上海万博に出現した未来都市、それを支えるテクノロジーとは?【前編】(2/3 ページ)

» 2010年09月13日 12時48分 公開
[伏見学,ITmedia]

2020年、上海の姿とは?

 パビリオンに入場してまず目に飛び込んでくるのは、液晶テレビモニタ越しに「ハロー!」と挨拶する女性スタッフである。ビデオ映像かと思いきや、同社のテレプレゼンスシステム(ビデオ会議システム)を活用して、別室からリアルタイムに映し出されているのである。来場者が手を振ったり話し掛けたりするとそれに対して応えてくれるという演出だ。

 次のスペースに移動すると、地球人口の激増などによる今後の都市の変容を説明するビデオ映像が大型スクリーン画面に流れ、一気に来場者の関心を引き寄せていく。そして、隣のスペースに移ると、2020年の上海に生活する、ある中国人家族を主人公とした8分間のショートムービーが流れる。内容はまさにS+CCによる世界を体現したものである。例えば、自宅からテレプレゼンスによって医師に遠隔診断を受ける妊婦、授業中にPCを活用して海外にいる友人と対面コミュニケーションをとる少年、運転する自動車のフロントガラスに上海で起きている災害情報がリアルタイムに映し出され、そこから最善策を導き出す男性など、これらのシーンがすべてつながって1つのストーリー仕立てになっている。舞台は実際の上海の街であることから、より現実的なイメージを抱くことができ、来場者である多くの上海市民から歓声が上がっていた。

Cisco Systemsのパビリオン。同社は中国語で「思科」と呼ぶ Cisco Systemsのパビリオン。同社は中国語で「思科」と呼ぶ

都市の管理システムを統合

 2階のショーケースでは、階下で見たショートムービーの裏側の仕組み、つまり、どのように都市でS+CCを導入、活用するについて、デモンストレーションとともに実際のシステムを使いながら具体的な説明がなされた。

 まずは、都市インフラの中枢機能である交通とそれにかかわる市民の安心・安全という観点で紹介されたのが、都市全体をコントロールする管理システムである。今回は市内交通の要所となる橋の上で事故が起きたケースを想定してデモが行われた。都市を管理する司令センター室には上海市内の地図を表示した複数の大型モニタが並んでおり、事故発生と同時に該当場所が大きくクローズアップされる。次の瞬間、警察署と消防署に情報が届き、交通整理や怪我人の収容、搬送といった事故の後処理が事故発生からわずか数分のうちに行われる。

 それと並行して、事故による通行止めなどの情報が、近辺を走るモバイルセンサーを搭載した自動車や公共交通機関に提供されるとともに、適切な迂回ルートが示される。交通情報の提供はドライバーだけにとどまらず、バス停留所もIPネットワークで接続されているため、バスの到着を待つ市民に運行状況がリアルタイムで伝わっていく。バス停はデジタルサイネージ(電子看板)の役割も担っており、待ち時間に映画の上映案内を見てバス停の端末から映画予約をしたり、レストランの割引クーポンをダウンロードしたりすることもできる。

 これらが実現できるのは司令センター室、警察や消防、市役所などの各機関、車両から、都市の道路や街灯に至るまですべてがIPネットワークで結ばれているからだ。現在の多くの都市は、警察や消防、道路交通など各機関の横連携が希薄で、それぞれが独自のシステムを活用して都市の情報収集、情報発信をしているため、インシデント対応に関してはどうしても時間が掛かり非効率な状況にある。「S+CCが実現する都市では、これらの機関がIPネットワークという1つのインフラで統合されているため、リアルタイムに情報共有でき、効率的に業務を遂行できるのだ」と、デモを担当した米原明史氏(シスコシステムズ エンタープライズマーケティング シニアプロダクトマネジャー)は強調する。

都市のさまざまなインフラを管理する司令センター室のデモ 都市のさまざまなインフラを管理する司令センター室のデモ

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