業務プロセス管理へのIT活用は進むかWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2010年07月26日 08時15分 公開
[松岡功,ITmedia]
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すべてのIT化のベースにBPMが必要に

 改めて最も大事なのは、BPMが目的とする「業務プロセスを改善して業務の生産性を上げる」ことへの取り組みである。逆に言えば、業務プロセスを改善しなければ、業務の生産性向上は望めない。これまでの取材活動を通じて、この点に対する問題意識がまだまだ足りない企業が少なくないと感じていたので、言い尽くされてはいるが敢えてBPMの勘所を説明した。

 日本オラクルとSAPジャパンの発表に話を戻そう。まず日本オラクルが7月22日に発表したのは、BPMツールの最新版「Oracle Business Process Management Suite 11g」である。機能や特徴については関連記事を参照いただくとして、ここでは発表会見で印象に残ったコメントを挙げておきたい。

 「BPMに対する顧客ニーズは、属人化したプロセスの標準化および改善にある。しかし、現状はプロセスを可視化する段階にとどまっており、それをシステム化するところまで至っていない」

日本オラクルFusion Middleware事業統括本部ビジネス推進本部の龍野智幸氏 日本オラクルFusion Middleware事業統括本部ビジネス推進本部の龍野智幸氏

 こう語る日本オラクルFusion Middleware事業統括本部ビジネス推進本部の龍野智幸氏は、顧客側の取り組みもさることながら、オラクルを含めたITベンダー側もこれまでそうした顧客ニーズに対応できる強力なツールを提供できていなかったとした。

 また、龍野氏はBPMツールを利用する上での顧客側の懸念として、投資対効果におけるリスクヘッジをどう効かせるか、業務プロセスのあるべき姿をどう描くか、といった点が挙げられるという。これらはBPMの勘所で説明したポイントと同じだ。同氏によると、最新版ツールはそうした顧客ニーズにすべて対応しているという。

 一方、SAPジャパンが7月20日に発表したのは、パートナー企業の技術者を対象とした「SAP BPMスペシャリスト育成プログラム」。BPMの深い知識やスキルを持つ人材を育成し、BPM導入体制を強化するための施策である。こちらもその内容については関連記事を参照いただくとして、発表会見で印象に残ったコメントを挙げておきたい。

 「当社の調査によると、企業の業務プロセス全体でIT化できているのは20%程度。残りの80%についてIT化を支援しようというのがBPMツールの目的だ」

SAPジャパン ビジネスユーザー&プラットフォーム事業本部プラットフォーム営業部部長の神沢正氏 SAPジャパン ビジネスユーザー&プラットフォーム事業本部プラットフォーム営業部部長の神沢正氏

 こう語るSAPジャパン ビジネスユーザー&プラットフォーム事業本部プラットフォーム営業部部長の神沢正氏は、その中で業務プロセスによってはIT化することに意味があるかどうかを見極めるのも重要なポイントだとも指摘した。

 業務プロセスごとにIT化の有無を判断するのは、実は重要な経営判断である。そうした意思決定の手順をBPMツールが備えているのかどうか気になっていたが、神沢氏の話によると、取り入れられているようだ。

 さらにこれからは、同じIT化でもオンプレミスで行くのかクラウドコンピューティングを利用するのか、といった経営判断が求められるようになる。そうなると、BPMおよびBPMツールの重要性はますます高まるだろう。そうしたすべてのIT化のベースにBPMが必要になってくるのではないだろうか。日本オラクルとSAPジャパンの会見を聞いて、そう感じた。

プロフィール 松岡功(まつおか・いさお)

松岡功

ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。




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