自らを“実験台”としSaaSのベストプラクティスを蓄積する――NEC 山元執行役員常務(2/2 ページ)

» 2010年07月23日 08時00分 公開
[石森将文,ITmedia]
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山元 IAサーバの分野でも、2009年のシェアでナンバーワンを獲得できました(IDCジャパン調べ)。中でも今は、“データセンターまるごとエコ”や“オフィスまるごとエコ”といった、ファシリティも含めた省電力ソリューションを推したいと考えています。

ITmedia ファシリティも含めた省電力を数値で証明するのは困難も伴う。IT機器と非IT機器の間に共通のプロトコルがあるわけではないため、統一のプラットフォーム上で運用管理や監視をしにくいからだ。NECはどうアプローチするのか。

山元 NECには、社会インフラBUという組織もあり、ファシリティに特化した技術を多く持っています。工場の設置や運営のノウハウを持つ建設・設計系の人材もいます。ビル管理系の業務で培ったセンサー技術(国防分野にも納入しているという)にも強みを有しており、これらを複合的に連携させて、実現を図りました。もちろんユーザーをたらい回しにすることなく、一元化した窓口でソリューションを提供します。

 既に、ソリューションを実証する目的で、NECの玉川事業所をモデルオフィスとし、どうすればもっとエコになるのか? などの検証を進めています。われわれプラットフォームBUの人員も、そちらへの引越しを順次進めています。

 そこから分かってきたことは、データセンターを最適化するならば、ビルの設計段階からプランするのが重要だ、ということです。

 冷却コストを下げるという視点では、国内ですと北海道にデータセンターを作るのが良いかもしれませんね。地震などのリスクを慎重に検討する必要はありますが。政府には、地方がデータセンターを誘致しやすいよう、ネットワークの整備や補助金、税制優遇などといった施策を検討してほしいですね。

クラウド事業へのアプローチ

ITmedia NECならではの、クラウドおよびSaaS事業に対するアプローチは?

山元 まずは、NECのグループ企業に対しSaaSを提供し、運用実績を重ねるという手法で進めています。2009年の秋まで、グループ企業はそれぞれが、オンプレミスなアプリケーションを調達していました。それをSaaSに統一していきます。これは国内だけでなく、海外拠点に対しても徹底します。

 自らが“実験台”になりながら、NECとしてのベストプラクティスを蓄積し、それをユーザーに対する提案につなげる形です。早速、各方面で商談が進んでいます。

 また“NECならでは”ということなら、「共同センター型」と定義している、クラウド指向のサービスプラットフォームが挙げられます。

 例えば地方銀行は、それぞれが自分たちのデータセンターを持つのは大変だし、アプリケーションを開発するには手間もコストも掛かる。パブリッククラウドを利用するのは、コンプライアンスやSLAの観点で難しい。そこで、複数の地方銀行が共同でデータセンターおよびアプリケーションを運用しましょう、という考え方です(プライベートクラウド基盤を共同運用するような考え方)。基盤は統一し、銀行ごとのカスタマイズが必要な部分だけは個別に対処します。

 特に金融機関や官公庁の場合、完全なクラウド化は現時点では現実的でなく、オンプレミスなシステムは、当面残るでしょう。つまり、共通化できるところからSaaSに移行する、というアプローチが現実的です。その場合、ベンダーを問わずクラウドサービス同士をつなぐ手段が求められます。

 われわれはそれを、「オープンサービスリポジトリ」という形で、国際標準化する取り組みを主導しています。せっかくクラウド化しても、クラウド間がクローズなものになってしまい連携できないとしたら、ユーザーが困ってしまいます。

 これまではNECのサービスや製品を使っていなかったユーザーでも、NECのSaaSに移行できる。もちろん、その逆のパターンもあるでしょう。それこそが、クラウドの正しいあり方なのです。

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