“Beyond Boundaries” ビジネスの限界を突破する「データ中心型企業」の実現Informatica World 2010 Report(1/2 ページ)

米Informaticaが年次カンファレンス「Informatica World 2010」を開催した。企業が景気後退の波から脱出を図るにはデータ中心型のビジネスモデルが不可欠であるとし、その実現に向けた同社のビジョンを発表した。

» 2010年11月04日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 データ統合ソフトウェア大手の米Informaticaは11月2日から3日間、12回目となる年次カンファレンス「Informatica World 2010」を米国ワシントンD.Cで開催した。初日の基調講演は、ビジネスの限界を超える「データ中心型企業の実現」をテーマに、5つの観点で同社のビジョンを紹介した。

Informatica World 2010の会場となったGAYLOAD NATIONAL HOTEL & CONVENTION CENTER。ワシントンD.Cの中心部から自動車で20分ほど離れた郊外のポトマック川の河畔に位置する。カンファレンスには約50カ国から1300人以上が参加した。

データを起点にするビジネス

 今年のカンファレンスのメッセージは「Beyond Boundaries」。直訳すれば「境界を超えよ」となるが、そこにはデータを中心に据えたビジネスの実現という意味が込められている。同社がこう主張する背景には、2008年の金融危機を契機に世界の市場を飲み込んだ景気後退の波がある。企業がそれまでに築き上げたビジネスモデルが通用しなくなり、先行き不透明な状況の中で次の成長モデルを描けないでいる企業が少なくない。

米Infomatica ソヘイブ・アバシ会長兼CEO

 ETLツールを長年手掛ける同社は、多くの同業他社が大手ITベンダーの傘下に取り込まれていった中で生き残り、現在は独立企業としての立場を確立している。2009年まで毎年18%ペースの成長を続ける同社は、先の四半期業績(2010年7〜9月期)も過去最高の売上高を記録し、データ系ソリューションに対する企業顧客からの引き合いは非常に好調なようだ。

 だがソヘイブ・アバシ会長兼CEOは、この状況に安住することが同社の危機につながると見ている。業務部門とIT部門が共同で「データ中心のビジネス」を実現していく支援を提供するというのが同社のビジョンであるという。その具体的な方向性を提示しなければ、顧客企業の将来にわたる成長はかなわない。

 そこでアバシ氏が示したのが、「Beyond Dataware Housing」「Beyond Traditional Enterprise Computing」「Beyond ETL」「Beyond Relational Data」「Beyond Infomatica」という5つの観点である。

 多様なデータの相関関係からビジネスの成功に向けたヒントを導き出すために利用されるデータウェアハウス(DWH)は、企業の戦略的なIT投資の重点分野の1つとして注目されている。同社のビジョンを実現する手段でもあるが、アバシ氏の言うBeyond Dataware Housingとは、DWHから導き出したヒントをより短期間で形にする新たな利用形態である。

 「従来のDWHは、半年先、1年先といった比較的長期のプランに利用するものだった。グローバル化や効率性、リクス管理など企業は取り巻く環境の激しい変化に、短期間で対応しなくてはならない。そのためにはデータを中心に据えた仕組みが不可欠だ」(アバシ氏)

 特に現場レベルでは、目前の環境変化に対して迅速かつ機動的に対応することが要求される。同社では、DWHとビジネスインテリジェンス(BI)から導き出した戦略の展開に即時性を持たせるような新たな方法を提供していくという。

 「Beyond Traditional Enterprise Computing」は、クラウドコンピューティングに代表される企業ITの大きな環境変化の波を乗り越えようというものである。米IBMや米Oracle、米Hewlett-Packard(HP)といった大手のITベンダーは、企業買収を通じて成長を図り、GoogleやAmazon、salesforce.comなどのベンダーは革新性を成長のエンジンにしているとアバシ氏は話す。こうしたベンダーの動きは、クラウドコンピューティングの全盛を見据えたものでもあり、クラウド化によってハードやソフトの垣根がなくなりつつあるという。だが、「データ中心」という観点で見れば、クラウド上でデータをどのように利用するかという点が重要であり、この点で同社には独立系ベンダーとしての中立性に強みがあるとアバシ氏は強調する。

 同社もクラウドサービスを提供しているが、ここでは多種多様な外部のクラウドサービスとの連携を可能にしており、オンプレミス(自社保有)やクラウドサービスを組み合わせてビジネスに貢献するデータの活用を実現したいとするユーザー企業の要望に応えている。

InfomaticaのクラウドサービスでTwitterのツイート一覧を取り込み、salesforce.comに展開した様子

 「Beyond ETL」は、ツールとしてのETLの新たな方向性を示すもので、このほど発表したデータ統合プラットフォーム製品の最新版「Informatica Release 9」がそれに当たる。先に挙げたDWHの新たな利用やクラウドコンピューティングの普及により、データの活用範囲が従来に比べて広がっていくため、包括的な手段でデータを管理する基盤が不可欠であるという。

 アバシ氏は、この点も独立企業である同社に強みがあると主張する。同氏によれば、企業におけるデータの重要性の高まりを数多くのITベンダーが唱えているが、それに対するソリューションはアプリケーション側で解決していくという方法が主流であるという。それに対し、同社は「特定のシステムに依存しないため、オープンな統合基盤を提供できる唯一の存在だ」(アバシ氏)としている。

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