIT環境は劇的に発展してきたが、ここ最近とくに注目されている「クラウドコンピューティング」によって、ユーザーエクスペリエンス(ユーザーの体験)も大きく変わろうとしている。

 例えば、かつてのインターネット環境では、アクセスが集中してWebサイトが閲覧できなかったり、目的の商品を入手することが困難だったりしたものだ。しかし、現在はそうした事態も減ってきた。その一因として、クラウドコンピューティングの導入が挙げられる。クラウドコンピューティングにより、アクセス数増加に対応する形で動的、かつシームレスにシステムを拡張できるようになり、変化に対応できるようになったからだ。

 また、かつては誰かと文書などのデータを共有するためには、双方が同じアプリケーションを持っている必要があった。だがクラウド環境であれば、Webサイト上で必要なアプリケーションを共有しながら、いつでもどこからでも表示・編集することもできる。さらに、オンラインショップを開設したいときでも、クラウドコンピューティングで提供されるCMS(コンテンツ管理システム)などのWebアプリケーションを利用すれば、HTMLのスキルに関係なく誰でも簡単に始められる。

 つまり、ユーザー側がシステムの都合に合わせることを強いられてきた従来とは異なり、クラウドコンピューティングによってユーザーは、やりたいことに集中できるようになったわけだ。ところが、こうしたユーザーエクスペリエンスの変化が、企業システムにある種のゆがみをもたらすことにもなってしまった。

ユーザーの変化による機会と脅威

 企業システムを利用するオフィスの従業員も、自宅に帰ればインターネット上で便利な体験をしている。インターネットではシステムは落ちたり遅くなったりせず、いつでもどこからでも利用可能で、新しいこともすぐに始められる。しかし、オフィスではどうだろうか。“企業システムありき”で固定された操作を強いられている例が多いのではないだろうか。

 一般のコンピュータユーザーの作業効率は大きく向上したわけだから、本来ならばオフィスワーカーに対しても、同等以上の生産性が期待できる企業システムを提供することが望ましい。むしろそうでなければ、企業価値の向上につながらない。このことを同業他社に先駆けて実現できれば、ビジネス上でも優位に立てるはずだ。

 インターネットを通じて商品を販売したりサービスを提供したりしている場合は、さらに大きな意味を持つ。クラウドコンピューティングによりもたらされたユーザーエクスペリエンスが常識になれば、それは顧客にとって当然の要求になり、企業には自社の顧客に同様のユーザーエクスペリエンスを提供する必要性が求められることになる。提供できなければ、その企業は競争していくうえで不利である。これは、企業にとって脅威とも言えるだろう。

 だからこそ、クラウド時代のユーザーエクスペリエンスに呼応する形で企業システムのあり方を大きく変えなければならない。今がまさに、その時期だと言える。

ユーザーエクスペリエンスに対応する企業システム

 では、“クラウド時代のユーザーエクスペリエンスに対応する企業システム”とはどのように構築すればよいのだろうか? 顧客はいつでも快適かつ素早くサービスが利用できること、欲しかった新製品や新サービスがタイムリーに提供されることを欲している。一方、従業員は、いつでもどこからでも快適な仕事ができること、ビジネスチャンスを逃さずにすぐに新しい業務が始められること、システムの改変によって業務に支障を来さないことなどを求めている。

 さらに、社内には部門ごとのニーズもある。業務部門は、必要な業務環境をすぐに構築でき、企業システムのITリソースも必要な時に必要なだけ使えることを望んでいる。一方、システム運用部門は散在する企業システムのITリソースを無駄なく活用し、しかも手間をかけずに安定稼働させることを期待している。

 こうした企業システムを構築するために必要な技術要件として前提となるのが、利用ニーズに応じた柔軟なリソース配分を可能にする仮想化技術だ。企業システムの物理的な機器を仮想化することで、ITリソースを論理的に扱えるようにすれば、クラウド時代のユーザーエクスペリエンスの実現に大きく寄与する。

 ただし、やみくもに仮想化を導入しても、十分な効果は期待できない。仮想化した企業システムをどのように構築・管理していくか、一歩先を見据えたツールを導入できるか否か? がポイントになる。そのためには、仮想環境へ計画的に移行し、業務の実行環境を迅速に構築・配備して、複雑化した企業システムを効率的に運用するという課題解決に取り組まなければならない。

仮想環境への計画的な移行

 このような、クラウド時代のユーザーエクスペリエンス実現に向けた本格的な企業システム構築に取り組んだのが、日立製作所(以下、日立)である。日立では、自社のシステムの一部を仮想環境に移行するに当たり、まずシステムの現状把握と仮想環境に移行した際のITリソースプランニングに取り組んだ。その際に活用したのが、日立自身が製品化している統合システム運用管理「JP1」だ。

 日立では、監視対象のサーバにエージェントをインストールせずに稼働監視を行う「JP1/Performance Management - Remote Monitor(JP1/PFM - RM)」を利用して、物理サーバ上のパフォーマンス情報収集を実施した。エージェントレス監視により、稼働中のシステムに負荷をかけない、スムーズな現状把握が実現するのだ。まず、そこで取得した稼働情報を基にITリソースの割り当て値を算出し、仮想環境上に構築される仮想マシンへのリソース割り当てを決定、計画的な移行のアセスメントを行った。仮想環境への移行後も継続的にパフォーマンス情報収集を行って、ITリソースに過不足がないか監視。過不足が発見された際には、リソースの割り当てを変更する。このようなサイクルを定期的に繰り返すことで、常に最適化された仮想環境の維持に努めているという。

仮想環境上で業務システムを迅速に構築

 新規業務の開始に伴いシステムを拡張する際には、仮想環境上で業務システムを構築する必要がある。従来、物理環境で業務に必要なシステムを構築するには、手動で1台ずつ環境を構築して設定する必要があり、時間がかかるという課題があった。仮想環境上でサーバを複製することでこれらの手間がなくなるかというと必ずしもそうではない。各仮想サーバの個別設定やミドルウェアの設定、アプリケーションのデプロイは依然として手動で行う必要があるからだ。

 日立では、業務システムの仮想化に対応するアプリケーション実行環境「Cosminexus」を提供している。Cosminexusでなら、煩雑な項目設定などの構築作業を自動化する仕組みを備えており、複数の仮想サーバの構築作業も並列に実行することができる。これを導入することで、構築時間の大幅な短縮(日立の場合は、10分の1に短縮できたとのこと)が見込めるとともに、構築の際のミスも大きく減らせるだろう。

 仮想マシン上で稼働するCosminexusのアプリケーションは、業務の負荷増加によるシステム拡張でも効果を発揮している。システムを拡張する際、従来は手動でスケールアウトの作業を行っていた。この作業は、アプリケーションのデプロイや負荷分散機への加入、さらには監視システムへの組込みなど作業項目が多く、正しく実施できたかどうかを確認する作業まで含めると運用管理者の負担は非常に大きかった。その点、Cosminexusには複雑な運用操作を容易に実行できる管理ツールか用意されているため、“このアプリケーションに1台をスケールアウトする”という1つの操作だけで、すぐにシステムを拡張できる。日立によると、操作時間は3分の1程度にまで短縮されるとのことだ。

CosminexusとJP1の組み合わせで、スケールイン/スケールアウトを自動化できる

 なお、仮想環境へのサーバ集約は、思わぬ副作用を生むケースがある。その代表例が「Full GC」の影響だ。使われなくなったメモリ領域を定期的に清掃する「ガーベジコレクション(GC)」の仕組みをもつJavaでは、メモリ領域が不足した際に行われるFull GC実行中にほかのアプリケーションの処理が一切停止してしまう。仮想環境で高性能・大容量のサーバに集約したために、従来より大きなメモリリソースを利用することになり、Full GCによる停止時間が長くなってしまうのだ。CosminexusではFull GCを抑止する「FullGCレス」機能を提供している。メモリが不要になった時点で領域を適時解放するこの機能により、サーバ集約への不安も解消される。

FullGCレスの機能は、Cosminexus最新バージョン「Cosminexus V8.5」でさらに強化された

複雑化するシステムを効率的に運用

 仮想環境は、物理環境とは異なり、いわば目で見ることができないものだ。負荷の増減によって、仮想マシンが実際に稼働する物理サーバが変更されたり、仮想マシンの数が増減したりすることもある。そのため、運用管理業務はどうしても複雑化してしまうものだ。

 それを回避するためには、見えないITリソースを可視化する必要がある。どの業務システムがどの物理サーバ上に構築された仮想環境で稼働しているのか、物理サーバに障害が発生した際にどの業務が影響を受けるか、といったことを可視化できれば、万一問題が発生したときにも迅速に対応できる。

 そうした仮想環境の可視化に威力を発揮するのが、「JP1/Integrated Management(JP1/IM)」である。JP1/IMは、「VMware ESX」や「Hyper-V」「Virtage」などの仮想化ソフトウェアから、構成情報を一括で取得し、仮想マシンを業務単位や物理サーバ単位でグループ分けして対応関係を分かりやすく可視化する。障害発生時には、どの業務に影響範囲が及ぶかを確認したうえで、障害が発生した実際の物理サーバを迅速に特定し、対処できる。

仮想環境でも、JP1/IMで障害の影響範囲をひと目で把握し、迅速に対応できる

 さらにCosminexusでは、前述の管理ツールによって、業務アプリケーション単位で仮想サーバやそれらが稼働する物理サーバを「管理ユニット」としてグループ管理できる。これにより両者が連携することで、業務アプリケーション単位で仮想サーバの構築や運用の指示を一括で行えるので、障害発生後の対策まで対応できる。

 また、仮想環境の計画的移行でも使われるJP1/PFMを利用すれば、仮想マシンと物理サーバの両方からタイムリーに稼働情報を取得できるので、動的に変化する仮想環境のパフォーマンスを最大限に引き出すような、リソース配分の最適化も行える。

 さらに、JP1の最新バージョン「JP1 V9.1」では、この先どの程度のITリソースが利用されるのかを把握し、中長期的な視点での最適化を図ることを目的とし、ITリソースをプール化して予約状況をスケジュール管理するという新しいツール「JP1/IT Resource Management(JP1/ITRM)」が追加されている。このツールの導入により、仮想環境のより効率的な運用が可能になる。

JP1の最新バージョンでは、仮想化されたリソースの計画的な利用を支援する機能が実装された

 このように日立は、クラウド環境のユーザーエクスペリエンスを実現する仮想環境に適したツール(ミドルウェア製品)を提供するとともに、自社への適用も含めた豊富な構築実績を持っている。クラウド時代を迎え、激変するユーザーの意識に即応できる企業システムを構築するに当たり、日立のアプローチが参考になるのではないだろうか。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2010年7月27日