経費削減、次はクラウドかな？：オルタナティブ・ブロガーの視点

データセンターを仮想化して経費削減に成功したら、CEOに「今度はクラウドを利用して、さらにIT経費を削減してくれ」と言われた――こんな状況に置かれたCIOの気持ちをオルタナティブ・ブロガーの岸本善一氏が想像してみました。

[岸本善一，ITmedia]

（このコンテンツはオルタナティブ・ブログ「ヨロズIT善問答」からの転載です。エントリーはこちら。）

　仮に筆者が中堅から大手の企業のCIOだとしよう。あちこちのデータを基に、稼働率が平均5％だったサーバを、仮想化して統廃合し（稼働率は今60％）、さらに10カ所あったデータセンターを3カ所に統合したとしよう。これで運営費が大いに減少して電力消費も低下したとしよう。それでもCEOがやって来て、「巷にはクラウドというものがあるらしい。それを利用して、さらにITに掛かる経費を削減してくれ」と言ったとしよう。さてどんなオプションがあるだろうか。

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　まず、パブリックかプライベートかを考える。パブリックだとSaaS（サービスとしてのソフトウェア）、PaaS（サービスとしてのプラットフォーム）、またはIaaS（サービスとしてのインフラ）だ。手っ取り早いのはSaaSだ。

　最近メールのトラフィックが増加しているので、ストレージやサーバを増加しなければならない。経費が掛かるし、スケールするのが苦しい。そういえば、メールなどのコモディティはSaaSに向いているらしい。

　というわけで、MicrosoftのExchangeをひっぺがしてGoogleのGmailにしたとしよう。もちろん変更のための経費やそのほか面倒なことも全部精査してこの決定をしたとする。ここまでは簡単だ。ストレージやサーバの問題から解放されて万々歳だ。さらに数年で、変更に掛けた経費も回収できる。サポートはGoogleに行くのでサポート要員も削減した。

　そういえば、薬業界の米イーライリリー・アンド・カンパニーが面倒くさい数値演算をAmazonのWebでやったら何十分の一の経費と時間でできたと聞いている。それに、Web系のアプリを展開するスタートアップ企業がIaaSを使って必要に応じてスケールアウトしているらしい。

　待てよ、うちにはそんな複雑な数値計算業務はないぞ。しかもうちはスタートアップ企業でもないし、Web系でもないしなあ。

　あ、そういえば、開発チームがいつも「テスト環境をセットアップするのに時間がかかるが、テストが終わったらその環境をバラさないといけない。あちこちに無理を言ってサーバなんかを借りてくるのも大変だ」と言っていたっけ。しょっちゅう使うわけではないからサーバなんかをテスト用に購入しておくわけにもいかない。そうだ、IaaSがぴったりだ。

　そうそう、パブリッククラウドの問題点はSLA（サービスレベル契約）とセキュリティらしい。どこかの専門家が言っていたが、クラウド屋さんのセキュリティは高く、むしろ安心だとか。まあ信じるとしよう。うちの場合、IaaSを使うのはテスト環境だからSLAはまあよいか。

　ところで、IaaSはプライベートクラウドとパブリッククラウドを組み合わせて、ハイブリッドクラウドとして使えるそうだ。最低限のコンピュータ環境を会社内部でクラウド化しておき、負荷が増加して内部のクラウドだけで対処できなくなったらクラウドバーストしてパブリックのクラウドも利用できるんだって。

　今のデータセンターは仮想化して統合したのだけれど、これってプライベートクラウドって呼べるのかな。つまり、オンプレミスのプライベートクラウドだ。もし違うのなら、それはソフトとハードのコンフィギュレーションの問題なのだろうか。それとも、新たにソフトやハードを購入しなけばならないのかなあ。ところでプライベートクラウドにもやはりSaaS、PaaSやIaaSなんてあるのかな。よく分からない。

　クラウドバーストに戻ろう。うちの仮想化はVMwareを使ったけど、パブリックのクラウドって大体Xenベースだとどこかに書いてあった。そうするとプライベートで走らせているVMはパブリックのクラウドに移動できないぞ。それって、余剰の負荷をアウトソースできないということではないのか。なんだか分からない。

　大体データセンターを統廃合した1つの理由は、必要な電力の確保が困難だからだ。できれば内部のデータセンターの電力消費も減らしたい。じゃあ、プライベートクラウドをホストするオプションを考えてみよう。これってデータセンターのインフラの一部をホスト屋さんのセンターに移動することだな。そうしたら、電力や冷却の心配が減る。センターの1フロア全部を借り切るので、物理的なセキュリティはあまり心配しなくてよい。極端な話、データセンター全部をホスト屋さんに移してしまえば、話は簡単だ。待てよ、しかしそうしたら困ることはあるのだろうか。

　あれっ、クラウド、クラウドと騒いでいるけれど、上で見たような根本の質問に答えてくれる人がいないぞ。どうすればよいのだろう。

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　実は上に挙げた話は、今度筆者がモデレータとして参加するパネルセッションの内容だ。クラウド、クラウドと騒ぐわりには、根本的なところが明らかでない。クラウドの専門家2人に上の質問をする。その回答はパネルの後、わたしのブログで発表しよう

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