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» 2010年12月27日 08時00分 UPDATE

Weekly Memo:最新調査にみる中小企業のIT利用実態

リクルートがこのほど発表した「中小企業のIT導入状況」に関する調査結果を基に、中小企業のIT利用における実態と今後の行方を探ってみたい。

[松岡功,ITmedia]

過半数の企業が現状の社内システムに不満

 政府が先頃発表した12月の月例経済報告によると、「景気はこのところ足踏み状態となっている」という。2008年秋のリーマンショックで落ち込んだ景気は、いったん回復局面に入ったものの、10月から3カ月連続で「足踏み」が続いている。

 企業の業況判断についても「慎重さがみられる」とし、前月の「改善している」から下方修正した。とりわけ中小企業では、先行きに慎重な見方がまだまだ根強いようだ。

 そうした中で、中小企業のIT利用はどのような状況になっているのか。リクルートがこのほど発表した「中小企業のIT導入状況」に関する調査結果を基に、その実態と今後の行方を探ってみたい。なお、調査は同社が運営するIT製品情報サイト「キーマンズネット」を利用する中小企業のIT担当者を対象に、10月26日から11月2日にかけて行われ、312の有効回答を得たという。

 まず、「社内での情報システム部門の有無」については、「有り」が56.3%、「無し、個人担当者が兼務」が23.3%、「無し、別部門が兼務」が13.6%となった。従業員規模別にみると、101〜1000人以下の企業では「有り」が73.2%、100人以下の企業では39.7%だった。従業員規模が少なくなるにつれて情報システム部門を持つ企業が減少するのは当然だが、100人以下の企業でもほぼ4割の割合になっているのは、調査対象企業の意識の高さをうかがわせるものといえそうだ。

 次に、「今年度、新たにIT製品・サービスの導入やシステム構築にかけた予算はいくらか」については、「50万円未満」29.8%、「100万〜300万円未満」19.7%、「1000万円以上」17.0%となった。従業員規模別にみると、101〜1000人以下の企業では「1000万円以上」24.7%、「100万〜300万円未満」20.0%、「50万円未満」16.0%となった。これが100人以下の企業になると、「50万円未満」43.2%、「100万〜300万円未満」19.4%、「50万〜100万円未満」17.4%と順番が入れ替わった。

 従業員の増加とともに予算が増えていくのは当然ながら、従業員が増えれば業務の効率化や生産性の向上など、新たに取り組むべき課題も多く発生するので、その分さらにIT投資コストが膨らんでいくようだ。

 続いて、「現在利用しているIT製品や社内システムに対して満足しているかどうか」については、「満足している」が全体の10.6%にとどまり、「悪くない、特に問題はない状況である」が34.7%、「やや不便さを感じる」が32.5%、「現状に課題感を持っている」が22.2%となった。つまり、現状に大体満足している割合が45.3%、現状に不満や課題感を持つ割合が54.7%となり、現状に何らかの不満を持つ割合のほうが上回った。

今後のIT投資は積極派と慎重派がほぼ半々

 次に、「直近で導入・構築したIT製品・サービスやシステム」については、「パソコン」68.1%、「プリンタ、スキャナや複合機など」26.2%、「セキュリティ関連のソフトやサービス」19.6%となった。そして4番目に「携帯電話・PHS・スマートフォン」が18.3%で続いており、中小企業の間でもモバイル端末の業務活用が広がり始めていることをうかがわせた。

 「IT製品・サービスやシステムの導入・構築によって解決したかった課題」については、「業務の合理化・効率化」83.6%、「運用コストの削減」63.0%、「生産効率の向上」38.7%と続き、社内での課題を解決するためのソリューションとしてITを活用しているケースが多いことが分かった。一方で、「顧客サービス・顧客満足度の向上」や「営業力の強化」といった、社外に対して効率や関係性を上げていく施策の優先順位は低い傾向にあるようだ。

 続いて、「IT製品・サービスの導入やシステム構築を行う際の委託先・購入先(メーカーやシステムインテグレーターなど)の選定において重視することは何か」については、「自社業務との適合性」60.8%、「保守・サポートの料金」58.2%、「製品・サービスの販売価格」50.7%、「保守体制」46.7%、「営業担当やSEの提案力」27.8%と続いた。

 自社業務との適合性や導入・運用時にかかるコストと並んで、導入後にシステムの不具合が起こったときの保守体制などについても、24時間365日稼働を続けているITシステムが増えている今、同じように重視されていることが明確になった。

 一方、「IT製品・サービスの導入やシステム構築にあたり、それらを評価する際に何を重要視するか」については、「導入・運用コスト」86.0%、「システムの安定性」63.8%、「基本・付加機能」36.2%、「導入・運用にかかる負荷・手間」32.6%、「導入前後のサポート体制」28.0%と続いた。ITシステムの機能評価よりも、IT導入や運用で発生するコスト評価に対する関心のほうが高いことが分かった。

 次に、「今後、IT製品・サービスの導入やシステム構築に取り組む予定の有無」についは、「今後取り組む予定がある」が49.2%、「まだ分からない」が45.0%、「今後取り組む予定がない」が 5.8%となった。IT導入に取り組む予定がある企業が過半数近くを占めたが、今後の景気が不透明な中、IT投資の必要性を感じながらも実際に投資するかどうかは、現段階で未定(分からない)とする企業も多く存在していた。

 「今後取り組む予定がある」と回答した企業に対し、「今後、導入・構築を予定しているIT製品・サービスやシステムはどれか」を聞いてみると、「パソコン」60.8%、「グループウェア・ナレッジマネジメントなど情報共有ツール」41.9%、「経理や営業管理など業務管理ソフト」35.1%、「セキュリティ関連のソフトやサービス」29.7%、「プリンタ・スキャナや複合機など」25.7%、「無線LANなどネットワーク」24.3%となった。

 パソコンやグループウェアなどの情報共有ツールは、企業継続上、必要不可欠なツールなので整備する企業は企業規模問わず多いようだ。また100人以下の企業では、まだ社内のネットワークインフラが十分に整備されていないためか、「無線LANなどネットワーク」が32.4%と比較的高かった。

 101〜1000人以下の企業の場合には、「経理や営業管理など業務管理ソフト」の比率が高い。この規模の企業になると、ネットワークやセキュリティへの最低限のIT整備が一通り完了しており、ITインフラをさらに有効活用して、経理情報の管理や営業管理など、より業務の効率化を進めるためのIT投資に目を向け始めている傾向にあるようだ。

 最後に、「今後取り組む予定がない」「まだ分からない」と回答した企業に、「IT製品・サービスの導入やシステム構築を行わない理由は何か」を聞いてみると、「費用対効果が算定しづらく、正しい判断ができないため」が44.2%、「現状の環境で十分満たされているため」が27.3%、「自社の予算に合ったIT製品・サービスが見つからないため」が26.6%と続いた。

 また、100人以下の企業では、自社予算に合った製品・サービスを見つけられない割合が高くなっていた。これは従業員規模が小さいほど、予算の枠も小さくなる傾向にあるからだと推測できる。一方、従業員規模が大きいほど「自社要件を満たしたIT製品・サービス」を見つけられない割合が高かった。これは従業員数が多くなるにつれてシステム要件が複雑になるので、すべてのニーズを満たす製品を見つけることが難しくなるからだと推測できる。

 以上が調査結果の内容だが、中でも今後のIT投資について積極派と慎重派がほぼ半々だったところに、中小企業の苦悩ぶりが滲み出ているといえそうだ。

プロフィール 松岡功(まつおか・いさお)

松岡功

ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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