第3回:顧客リレーションシップの「構築」賢いCRMの3原則

企業が消費者向けのマーケティングを推進し、顧客とのリレーションシップを拡大するために、念頭に置くべき3つの原則が存在する。当連載「賢いCRMの3原則」では、この3原則に基づいたマーケティングキャンペーンの進め方を解説する。第3回目の今回は、顧客リレーションシップの「構築」を取り上げる。

» 2010年10月18日 10時00分 公開
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顧客資産は「毀損」する

 今日の既存顧客は過去の新規顧客であり、今日の新規顧客は将来の既存顧客である。今日の既存顧客とのリレーションシップが永久に維持/拡大できるのであれば、新規顧客の獲得を重視する必要はなくなるが、実際にはそうはいかない。顧客とのリレーションシップ維持、拡大に腐心しても、どうしようもない離反は発生するものである。死別や引越し、結婚や離婚といった変化に伴って、必要な商品/サービスは変わり得る。残念だが、その際に自社とのリレーションシップが不要になる可能性は、認めなければならない。

 それでも商売の規模を維持、拡大していくなら、離反顧客数を超える数の顧客を獲得しなければならない。その意味で新規顧客を獲得し、リレーションシップを構築することは顧客の維持、単価向上と同様に重要なCRM原則の1つである。何よりも、継続的に顧客を獲得できなければ、リレーションシップを維持/拡大すべき顧客の数が低減し、将来的に得られる顧客からの収益は減少、すなわち顧客は資産として毀損(きそん)することになり、企業は縮小均衡を余儀なくされる。

 一方でCRMに関連するテクノロジーはすべて既存顧客に関するものである。顧客分析やキャンペーン管理のツールは、顧客データベースにある既存顧客のデータを対象としている。そのため、これから獲得する顧客を分析することはできないし、これから獲得する顧客の連絡先情報も存在しないため、キャンペーン案内を送ることも不可能だ。一般に新規顧客の獲得に用いられる手法はマスマーケティングであり、ダイレクトチャネルを利用したデータベースマーケティングは「お呼びでない」ようにも思える。

 しかし、こう結論付けてしまうことは、半分正解でありながら、半分思慮不足である。第1に「昨日の新規獲得顧客は、今日の既存顧客」であるため、直近で獲得した顧客を対象として分析を行い、これら顧客の傾向を理解することは、新規顧客の獲得という課題に対処する上で参考になる。

 次に、「昨日の新規獲得顧客を、今日の既存顧客に」するための努力に着目しなければならない。「いちげんの顧客」という言葉があるが、せっかくコストを掛けて獲得した顧客を定着化させることができず、将来的にリレーションシップの維持/拡大ができないのであれば、当初のコストを回収することもできない。獲得した顧客を自社の既存顧客として定着化させることが必要となり、それはキャンペーン管理ツールを利用した自動化が適用可能な分野だ。以降で直近獲得顧客の分析例、そして獲得顧客の定着化例を挙げよう。

昨日の新規獲得顧客は、今日の既存顧客

 まず、獲得したばかりの顧客を対象とした分析を考える。図1は、キャンペーン管理ツール「Teradata Relationship Manager」の「行動トレンド分析」を利用している。月トレンドで獲得した顧客の数を分析しており、棒グラフを流入元のチャネルで分解している。

図1:行動トレンド分析の結果 図1:行動トレンド分析の結果

 この例では自社が広告を掲出している外部ポータルサイトのA、B、C、Dそれぞれから、自社サイトに流入し会員登録する際に流入元を識別できるようにしておき、そのデータを利用している。これは会員登録時のアンケートデータでも構わないし、物理チャネル(コールセンター、物理店舗など)を含めて区分することも考えられる。この分析結果から、それぞれのポータルサイトの力関係が分かる。もちろん掲出広告のボリュームにも依存するが、自社が獲得した顧客が、どのチャネルから流入してきているのかを理解できる。

 また、掲出広告の内容変更や特別なマスキャンペーンを張った際に、どの程度の効果があるか理解できる。例えば、図9の例では4月に各ポータル向けの掲出広告内容を変更したことで、流入顧客数全体に改善がみられるとともに、大きく流入数が改善したポータルと流入が減ったポータルを特定できる。

 こうして得られた知識は、新規に顧客を獲得する際の利用チャネルや、その案内内容についての意思決定を支援してくれる。ここでは、最近獲得した顧客に関する知識で、今後獲得する顧客に関する知識を補完することが行われている。これにより、通常既存顧客向けに展開しているキャンペーンと同じように、誰に対して(対象顧客)、何を(案内内容)、いつ(案内タイミング)、どこで(案内チャネル)案内すべきかを設計できるようになる。違いは、直接的に接触するチャネルを利用するか、それとも間接的に接触するチャネル(媒体、メディア)を利用するかでしかない。

昨日の新規獲得顧客を、今日の既存顧客に

 もう1つの命題は、新規に獲得した顧客を定着化させることである。獲得した顧客は、自社とのリレーションシップが最も希薄な顧客である。このタイミングで適切なケアを行い、自社商品/サービスの利用が定着するように支援することが求められる。

 図2は、会員として入会した顧客に対するフォローアップキャンペーンの流れである。昨日入会した顧客を対象に、まずは商品/サービスの基本的な利用方法を紹介する電子メールを案内している。例えばポイントプログラムを展開している企業であれば、最初の利用を促し、利用に関する基本的な説明を案内することになるだろう。その後、誘導先のWebサイトにアクセスした顧客と利用を開始した顧客に対しては、特典やポイントプログラムのお得な利用方法を案内するといった形で、顧客に対する啓もうを深化させていくことが考えられる。Teradata Relationship Managerでは、このような顧客反応に応じたマルチステップ型のキャンペーンを自動実行できるユニークな機能を備えている。

図2:マルチステップ型キャンペーンの設定例 図2:マルチステップ型キャンペーンの設定例

 一方、最初の案内にもかかわらずその後の利用がなかった顧客には、コールセンターに対してリストを連携させ、オペレーターから「入会御礼と利用方法について不明点がないかを伺う」というステップを踏んでいる。これにより、相対的に高コストなコールセンターチャネルをすべての顧客ではなく、本来ケアしなければならない顧客に注力させることができ、本来の目的である「顧客の定着漏れ、一見化阻止」にも寄与できる。

自動化によりキャンペーンの実行数を増加させる

 3回の連載で、CRMの3原則である顧客リレーションシップの維持、拡大、構築のための分析例とキャンペーン実行例を紹介し、その考え方を解説してきた。いずれのキャンペーン実行例も設定後にマーケティング担当者がわずらわされることがないように、Teradata Relationship Managerではリスト抽出処理やチャネル連携処理が自動化されている。

 加えて、Teradata Relationship Managerの顧客分析機能、そしてデータマイニングツール「Teradata Warehouse Miner」のデータマイニング機能を利用することが可能だ。データウェアハウスとして高いパフォーマンスと拡張性を誇るTeradata Database上に、顧客とのリレーションシップにまつわるデータを統合して格納することによって、包括的な顧客分析と分析結果に基づく顧客へのアプローチが可能となる。このような分析機能とキャンペーン管理機能の透過的な連携は、唯一の組み合わせといえよう。

 こうした組み合わせが、賢いCRMを実現する基盤となる。分析によって得られた知識を即座にキャンペーン実行に連携させることを可能にするためだ。そして自動化が徹底されることにより、マーケティング担当者は、本質的な意味で賢いCRMが実現できるようになる。なぜか?

 マーケティング担当者が与えられたリソースの中で制約与件が最も大きく、ボトルネックになるのは時間である。限られた時間の中で、分析結果に基づいてキャンペーンを立案し、適切にキャンペーン構成要素(対象顧客、案内内容、案内タイミング、そして案内チャネル)を選定しつつ、企業業績に寄与できる量のキャンペーンを実行しなければならない。また、顧客が自社の商品やサービスを欲している適切な「タイミング」に、顧客にキャンペーンを届けなければならない。

 これらを解決し、時間のボトルネックを解消してくれるのが、キャンペーン管理ツールによる自動化なのである。自動化によるメリットは、顧客ニーズへの即応や、キャンペーン実行量の増大にとどまらない。自動化によってマーケティング担当者は分析を行い、顧客について思いをめぐらせ、キャンペーンを立案し、案内するメッセージを練る――というマーケティング担当者が本来行うべき創造的な業務に時間を費やせるようになるのだ。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2010年10月31日