CiscoのチェンバーズCEO、動画、ITコスト、将来のCEO像を語る

テレビ会議システムやモバイル端末「Cius」など、動画関連の製品を積極的に展開するCiscoのCEOが、同社の戦略を語った。

» 2010年10月21日 15時22分 公開
[Nicholas Kolakowski,eWEEK]
eWEEK

 フロリダ州オーランドで開催のGartner Symposium/ITxpo 2010において、米Cisco Systemsのジョン・チェンバーズCEOは10月20日(現地時間)の基調講演で、ITプロフェッショナルや企業幹部を前にして「好むと好まざるにかかわらず、もうすぐ動画があなた方の仕事の一部になるだろう」と語った。

 「音声、そしてデータの次に来るのは動画だ。われわれはそれを前提として、7年前に取り組みを開始した」とチェンバーズ氏は述べた。「好むと好まざるにかかわらず、市場の移行が起きるだろう」。同氏によると、動画中心のネットワーキングに向けたCiscoの取り組みは、潜在的に大きなリスクを伴う賭けだとしながらも、これに意欲的に挑戦し、数年前からその基盤となる技術の開発を社内で進めてきたという。

 「IT管理者あるいは企業のリーダーとして心しておかねばならないのは、この移行は待ってくれないということだ」と同氏は付け加えた。

 Ciscoの現在の戦略は、クラウド、仮想化、データセンターといった高成長分野への進出を図ることだ。しかしチェンバーズ氏は基調講演の中で、企業はさまざまなコンシューマーデバイスをITインフラに組み込むとともに、それに付随するセキュリティと信頼性の問題と格闘する必要があるという点も強調した。

 「Cisco自身も、こうしたデバイスの利用を制限しようとした。しかし4年前、制限することは不可能だということが明白になった」とチェンバーズ氏は語った。この経験がCiscoの現在の構想の開発につながったという。その構想とは、ユーザーが世界中どこにいようとも、どんなデバイスを使っていようとも、ユーザーにコンテンツを配信することが可能なネットワークインテリジェンスとツールを提供することだ。そしてこういったネットワークを実現するには、クラウドや仮想化などの技術が進歩する必要があるという。

 前日の基調講演で米salesforce.comのマーク・ベニオフCEOが、大手ITベンダー各社は時代遅れのパラダイムを維持することに関心を抱いていると指摘したのを受け、チェンバーズ氏は、クラウドへの移行に対して「現役プレイヤーたち」が抵抗を示していると呼応した。「彼らがこの移行に関心を示さないのは、サーバやストレージが売れなくなるからだ」

 チェンバーズ氏はさらに、ローカルなサーバ中心型インテリジェンスで管理される“ダムパイプ”(訳注:データを送受信するだけの「土管」)のシステムでネットワークを運用できるという考え方に異論を唱えた。「インテリジェンスはネットワークファブリック全体にくまなく広がるだろう」と同氏は話す。「ネットワークから切り離されたサーバ、ストレージから切り離されたサーバというのは、正しいアプローチではない。スタンドアロンのシステムとしてのサーバビジネスに進出するつもりはない。ネットワーク、アプリケーション、ソフトウェアに接続されたシステムでこの分野に進出するつもりだ」

 しかし聴衆のCIOやITプロフェッショナルにとっては、インテリジェントなネットワークというコンセプト、そしてそれに伴うコストを自社のCEOにどう説明すればいいのかという大きな疑問が残るようだ。米Gartnerのアナリストからの質問に対し、チェンバーズ氏は、Ciscoの製品は顧客の生産性に貢献すると主張した。

 「クラウド、ネットワーク、動画についてCEOに説明しても、相手は眠たくなるだけだ。それよりも従業員1人当たりの売上高を話題にすればいいのだ」とチェンバーズ氏は述べた。動画や仮想コラボレーションなどのツールは従業員の生産性を高め、企業の収益を拡大できると考えられている」

 「CEOにとって最初の疑問は“自社の資産をより生産的に活用するにはどうすればいいのか”ということだ。第2の疑問は“売り上げはどうなるのか”ということだ。ITはこの2つの目標に貢献できる。CEOがITの進化を常に話題にするようになる……そういった転換期が訪れようとしている」(同氏)

 Ciscoはその一方で、企業とコンシューマーの両市場で販売拡大に取り組んでいる。同社は2010年第4会計四半期、売上高108億ドル、純利益19億ドルと過去最高の収益を記録した。

 これらの数字が発表された8月11日の収支報告電話会見でチェンバーズ氏は、2011年第1会計四半期の売り上げが前年同期比で18〜20%増加するとの見通しを示しながらも、全般的な景気は依然として不透明な状況が続くだろうと述べた。「経済状況は今後も、当社の多くの顧客にとって不確定要素となるだろう」

 Ciscoの四半期決算はアナリストの予測をやや下回る内容だった。しかし同社の製品は全般的に売り上げを伸ばし、スイッチング製品は12%、ルータは4%、ユニファイドコミュニケーション(UC)製品は20%、UCS(Unified Computing System)は90%、ワイヤレス製品は30%の売上増だった。

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