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» 2010年07月27日 08時00分 UPDATE

ファイルと同様に実行可能:LTFSはテープドライブの可能性を拡大するか?

テープ内のデータを、バックアップツールでディスクに展開せずとも実行/コピー/削除できるようにするLTFSは、テープドライブの利用範囲を拡大し得る新機能として期待できる。

[石森将文,ITmedia]

 日本ヒューレット・パッカード(以下、日本HP)が7月26日に発表したLTO-5対応の大規模アーカイブ向けテープドライブについては、その容量や転送速度もさることながら、「HP Linear Tape File System(以下、LTFS)」と呼ばれる新機能に着目したい。LTFSは、従来は扱い方に癖のあったテープドライブを、一般的なファイルシステムで管理されたディスクドライブ同様に扱えるようにしてくれるのだ。


 まず、テープバックアップのメリット/デメリットについて、おさらいしておこう。一般にテープバックアップは、通常のディスクバックアップに対し、容量当たりの単価が圧倒的に安い(もちろん、モデルにもよるが)。また「テープ」というデバイスそのものの耐用年数も、CDやDVDなどの光ディスクに比べて長いとされている(例えば放送局には、数十年にわたり、番組をテープで保存している実績がある)。データの改ざんを防止するため、ハードウェアレベルでWORM(Write Once Read Many:一度書き込んだら改変できず、Readのみが可能)を実現する機種が一般的であり、コンプライアンス関連の法令にも対応しやすい。ディスクバックアップと違い、未使用時にはほとんど電力を消費しないのも魅力的だ。なお“テープは遅いのでは?”というイメージを持つ向きもあるだろうが、LTO-4対応の、既存のテープドライブでも、1時間当たり最高288Gバイトの転送速度を誇る。これらの理由から、企業においてテープドライブは、“大容量で、長期間にわたり、データを保存する”ために導入されることが多い。

 だが、テープドライブにも課題(というより仕様)がある。テープにアーカイブされたデータは、WindowsやLinuxなどが提供する一般的なファイルシステムで管理されているわけではない。保存されたデータを読み出すためには、専用のバックアップツールを用いて、データをディスクに展開しなければならないのだ。時間も掛かるし、何より面倒である。そのため“大容量で、長期間にわたり保存する必要があるが、たまに使うかもしれないデータ”を保存する際には、容量単価が高くとも、ディスクストレージを使うことが多かった。

国際的な“デファクトスタンダードメディア”になる可能性も

 LTFSは、このようなテープドライブが抱えていた課題を解決し、その利用領域を一気に拡大し得る可能性を秘めた機能である。まずLTFSは、LTO-5からサポートされた“パーティショニング機能”により、テープを「インデックス領域」と「コンテンツ領域」に分割する。インデックス領域には、コンテンツ領域内の実データを扱えるようにするための、ファイル名/データサイズ/保存場所といった情報が記憶される。

 これによりユーザーは、デスクトップOSなどから直接、テープドライブ内のデータを参照できる。それだけでなく、ディスク内のファイルを扱うのと同様に、ダブルクリックで実行したり、ドラッグアンドドロップでコピーしたりできる。バックアップツールでディスクに展開せずとも、直接テープ内のデータを扱えるようになるのだ。

 パーティションを分けることでボリューム効率が悪くなるのでは? という点については、「インデックス領域として必要なボリュームは全体の7.5%程度。また、ファイルでデータを管理する場合も、実データに加えて属性情報を記録するため、結局大差ない」(日本HP)という。

 テープ上で実行できるファイル種別に制限はない。exeやzipのような、実行すると複数のファイルを展開するものも扱え、またファイルの削除やデュープもできる。だがこの場合、変更された部分のインデックス情報とコンテンツ情報を追加保存していくため、ファイル数や記憶量は増えていく(readだけであれば増えない。また、過去にロールバックすることで増分の削除もできる)。

ltsf.jpgltsf2.jpg ディスクファイルと同様に、テープ内のファイルを閲覧、実行できる(画像=左)、テープ内のムービーファイル(容量140Mバイト、レートは11Mbps程度)を直接実行した様子。キャッシュ内で処理できてしまうので、スムーズな再生だ(画像=右、どちらもクリックで拡大)

 日本HPでは、大量の動画コンテンツを扱う放送局や医療機関、そして大学など研究機関などでの需要を見込む。だが“ディスクのように使えるテープドライブ”というのは新しい製品ジャンルでもあり、「今後ユーザー側も、新しい使い方を見出していくのでは」(日本HP)と考えているという。

 例えば、国内の放送局が海外の放送局からコンテンツを買う場合、大量の(放送用)テープに保存して輸送するのが一般的である。輸送コストと時間がかかってしまうため、ネットワーク転送という手段も考えられるが、国際的で、かつ帯域の太い回線というのは高価なものだ。だが各国の放送局がLTFSに対応したテープドライブを使えば、番組を1本のテープに収められ、極端な話、FedExなどでやり取りすることもできる。「リッチコンテンツをやり取りするための、国際的な“デファクトスタンダードメディア”になる可能性もある」(日本HP)

 前述の通りLTFSは、パーティショニング機能に基づくため、LTO-5対応のテープドライブで利用できる。ユーザーは日本HPのWebサイトを通じ、、LinuxまたはMac OS対応のドライバをダウンロードし、併せてドライブのファームウェアをLTFS対応のものにアップデートする必要がある(Windowsへの正式対応は2011年初頭)。また、2010年秋には、テープライブラリ製品にも対応する予定だ。

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