世界で勝つ 強い日本企業のつくり方

グローバルサイト構築 コンテンツ・デザインの作り込み世界で勝つ 強い日本企業のつくり方(3/3 ページ)

» 2010年07月06日 08時00分 公開
[大里真理子(アークコミュニケーションズ),ITmedia]
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文化に配慮したカスタマイズ

 日本向けのWebサイトでは、日本人の価値観を意識せずにコンテンツを制作する場合が多い。だがそれをグローバルサイトで流用する際は、対象国の文化に見合ったコンテンツかを検討する必要がある。

価値観の理解

 こんな話がある。とある大企業の広報室が新社長のインタビュー記事を日本語サイトに掲載し、好評を得た。そこでグローバルサイトにも同じコンテンツを掲載するために文書の翻訳を進めたところ、社長の魅力が十分に伝わらないインタビューだということが分かってきた。

 新社長就任の理由として「運が良かっただけです。周りの力に支えられました」という奥ゆかしい発言があった。日本語のインタビュー記事では、チームワークを重視し、リーダーシップを発揮する社長の人柄が伝わる内容だったが、英語コンテンツにするには問題がある。

 西洋文化では、「謙遜(けんそん)」は自信のなさと受け取られがちな行動であり、実は能力の高さをアピールする方が好感が集まる。グローバルサイトにおいて社長の優秀さを際立たせるには、リーダーシップを発揮した具体例や実績、スキルに焦点を当てたコンテンツの方が好ましいのだ。「謙譲の美徳」という東洋的な価値観が悪いわけではないが、この場合は西洋の価値観や文化、流儀に従ったコンテンツを作成した方が良い。

地図は地雷

 グローバルサイトに掲載する地図は、対象国の愛国心を刺激する可能性があるため、注意が必要だ。国内では日本が中心に配置された世界地図が標準だが、西洋ではヨーロッパ中心の地図が主流である。対象国によって、どのパターンの世界地図を採用すべきかは一考に値する。また日本海の表記や国土の線の表示は、アジア圏の過去の歴史を想起させ、反日感情をあおる可能性もあるので、表記の注意が必要だ。

Honda Worldwide site 参考地図コンテンツ:Honda Worldwide site

宗教的な意味を持つ行為

 宗教の信仰者向けにコンテンツを工夫することも大切だ。十字架のペンダントや祭りを題材としたコンテンツは、信仰に熱心な人だと敏感に反応することがある。この特性を踏まえたコンテンツのカスタマイズは、外部のパートナー企業や現地法人から支援を受けるといい。グローバルサイトを展開する国のユーザーにネガティブテストを行うのもお勧めだ。

デザインの共通化

 デザインは国によって好みが分かれる要素の1つだ。例えば西洋ははっきりとした色合いで色数が少ないデザイン、アジア圏では色数が多く、文字数の少ないデザインが好まれる。グローバルサイトが対象とする国の通信回線の太さ、一般的に使われているソフトウェアへの配慮も必要だ。

 グローバルサイトでは、コーポレートブランディングの観点などから、全世界で共通のデザインを採用することをお勧めする。デザインの種類としては日本語などのダブルバイトパターン、英語などのシングルバイト用パターン、アラビア語のように右から左に表記されるミラーパターンの3つを用意しておきたい。


 グローバルサイト構築の壁となるのは、共通化とカスタマイズである。迷った場合はまずコーポレートブランディングを意識し、企業の一貫性を損なわないコンテンツやデザインを採用し、共通化していこう。

 次回はグローバルサイトの運用体制の整備を考える。

プロフィール 大里真理子(おおさと・まりこ)

大里真理子

アークコミュニケーションズ 代表取締役社長。日本アイ・ビー・エム、ユニデン、アイディーエスにてグローバルビジネスや新規事業立ち上げに従事。5年にわたる米国、ドイツ、中国での実務経験を生かし、VisualとVerbalで「Local+Global」なビジネスコミュニケーションをサポートするアークコミュニケーションズを設立。「目指せグローカルなビジネスコミュニケーション!」をモットーに、Web・クロスメディア制作、翻訳、通訳、人材派遣を営む。アイティメディア「オルタナティブ・ブログ」の「マリコ駆ける!」を執筆中。Twitterのアカウントは「@marikokakeru




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