SAPジャパンは、パッケージソフトで標準化しにくい「属人的な業務プロセス」のシステム化が企業独自の強みを生み出すとし、BPMに長けたパートナー企業の人材を育成するプログラムの提供を開始した。
SAPジャパンは7月20日に記者向けのブリーフィングを開催した。同社のビジネスプロセスマネジメント(BPM)領域の戦略やパートナー企業との協業について、ビジネスユーザー&プラットフォーム事業本部 プラットフォーム営業部の神沢正部長が説明した。
「SAP R/3によって改善してきたビジネスプロセスを飛躍させるのがBPMだ」。神沢氏はこう話す。これまでERPソフトウェアを軸に企業の業務改善を進めてきたSAPが、近年はBPMにも注力している。「今年度の案件が昨年の10倍以上になっている分野もある」(同氏)など、BPMに対するニーズが具体的な案件にひも付いているからだ。
BPMサービスの提供においてSAPが想定するのは、「グローバル展開をする年商1000億円以上の企業およびSAPのERPユーザーでアドオンを削除したいとする企業」(SAPジャパン広報)。この規模の企業からは、時差や言語の壁などで阻まれる業務のオペレーションを自動化したいというニーズや、「1万本に上る(SAP ERPの)アドオンを2000本に集約したい」といったBPM関連の要望が挙がっているという。
「(企業内で)IT化できているプロセスは20%、できていない属人的な業務プロセスは80%になる」。神沢氏はSAPによる顧客企業への調査結果を引用しながら、後者の80%の分野に対してBPMを訴求する意向を見せた。
これは同社が「オウンプラクティス(独自/固有の業務プロセスや設計開発)」と定義する領域であり、ERPのパッケージソフトウェアではニーズを満たしにくい分野だ。具体的にはサプライチェーン、見積もり、アフターサービス、試作といったプロセスが該当する。ここを最適化することで、企業独自の強みや他社との差別化要因を確保できるというのが、SAPのスタンスだ。
こうしたニーズに対し、SAPジャパンはBPMの知識やスキルに長けたパートナー企業の人材育成に乗り出す。同日に提供を開始した「SAP BPMスペシャリスト育成プログラム」は、SAPのパートナー企業の技術者向けに、無償トレーニングの提供やワークショップを行うもの。実案件への参加やデモンストレーション/プロトタイプの設計開発も支援する。
同プログラムを適用するパートナー企業として、BPM関連のコンサルティング案件を手掛けるアクセンチュアやアビームコンサルティングなど8社が名を連ねる予定だ。同プログラムの実施期間は7月20日から12月末までとしている。
「うちの業務は特別なのでパッケージソフトウェア(の導入)は見合わない、と考えられている領域にSAPは踏み込む。ビジネス環境が変わる中、企業は使い方次第で差別化要因になる独自システムや業務を再定義していく必要がある」と神沢氏は述べる。またSAPは、BPMの整備に伴うiPhoneを介した業務システムの活用といった新たなニーズにも対応していくとした。
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