Red Hat、クラウドAPI「Deltacloud API」の標準化を申請

Red Hatが統合クラウドパッケージ「Cloud Foundation」のアップデートと、「Apache Deltacloud API」の標準化を申請したことを発表した。

» 2010年08月27日 11時31分 公開
[Darryl K. Taft,eWEEK]
eWEEK

 米Red Hatは統合クラウドパッケージ「Cloud Foundation」のアップデートを発表し、同社が究極のオープン性と選択可能性と称するクラウド戦略の遂行に向けて動き出した。

 Red HatはWebキャストで同社のクラウド戦略のロードマップを説明し、Cloud Foundationを企業向けアプリケーションとクラウド間の一貫性を促進する戦略と定義した。Red Hatは、オープンソースでフレキシブルなクラウドスタック、OS、ミドルウェア、仮想化技術をすべて提供できるインフラを持つ唯一のベンダーであると、同社の製品および技術担当上級副社長のポール・コーミア氏は語った。

 さらに発表文では、同社のスタックは物理サーバ、仮想化プラットフォーム、プライベートクラウド、パブリッククラウドのすべてで稼働するよう設計されていると説明している。Red Hatの包括的ソリューションは、顧客企業のITアーキテクチャが複数のベンダーから購入した多数のハードウェアやソフトウェアで構築されていることを考慮し、相互運用性と移植性を実現しているという。Cloud Foundationにより、顧客は多様なクラウド環境を効果的に利用できるようになるとしている。

 米調査会社IDCで企業向け仮想化ソフトを担当するリサーチマネジャー、ギャリー・チェン氏は声明文で次のように語った。「当社の詳細な調査の結果、クラウドの導入を検討している顧客企業にとって、オープンなAPIと相互運用性が必須であることが明らかになった。同調査では、企業の80%がクラウドサービスの導入に当たっての問題として、相互運用性の標準の欠如を挙げた。Red HatはCloud Foundationを立ち上げることでクラウドのロックインを阻止する相互運用性と移植性を促進し、クラウドの正しい方向性を示した」

 Red Hatは2010年6月にボストンで開催したRed Hat SummitにおいてCloud Foundationを発表した。Cloud Foundationは、プライベートクラウドの実装に必要な一連のRed Hat製品、詳細な参照アーキテクチャ、実装マニュアル、コンサルティングサービス、トレーニングで構成されている。

 Webキャストでは、Red Hatでクラウドコンピューティングの責任者を務めるブライアン・チェ氏が、同社のクラウド戦略で4つの主要なエリアでの移植性に取り組んでいると語った。そのエリアとは、コンピューティング、アプリケーション、サービス、プログラミングモデルだ。

 Red Hatでクラウドビジネスの総責任者を務めるスコット・クレンショー副社長は「われわれはクラウドにおいて、これら4つのエリアすべての移植性に重点を置いている。これらがクラウドの根幹を構成しているからだ。たとえコンピューティング性能を希望通りに移植できても、データが特定のクラウドに縛り付けられていれば、ユーザーは身動きがとれない。Red Hatは、顧客がクラウドに求める真の移植性と選択肢を実現するツールの提供を目指している」と語った。

 チェ氏はコンピューティングの移植性に関して、Red Hatのクラウド管理機能は顧客がクラウドを実装・管理するのに必要なツールを提供し、クラウドエンジン、セルフサービスポータル、ツール、「Deltacloud API」を通じて、スケーラビリティ、強力なリソース管理機能、ポータルを提供すると説明した。

 Deltacloud APIはDeltacloudプロジェクトの産物で、Red Hatが立ち上げ、Apache Software Foundation(ASF)に寄贈した。Apache DeltacloudプロジェクトはWebサービスAPI「RESTful」のオープンソース実装で、プロプライエタリなIaaS(サービスとしてのインフラ)クラウド管理APIの共通性を抽象化する。さらに、Red HatはApache DeltacloudのAPI仕様を情報システム標準化団体DMTF(Distributed Management Task Force)に申請し、DMTFクラウド管理ワークグループに参加すると発表した。チェ氏は、Red HatのDMTFへの申請は、IaaSクラウドユーザーにクラウドコンピューティング導入における移植性のメリットを提供する同社の取り組みにおける前進だと語った。

 アプリケーションの移植性では、Red Hatのアプリケーションビルダーがクラウドアプリケーションライフサイクル管理機能を提供する。この機能により、クラウドアプリケーションの構築、バージョニング、設定、トラッキング、アップデートに伴う複雑性を管理するためのアセンブリ構築が可能になるという。アプリケーションとワークロードの移植性により、顧客は1度アプリケーションを構築すれば、そのアプリケーションをどこにでも導入できるという。

 また、Red Hatのクラウドサービスは、プライベートクラウドの導入に欠かせない、共通に使われるアプリケーション機能を実装するために必要な技術を顧客に提供するとRed Hatは言う。同社のクラウドサービスでは、顧客はこれらの機能を関連するワークロードとともに複数のクラウド間で移動することもできる。例えば、ストレージサービスはデータ持続性を提供し、メッセージングサービスはデータをクラウドの内外に移動させることができるとRed Hatの発表文には記載されている。

 また、プログラミングモデルの移植性については、Red HatのPaaS(サービスとしてのプラットフォーム)ソリューションが、1度構築したアプリケーションを物理サーバ、仮想サーバ、プライベートクラウド、パブリッククラウドなど、どこにでも移植できるようにすることによって企業のアプリケーション投資を守るとチェ氏は言う。

 チェ氏はRed Hatのクラウド戦略推進を支援するパートナー企業としてIntel、Ingres、Symantec、Nimsoft、Wiproを含む多数の企業名を挙げた。

 Ingresのロジャー・バークハート社長兼CEOは「Red HatとIngresは長年、オープンソースおよびオープン標準上のミッションクリティカルなインフラ提供に従事してきた」と語った。「われわれは、このオープンなアプローチをCloud Foundationの認定ソリューションであるIngresのデータベースでクラウドに送り込むことを楽しみにしている。顧客はIngres、JBoss、Red Hat Enterprise LinuxのスタックをDeltacloud APIで統合し、プライベートクラウドとパブリッククラウドの間で移植できるアプリケーションを迅速に構築できる」

 Intelのクラウドソフトウェア戦略責任者、ビリー・コックス氏は「IntelはRed Hatと長年にわたる協力関係にあり、Linux、仮想化、クラウドコンピューティングに共同で取り組んでいる」と語る。「IntelのCloud Builderの一部として、Intel研究所ではCloud Foundationを導入した。われわれはRed Hatとともに、クラウドソリューションにおける相互運用性、移植性、セキュリティの重要性にフォーカスしていく」

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