「社運を賭けてクラウドに取り組んでいく」――MS・樋口社長

“3つのクラウド”を武器にビジネスの拡大を図るマイクロソフト。自社イベントでは、樋口社長がクラウドに対する熱意を語ったほか、リクルートや帝国データバンクなどユーザー&パートナー企業が登場した。

» 2010年11月25日 19時47分 公開
[伏見学,ITmedia]

 1960〜70年代に著しい高度成長を遂げ、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と称されるなど、その名を世界にとどろかせた日本。ところが今年、40年以上にわたり世界第2位の座を守り続けていたGDP(国内総生産)において、その座を奪われようとしている。IMF(国際通貨基金)が発表する一人当たりのGDPについても、2000年から2008年にかけて20位もランクを落とすなど、日本全体が厳しい経済状況に置かれている。

 こうした苦境を打開するために、日本企業はいかなる行動を取るべきだろうか。

 マイクロソフトは11月25日、ユーザー企業やパートナー企業に向けた自社イベント「The Microsoft Conference + Expo Tokyo」を開催した。基調講演に登場した樋口泰行社長は、海外展開こそが日本企業の進むべき道だとして、「もう一度強い日本を取り戻すためには、ITを活用したグローバル経営基盤を早急に構築すべきだ」と強調した。

マイクロソフトの樋口泰行社長 マイクロソフトの樋口泰行社長

 2008年のリーマンショック以降、日本企業の多くが筋肉質な経営を目指し、コスト削減など“ムダ”の排除に躍起になっている。樋口氏は「リストラなど守りの取り組みだけでは駄目で、攻めに転じていかなければならない」と指摘する。とりわけ今後は内需が期待できないだけに、海外に目を向けて新興国市場を獲得していくことが不可欠である。

「最近の日本は“草食系”と言われるが、もっと戦闘意欲を持って市場を開拓すべきだ」(樋口氏)

 こうした企業の海外展開をサポートするのが、グローバルに通用するIT基盤であり、マイクロソフトが提供するクラウドコンピューティングサービスだという。同社は既に発表している2011年の経営方針において、クラウドビジネスを最も注力する分野に挙げており、Windows Azureをはじめとする「パブリッククラウド」、仮想化システムであるHyper-Vなどを活用した「プライベートクラウド」、他社との連携による「パートナークラウド」の3種類で顧客の多様なニーズに応えていくとしている。

 「日本企業がクラウドを核にしたグローバル経営基盤を持つことで、海外展開が容易になる。そのために、マイクロソフトは社運を賭けてクラウド事業に取り組んでいく」と樋口氏は意気込んだ。

1万7000人がクラウドを活用

リクルートの柏木斉社長 リクルートの柏木斉社長

 基調講演では、マイクロソフトのユーザー企業やパートナー企業も登壇し、それぞれの取り組みなどを紹介した。

 ユーザーの代表として最初にステージに招かれたのは、リクルートの柏木斉社長だ。同社はマイクロソフトの企業向けクラウドサービス「Microsoft Online Services」で提供されているメッセージングソリューション「Exchange Online」を1万7000人の社員が利用しているビッグユーザーである。

 クラウドのメリットについて、柏木氏は「海外展開やM&A(企業の合併・買収)を押し進める上で、情報システムやITインフラを短期間で構築できるかがビジネスの勝敗を決める。柔軟性に富んだクラウドは、スピードやコストパフォーマンスにおいて大きな威力を発揮する」と強調した。

営業担当者が与信管理も

帝国データバンクの鈴木良平常務 帝国データバンクの鈴木良平常務

 マイクロソフトのクラウドサービスを強力に推進するパートナーとして、ステージに登場したのが、帝国データバンクの鈴木良平常務である。両社はこのたび新サービス提供による協業を発表した。

 帝国データバンクは、135万件以上の企業情報を提供するデータベースを所有しており、これをマイクロソフトが同日発表したクラウド型の企業向け顧客管理アプリケーション「Microsoft Dynamics CRM Online」日本語版と連携させる。この新サービスを活用することで、リアルタイムで更新される企業データに基づいた顧客分析や、専門の調査スタッフの評価を活用したリスク管理が可能になるほか、営業担当者レベルでの与信管理や取引の可否判断ができるようになる。

 鈴木氏は「これまでは企業情報を単に素材として顧客に提供していたが、システム面でのサポートはなかった。マイクロソフトのCRMと連携することで、日夜変化する企業情報を素早く、顧客に最適な形で提供できるようになるのだ」とアピールした。

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