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» 2010年11月29日 08時48分 UPDATE

Weekly Memo:MSがクラウド関連イベントで見せたセールスフォースへの対抗意識

マイクロソフトが先週開催したクラウド関連イベントには、5000人を超える来場者が集まった。同社ならではの集客力だが、そこには競合への強い対抗意識があったようだ。

[松岡功,ITmedia]

MSが業界最大級規模のイベントを開催した理由

 「マイクロソフトはクラウドという新しいトレンド、新しい顧客ニーズに真剣に応えようとしている。その真剣さをお伝えするのが、このイベントの最大の目的だ」

 マイクロソフトの樋口泰行社長は11月25日、同社が開催したクラウド関連イベント「The Microsoft Confernce+Expo Tokyo」の基調講演で、5000人を超える来場者を前に開口一番こう語った。

 場所は東京・芝公園のザ・プリンス パークタワー東京 コンベンションホール。「この種のプライベートイベントでは、業界でも最大級の規模で開催することができた。参集いただいた皆様への感謝の気持ちでいっぱいだ」とも語り、集まったユーザー企業やパートナー企業の来場者に謝意を述べた。

 基調講演に立つマイクロソフトの樋口泰行社長 基調講演に立つマイクロソフトの樋口泰行社長

 翌26日と合わせて2日間開催された同イベントの初日午前10時30分から行われた樋口社長の基調講演では、同日発表された最新のクラウドサービスをはじめ、ユーザー企業やパートナー企業も登壇して、マイクロソフトのクラウド事業の広がりを示してみせた。

 印象強かったのは、その広がりもさることながら、クラウドサービスで競合する企業への対抗意識を前面に押し出していたことである。

 まずは場所と規模。実は1カ月半ほど前の10月上旬に、セールスフォース・ドットコム(以下、セールスフォース)が同じ場所で4000人を超える来場者を集め、プライベートイベント「Cloudforce 2010 Japan」を2日間にわたって開催した。

 同イベントには米Salesforce.comのマーク・ベニオフCEOが来日し、「効率的ではないもの、ソフトウェアを民主化しないもの、コストが高いものは、クラウドではない」などと怪気炎を上げていた。また、ユーザー企業やパートナー企業も登壇し、同社のクラウドサービスに対して支持や協業を進めるメッセージを発信していた。

 今回のマイクロソフトのイベントは、このセールスフォースのイベントを意識したものであることは明らかだ。ワールドワイドで見ると、マイクロソフトにとってセールスフォースは40分の1ほどの売り上げ規模に過ぎず、クラウド事業で競合する範囲もSaaS(サービスとしてのソフトウェア)およびPaaS(サービスとしてのプラットフォーム)に限られる。

 それでもマイクロソフトが注視しているのは、クラウドサービスの主戦場になりうるSaaSおよびPaaSでセールスフォースが先行して急成長を遂げ、今やクラウドサービス事業者を代表する1社にのし上がってきたからだ。

 マイクロソフトはそうしたセールスフォースの勢いを抑え込む気概を見せるためにも、同種のイベントで前月のセールスフォースが実施した規模を上回ることを大命題にしたと推察される。

クラウドに対する理念が読み取れる両社のロゴ

 こうしたイメージ戦略とともに、マイクロソフトは今回のイベントで、セールスフォースの主力サービスである「Salesforce CRM」に対抗して、「Microsoft Dynamics CRM Online 日本語版」(以下、Dynamics CRM Online)を2011年1月に市場投入すると発表した。

 Dynamics CRM Onlineは、オンプレミス(自社設置)版も用意される「Microsoft Dynamics CRM 2011 日本語版」のオンライン版で、オンプレミス版より早く提供されるサービスとなる。樋口社長は、「製品としてオンライン版を先に市場投入するのは、マイクロソフトとして初めてのこと。マイクロソフトがいかにクラウドに真剣に取り組んでいるかを分かっていただけると思う」という。

 さらにDynamics CRM Onlineのデモでは、最大の売りであるMicrosoft Officeとのシームレスなデータ連携に加え、Salesforce CRMからもデータの移行が可能なことを示してみせ、一層の生産性向上が図れることを強調していた。

 こうした対抗サービスの一方で、樋口社長が講演の中で最も強調していたのは、「マイクロソフトが提供するサービスは、パブリッククラウド向けだけでなく、顧客企業のプライベートクラウド向け、パートナー企業が構築するパートナークラウド向けなど、さまざまな形の選択肢がある」ことだ。

 それらのパートナー企業として、「国産ITベンダー4強」といわれる富士通、NEC、日立製作所、NTTデータのサービス事業責任者が相次いで登壇し、自社のクラウドサービスの取り組みやマイクロソフトとの協業ぶりについて語った場面もあり、あらためてマイクロソフトの存在の大きさを感じさせられた。

 ただ、やはり今回のマイクロソフトのイベントは、セールスフォースへの対抗意識が最も強かったのではないかと感じたものがあった。ちなみに、マイクロソフトはこのイベントを機に同社のクラウド事業を象徴する新たなロゴをつくった。

 そのロゴは、歯車のようなマークが重なり合って雲を形づくっている。樋口社長によると、歯車が重なり合って発動機のごとくクラウドとして大きな力を生み出していくイメージなのだそうだ。

 このロゴが印刷された紙袋を持ち帰って、前月に持ち帰ったセールスフォースのロゴが印刷された紙袋と見比べてみた。サイズがほぼ同じなこともあって、並べてみると、それぞれのクラウドに対する理念が一目瞭然のように思えた。せっかくなので写真を掲載しておく。少なくともマイクロソフトの対抗意識は、感じ取っていただけるだろう。

クラウドロゴが印刷された両社の紙袋 クラウドロゴが印刷された両社の紙袋

プロフィール 松岡功(まつおか・いさお)

松岡功

ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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