上海万博に出現した未来都市、それを支えるテクノロジーとは?【前編】(3/3 ページ)

» 2010年09月13日 12時48分 公開
[伏見学,ITmedia]
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自宅にいながら医療診察が可能に

 次に紹介されたのは、事故の被害にあった市民に対する医療ソリューションである。救急車で搬送される間に市民の詳細情報(例えば、身元情報や怪我を負った部位など)を動画像などで病院に随時提供し、到着後すぐに適切な処置ができるようなプロセスを構築した。退院後のフォロー体制もシステムで整備されており、市民は自宅からテレプレゼンスによって医師と面談し、怪我の状況説明や助言をいつでも受けることができる。仮に担当医が不在でも、例えば、血中酸素濃度や心拍数など身体に関するデータを送っておけば、後で健康状況のフィードバックを得られるというわけだ。

 S+CCにおいては、自宅で受けられるサービスは医療に限らない。その1つが教育だ。例えば、何らかの理由で通学できない生徒がいたとしても、テレプレゼンスあるいはiPhoneやiPadなどのモバイル端末を通じて授業にインタラクティブに参加できる。CiscoのインターネットTV会議システム「WebEX」にある機能を活用すれば、教師と生徒の全員が同時にホワイトボードにテキストや図形を自由に書き込み、アイデアなどを共有することも可能である。授業内容やホワイトボードへの書き込みはすべてログを取っているため、復習も容易である。

 S+CCの教育ソリューションによって語学などの個人教育も加速するという。デモでは自宅から遠隔地の講師による中国語レッスンを体験した。直接対面と遜色ないリアルタイムコミュニケーションが取れるため、発音の修正やアドバイスなども時間的なストレスを感じずに適時受けられる。

遠隔地からも医師との面談が可能だ 遠隔地からも医師との面談が可能だ

経済的なメリットも

 これまで述べてきたように、S+CCを体現する都市の誕生によって、人々の生活が今までよりも便利になるだろうという期待感はある。しかし、いかに便利な生活が実現できたとしても、その生活水準を維持するために莫大なコストが掛かるというのでは問題である。S+CCの導入によって経済的なメリットはあるのか。

 その1つの解として、IPネットワークによるエネルギー管理が挙げられる。S+CCのエネルギーソリューションでは、IPベースのネットワークプラットフォームを利用して、オフィスや住居の電力や水道、ガスといったエネルギーを管理して運用効率を高めるとともに消費コストを抑制する。建物の管理者はあらゆるフロアや部屋に設置されたセンサーから提供されるエネルギー消費状況をリアルタイムでモニタリングできるほか、事前に計画した月次(あるいは日次)のエネルギー消費の基準を超えないよう、無駄に使われている照明を消したり、オーディオ機器の音量を抑えたりなどのオペレーションがシステム管理によって自動的に行われる。

 このように、S+CCの世界は技術的には実現可能な段階にまで来ているが、公的機関の組織上の問題や国や都市の制度的な問題など、乗り越えなくてはならない障壁はまだ多い。そうした中、政府自らが率先してS+CCを具現化した未来都市の構築に注力している地域がある。その手掛かりをつかむべく、韓国の西北部にある都市、仁川へ飛んだ。



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