モンスター・メインフレーム伴大作の木漏れ日(2/3 ページ)

» 2010年08月17日 08時00分 公開
[伴大作,ITmedia]

Exadata、HP Integrity Superdome 2と対抗するか

 z196が最も優れている点は、この問題に直接対峙したことだ。企業の中に散在するサーバを、ブレードサーバのメンテナンスも含めて物理的に一元化できるようにした。このマシンを導入すれば、保守管理コストの大幅な低減が実現する。

 z196は、本体以外にも大きな特徴を持つ。それがブレードサーバ側のDB2のデータを処理する「IBM Smart Analytics Optimizer for DB2R for z/OS」のバージョン1.1だ。これはメインフレームやブレードサーバに搭載されたDB/2のデータのクエリを高速に処理するソフトウェアである。

 ライバル製品を見ると、Oracleの超高速データサーバ「Oracle Exadata V2」の販売が好調だ。ラリー・エリソンCEOは、データウェアハウスを目的に開発されたものの、実際には高性能なOLTPにより、IBMのマシンをしのぐと主張する。zEnterpriseが対抗する製品といえるだろう。

 またz196は、米Hewlett-Packardが4月に発表した「HP Integrity Superdome 2」に対抗する製品という見方もできる。同製品はItanium9300番台を搭載し、データまで一元的に管理できる仕組みを採用しているモンスターマシンである。

 どちらにせよ、今までMultiple Virtual Storage遺産の継承に重きを置いてきたIBMの製品戦略が、z196によって大きく変化したのは確かである。

十年の歳月をかけたz196の開発

 日本IBM システム事業部 事業部長の朝海孝氏によると、z196開発の大きな役割を担ったのは、5月25日にIBMのフェローの1人に選ばれたジェフ・フレイ(Jeffrey A. Frey)氏である。彼は2000年代前半から一貫してIBMのグリッドチームを率い、スーパーコンピュータ「Blue Gene」シリーズに大きな影響を与えた人物だ。

 朝海氏によると、グリッドのテクノロジーは基本的に大量のCPUを寄せ集めて、コンピューティングパワーを高めるものだ。だがz196の開発に当たり、フレイ氏がグリッド的なアプローチを根底から考え直したことで、IBMはこれまで不得意だった異種OSが混在するヘテロ環境下でのプロセッサの仮想化に成功したという。z196は、それ自体が完成された「クラウドデータセンター」だといえる。

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