電子書籍はテレビになれるのか――望まれるメーカー横断の取り組みオルタナブログ通信(3/4 ページ)

» 2010年12月27日 12時00分 公開
[森川拓男,ITmedia]

電子書籍普及のカギは消費者の利便性

 「どんな本でも読める」のが本来の姿です。そのためには、様々な点で標準化が必要です。

 まだまだ発展途上の電子書籍の課題:永井孝尚のMM21


 もうすぐ「電子書籍元年」が終わるが、その割りには電子書籍が定着したようには見えない。ハード面など確かにこれからのところが多いが、それよりも重大な問題点を指摘してくれたのが、永井孝尚氏「永井孝尚のMM21」のまだまだ発展途上の電子書籍の課題だ。

 永井孝尚氏は「ソニー製のテレビと、パナソニック製のテレビで、見ることが出来る番組が異なるということはありません。また、サムソン製のケータイと、シャープ製のケータイで、電話できる相手が制限されるということもありません」と指摘した上で、「しかし、現在の電子書籍はそうなっていない」ことが日本経済新聞の社説で取り上げられていることを紹介。そこで指摘されたことを踏まえると、「ソニー製のテレビと、パナソニック製のテレビで、見ることが出来る番組が異なる」ということになる。これではとても、使えるものではない。例えメーカーが違っても見られないと、使い物にならないだろう。

 しかし、現在の電子書籍には数多くのフォーマットが存在し、各端末ごとに異なるため、気軽に手を出せない。そこで、永井氏が指摘するように「様々な点で標準化が必要」になるのだ。「利便性と、寡占化リスクのバランスをいかに取るか」に注目して、今後の電子書籍を見ていきたい。

日本の優れたコンテンツを生かすためには?

 アニメや映画など、日本には優れたコンテンツがたくさんあるのに、コンテンツ有料配信ビジネスの分野では米国の足元にも及ばない。この現状がちょっと残念だ。

 ネットフリックスはビデオ有料配信サービス界のiTunesになれるのか:メインストリートの動画配信事業者


 電子書籍同様に浸透したのかどうか微妙なのが、動画コンテンツの有料配信ビジネスだ。現在、多数のサービスが存在しているが、なかなか利用しようという気にならない。その理由の一端が、伊藤靖氏「メインストリートの動画配信事業者」のネットフリックスはビデオ有料配信サービス界のiTunesになれるのかから見えてきた。

 伊藤氏は、ネットフリックスを例に挙げて、コンテンツ有料配信ビジネス成功の秘訣を探っている。それと同時に、これが日本で活かされていない点も指摘。「例えば、12月1日に日本テレビが始めた『日テレオンデマンド』。料金は1本315円で7日間しか視聴できない。視聴できるデバイスも、今のところPCと携帯のみのようだ。」――そのほか、各放送局などが提供するオンデマンドサービスも似たり寄ったりだ。そして、それぞれのサービスで見られる動画は異なるため、複数見たければそれだけ登録しなければならず……伊藤氏の言うように「アニメや映画など、日本には優れたコンテンツがたくさんあるのに、コンテンツ有料配信ビジネスの分野では米国の足元にも及ばない」という現状は非常に残念だ。2011年こそは、どこかが打開してほしいものだと思う。

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