中堅・中小企業を変えるクラウド活用

【第1回】既存業務システムの外出しだけでは駄目だ中堅・中小企業のSaaS/クラウド活用(3/3 ページ)

» 2010年09月14日 08時00分 公開
[岩上由高(ノークリサーチ),ITmedia]
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SaaS活用の視点をPaaSやIaaSまで広げることが重要

 ここまでの流れを踏まえると、

1. 中堅・中小企業にはSaaSやクラウド活用の潜在ニーズが存在する

2. 既存業務システムを単に外出ししてもコスト削減は実現できない

3. 業績の良いユーザー企業はシステムインテグレーションを伴うIT活用に注目している

 といった状況であることが分かる。これだけを見ると、「SaaSやクラウドを活用せず、従来通りに自社内で情報システムを管理、運用した方が良いのでないか」と思われるかもしれない。確かに、あらかじめ用意されたサービスを利用するという観点での「SaaS」だけに手段を絞ってしまうと、そうした結論になるかもしれない。だが、クラウドを構成する要素はSaaSだけではない。PaaSやIaaSの存在も忘れてはならない。

IaaS:ハードウェアやネットワークといったインフラを提供する

PaaS:開発/運用のプラットフォーム(言語ややフレームワークなど)を提供する

SaaS:あらかじめ決まった形の業務遂行手段(アプリケーションなど)を提供する


 業績改善効果を期待できる業務システムをSaaSやクラウド環境で管理、運用できれば理想的だ。しかし、それらのIT活用にはデータ連携、セキュリティ対策、システム連携、独自業務ロジックなどといった形でハードウェアからネットワーク、ミドルウェアに至るさまざまな階層でのシステムインテグレーションが必要となってくる。

 それらをクラウド環境上で実現するにはPaaSやIaaSにまで視点を広げたクラウド活用が必要となってくる。これはSaaSの守備範囲がソフトウェアであって、ミドルウェアやハードウェア、ネットワークに起因する課題まで負わすことが難しいことからも明らかだ。「既存業務システムをそのままを外出しする」という発想がうまくいかないのも、元来SaaS/PaaS/IaaSで総合的に検討すべきところを無理にSaaSのみでカバーしようとしたことが大きな要因の1つといえるだろう。

SaaSのみにとどまらないクラウド活用の重要性 SaaSのみにとどまらないクラウド活用の重要性

 こうした前提を踏まえ、連載第2回ではIaaS、第3回ではPaaSを取り上げ、SaaSを効果的に活用するために必要なミドルウェアやハードウェア、ネットワークへの視点拡張について述べていく。

著者紹介:岩上 由高(いわかみ ゆたか)

ノークリサーチのシニアアナリスト。早稲田大学理工学部大学院数理科学専攻卒。ジャストシステム、ソニー・システム・デザイン、フィードパスなどを経て現職を務める。豊富な知識と技術的な実績を生かし、各種リサーチ、執筆、コンサルティング業務に従事。著書は「クラウド大全」など。


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