社運を賭けた広告配信システムの開発――品質管理の徹底が鍵に(1/2 ページ)

モバイル広告サービスのD2Cは2010年秋に広告配信システムを構築した。このシステムには新たなビジネスモデルを担う役割と高度なサービスレベルが要求されたという。

» 2011年01月19日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]
キーワードマッチングによる検索連動型広告のイメージ

 モバイル広告サービスのディーツー コミュニケーションズ(D2C)は2010年10月、NTTドコモの「iMenu サーチ β版」に対応する検索連動型広告配信システムの運用を開始した。新システムには新しいビジネスモデルを担う重責と同時に、通信サービスの一翼を担うシステムとしての高度な信頼性が要求された。開発における取り組みをD2Cとプロジェクトを支援したウルシステムズに聞いた。

 新システムは、iモードサービスの1つである「iMenu」でのキーワード検索に連動した広告を配信するシステム。ユーザーがiMenu サーチで入力した検索キーワードに関連する広告を、結果ページなどに表示する仕組みである。配信のほかにも、キーワードと広告のマッチング処理、広告データや予算の管理、広告主への結果の提供、広告内容の審査といった機能を備える。D2Cにとっては基幹システムの1つであると同時に、iモードサービスを構成する重要なシステムとなる。

 モバイル広告には、主にWeb画面上に広告画像を掲載するものと検索連動型広告があり、さらに検索連動型広告には、カテゴリーマッチング方式とキーワードマッチング方式がある。従来、D2Cではカテゴリーマッチング方式による検索連動型広告を販売していた。新システムは、「TAFS」(Total Ad Federated System=統合型広告配信システム)とも呼ばれ、キーワードマッチング方式にも対応する。

モバイル広告の新モデル

 D2Cによると、検索連動型広告は年率30%以上の成長が見込まれている。世界的には、携帯電話事業者と提携する検索連動型広告のパートナー企業は1社のみである場合が多く、D2CはNTTドコモの広告パートナーに当たる。以前の仕組みではD2Cが販売を手掛けた広告しか配信できず、カテゴリーによっては空き枠が生じるという課題があった。新システムは、D2C以外の広告ネットワークを連携できる仕組みであり、配信先に空き枠があればD2C以外の広告会社が配信する広告も表示できる。

 事業開発本部 ITアーキテクト担当 上席エキスパートの和賀勝彦氏は、「従来の仕組みではユーザーと広告主の接点において機会損失が生じていた。新システムでこの接点を確保することにより、ユーザーにも広告主にも付加価値を提供できる」と話す。

 キーワードマッチング方式の導入によって、D2Cでは1000万種類以上のキーワードを広告として販売できるようになった。よりきめ細やかなユーザーの要望に対応した広告を配信でき、広告の訴求力の向上や商品購入(コンバージョン)の増加が期待されるという。D2C以外の広告会社や広告主は5443万人のiモードユーザー(2010年7月現在)に広告を展開でき、D2Cにとっても収益機会の拡大につながるメリットがある。

 新システムの名称は「孔雀」という。「毒蛇を食べて人民を守るという孔雀の神話にあやかったもので、公序良俗に反した広告を排除し、ユーザーが安心できるモバイル広告を新システムで実現していきたい」(和賀氏)

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