企業セキュリティ市場に舵を切るKaspersky――アンチマルウェアは不変なりReport(1/2 ページ)

コンシューマー向けウイルス対策市場で急成長を遂げたロシアのKasperskyが、企業セキュリティ市場でのビジネスを本格化させると表明した。その中核となるビジョンや戦略を同社の首脳陣が海外メディアに提示した。

» 2010年11月29日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 数十社のベンダーがひしめくウイルス対策製品市場で、近年に急成長を遂げたロシアのKaspersky Lab。欧州各国のコンシューマーセキュリティ市場でトップシェアを持つほか、世界シェアは3位になる。同社は11月27日、今後の経営戦略を海外メディア向けに説明するカンファレンスをモスクワで開催。企業セキュリティ市場に本腰を入れる方針を表明した。

 1997年に創業したKasperskyは、同業他社の多くが1990年ごろに創業したのと比べると、後発の立場にある。これまでコンシューマー分野を主戦場に、創業者であるCEOのユージン・カスペルスキー氏自らが“同社の顔”になってシェア拡大に向けた活動を続けてきた。日本では製品パッケージに同氏が登場し、セキュリティ関連の展示会などにも頻繁に足を運んでいる。セキュリティ製品はコンピューターユーザーの信頼が最も重要とされる製品の1つだろう。製品開発者の表情がユーザーに見えようにすることで製品に対する信頼を高めてもらう。市場でブランドを確立するというのが同社の成長戦略である。

 今回のカンファレンスのテーマは「CHANGING TIMES FOR IT Security」。セキュリティを取り巻く環境変化に対する同社の戦略が、カスペルスキー氏と最高執行責任者(COO)のユージン・ビャッキン氏から語られた。その柱は、コンシューマー市場で培ったブランド力と信頼を礎に企業セキュリティ市場でさらなる成長を狙うというものだ。

ITのコンシューマー化

日本でもおなじみのユージン・カスペルスキー氏。一年の半分以上は世界各国を飛び回り、ロシア国内ではITベンチャーの成功者として広く知られた存在である

 カスペルスキー氏は、戦略の具体的な中身には触れず、ITを取り巻く環境の変化と自身の展望を次のように話した。

 「コンピューターは楽しい。とても良い時代だ。ワイヤレス接続によってスマートフォンでSNSやゲームを楽しむユーザーが増えているのが良い例だろう。でも将来は分からない。ゲームや電話、インターネットの機能を持つ腕時計が現れるかもしれない。そこにはどんなセキュリティが必要とされるのかについて考えてみたい」

 同氏は、ITのコンシューマー化がセキュリティに大きな変化を与えていると指摘する。この動きはコンシューマーや企業に共通したものではあるが、特に企業においては従来のセキュリティ対策についてユーザーに再考を迫るものになるかもしれない。

 だが、同氏はセキュリティを取り巻く環境が変化しても、セキュリティ脅威の根源がウイルスやマルウェアであることには変わりがないと強調する。脆弱性を狙う攻撃や標的型攻撃、フィッシング攻撃などの出現で犯罪の手口が多様化しているが、そのすべてにマルウェアが介在する。ウイルス対策から出発した同社としては、「ITセキュリティの真の価値とはマルウェアの脅威からユーザーの資産を保護すること」というのが主張であるようだ。

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