ドラッカーの言葉に学ぶ会議マネジメント【中編】ITコンサルの四方山談義

前回に引き続き、結果を出せる会議の進め方を考えましょう。

» 2010年12月24日 08時00分 公開
[辻井康孝(ザイ・コーポレーション),ITmedia]

 皆さんこんにちは、IT・情報戦略コンサルタントの辻井康孝です。

 前回に続いて、企業で行なわれる会議を、有意義で建設的なモノにするための大切なポイントについて、考えてみましょう。

“今、何について話し合っているのか”から外れてはならない→議長の手腕

 物ごとがなかなか決まらなかったり、議論が迷走したりする会議の特徴は「脱線」の多さです。前回に指摘した「議題の明確化」も、それを防ぐためのモノですが、それに沿って議事を進めていても、議論が脱線してしまう危険は、常にあります。

 よくあるのが、何らかのテーマについて話し合っている時に、話が枝葉末節の部分に深く入り込み、核となる部分がまだ決まっていないのに、細かい議論ばかりになってしまうケースです。結局、大切なことが何も決まらないまま、会議が終わってしまいます。

 大切なのは、「幹」と「枝葉」をしっかり区別することです。物ごとを決めるには、まず幹、つまり全体の構造を作り、しっかり合意形成した上で、枝葉の部分を話し合って肉付けしていく、という作業が必要です。いわゆる「フレームワーク思考」ですね。これは会議の運営に限らず、あらゆる業務を建設的に進めるのに役立つ考え方です。

 また、枝葉末節の部分に話が進んでいくのでなく、気がついたら今話し合うべきこととは違う内容に、話題が脱線してしまう会議もあります。こうなるともう、当初予定していたことは何も決まりません。その場合は議長が、冷静かつ客観的に会議を采配し、参加者全員に「今、何について話し合っているのか?」をもう一度再認識させ、議論を軌道修正することが大切です。

 この場合、会議の成否は議長の手腕にかかっています。ですが企業での会議には、さまざまな役職の人が参加します。ですから現実には「自分が議長を務めている会議で、上司がどんどん話題をそらしてしまう」といった事態も発生します。ですから基本的には、会議メンバーの中で一番役職が高い人が、議長を務めるのがベストだと思います。

 見方を変えると、もし議長でなかったとしても、会議に参加する高位役職者は、議論が脱線しないように全体を見て、合理的かつ客観的に会議を導く責務があります。自らが議題とズレた話を続けるようなことは、論外です。

 繰り返しますが、議長には冷静さと客観性、そして話の筋道を常に見失わない合理性が求められます。有意義で建設的な会議になるかどうかは、議長の手腕によるところが、非常に大きいのです。

ドラッカーの言葉

  • リーダーとは、目標を定め、優先順位を決め、基準を決め、それを維持する者。時には妥協も必要
  • 指揮者は、1人の人間を受け入れるために、楽譜を書き直したりはしない
  • 自らがコントロールし、自らが取り除ける時間浪費の原因を排除することである。人は、他人の時間まで浪費していることがある

発言したからといって、何かを言ったことにはならない→会議は自己アピールの場ではない

 企業における会議には、常にある種の緊張感が伴います。特に有能な人々とディスカッションする際は、まず自分がその議論のレベルについて行くことが求められますし、そこでの適切な発言も要求されます。

 ですが、「何か言わなければ……」という気持ちから、議論を停滞させる、あるいはその議論の進展に何も貢献しない発言をしてしまうのは問題です。

 会議というのは不思議なもので、発言すれば「何かを語った」ような錯覚を、人にもたらします。これは時間のムダであり、優秀な人であればあるほど、こういう発言を聞くと、やるせない気持ちになるものです。

 また、自己顕示欲の強い人が会議に参加している場合も、起こりやすいケースです。議論の進展には寄与しない話題なのに、自分の知見や、自分の功績を開陳し続けてはいけません。会議は、自己アピールの場ではなく、議論の進展とプロジェクトの発展に、貢献することだけが求められます。

ドラッカーの言葉

  • 知識に上下はない。状況への関連の有無しかない
  • 第一に身につけるべき習慣は、なされるべきことを考えることである。何をしたいかではないことに留意してほしい

 今回は少々、手厳しい文章が長くなってしまいました。続きの話題は、次回の【後編】に持ち越したいと思います。


当記事はブログ「ITコンサルの四方山談義」から一部編集の上、転載したものです。エントリーはこちら

筆者:辻井康孝

IT・情報戦略コンサルタント、ザイ・コーポレーション代表取締役。音楽業界、広告業界を経て2000年より現職。マルチメディア草創期よりITビジネスに携わり、上場企業を始めとする多くの企業で顧問・監査役等を歴任。情報戦略立案、Webマーケティングなど、主に企業経営者向けにコンサルティングを実施。


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