勝ち残れ! 中堅・中小企業

ワインの好みもDB管理?――名門ゴルフ場のIT活用に至高のホスピタリティを見た江口ともみのIT活用ビフォーアフター(1/2 ページ)

情報システムを活用し、ビジネスの成長に挑む中堅・中小企業――その実態に、タレントの江口ともみさんが迫る。今回訪問した企業は名門ゴルフ場「東急セブンハンドレッドクラブ」だ。

» 2011年02月03日 09時00分 公開
[聞き手:江口ともみ、構成:編集部,ITmedia]

 千葉市緑区の豊かな自然に囲まれた東急セブンハンドレッドクラブは、法人会員によって支えられている、いわゆる「名門コース」である。東急グループのゴルフ場としては、神奈川県茅ヶ崎市にあるスリーハンドレッドクラブ、そして静岡県裾野市のファイブハンドレッドクラブに次ぐ歴史を有し、日本女子プロゴルフ協会の公認トーナメント「富士通レディース」の開催地としても知られている。

 それだけに同クラブでは、会員である法人ユーザーがゴルフ場を利用するに当たり、細心のホスピタリティをもってサービスを提供しているようだ。その背景にはITの活用もあるといい、自身も熱心なアマチュアゴルファーだというタレントの江口ともみさんが、名門コース運営の舞台裏に迫った――。

会員の“わがまま”をかなえるため嗜好(しこう)をDB化

東急セブンハンドレッドクラブの遠藤庫夫 副総支配人。レストラン部門出身で、顧客の食事や飲み物の嗜好を理解することにこだわりを持つという

江口 石川遼君など、若いプロゴルファーの人気も増している中、ゴルフ場経営を取り巻く状況をどのように捉えていますか?

遠藤 やはり価格破壊は進みました。その分、1人当たりのプレー回数は増えていますが、ゴルフ人口が増えたという実感は少ないですね。初心者のゴルファーに、経験のあるゴルファーがマナーを教えるというのも、ゴルフを通じたコミュニケーションの魅力だと思いますが、若い人にもそういった良さを感じてもらいたいところです。

江口 わたし自身、20年ほどゴルフを続けていますが、こちらのクラブハウスやグリーンは素晴らしいと感じます。副総支配人が、他のゴルフ場と比べても東急セブンハンドレッドクラブの強みだと考えているのは、どういった点でしょう?

遠藤 快適にプレーしていただくことを心がける。このことに尽きます。例えば当ゴルフ場は36ホールを備えていますが、1日のラウンドは72組までに制限しています。

江口 まあ素敵(笑)。

ゴルフが趣味の江口ともみさん。およそ20年のキャリアを持つという ※装飾品協力:LANVIN COLLECTION(栄光時計

遠藤 他のゴルフ場では、18ホール当たり50組を回すところもありますが、それではせわしない。スルーで回るメンバーのためにも組み数は増やさず、ゆったりとしたプレー環境を提供しています。ですから「(東急セブンハンドレッドクラブは)接待に使いやすい」と評価されることが多いですね。

江口 最近は、午後の開始時間さえ、約束してもらえないゴルフ場もある中で、魅力的なことだと思います。特にゴルフは、メンタル面の影響が大きいスポーツですから、待つことでイライラはしたくないですものね。その他にも、メンバーに喜んでもらうためにどのようなことを?

遠藤 無理にキャパシティを増やすことはしないが、リピートはしてもらいたい。だからわれわれは、とてもメンバーを大事にしています。そのためにはITを使う。予約はもちろんですが、プレー中も、レストランでも、情報を活用しているのです。

IT活用ポイント

東急セブンハンドレッドクラブでは富士テレコムの「クラブメイト」を使って、予約からフロント精算までをシステム化している。全国にある約2400のゴルフ場中、500弱のゴルフ場が導入しているというトップシェア製品(富士テレコム調べ)である。28年の歴史を持ち、多くの顧客の声をノウハウとして盛り込んでいるという。

現在では富士通の中堅中小向けサーバ「PRIMERGY TX150」上で稼働している。PRIMERGYを選んだ決め手を遠藤氏は、安定性はもちろん、ハードウェア/ソフトウェアを含めた365日のサポートだとする(サポートのサテライトが千葉市にある)。


江口 システム化する前は、紙などを使った手作業だったかと思いますが、どのようにITを活用しているのですか?

遠藤 これまで蓄積してきた会員情報を、データベース化しています。具体的には“この方は食事の際にタバコを吸われるから、テーブルに灰皿を置こう”といった細かな情報まで管理しています。ラウンド時にも、せっかちな方、ゆったりとした方、色々いますから、そういった情報は事前にキャディーが把握できるようになっています。

 フロント業務にかかわることはフロントで、キャディーが必要とする情報はキャディーのセクションで、それぞれ会員情報を確認できます。リピートしてもらうには、顧客の嗜好を把握するべきですから。レストランでまずはビールを飲んだあと、「次はいつものワインでよろしいですか?」とやったら、主催者の面目も立つでしょう。

IT活用ポイント

POP-UPPER for CLUB MATEというシステムでCTIを実現している。フロントが電話を取るとPC上で情報がポップアップし、来客履歴を見ながら対応できる。


江口 確かに、それはうれしいですね(笑)。ところで運営する立場として、システム化で楽になった、あるいは効率化されたと感じる点はありますか?

遠藤 残念ながら、どうしても人の出入りがありますから、すべての現場スタッフが10年選手というわけにはいきません。それでもわれわれは、最高のサービスを目指したいわけです。

 従来は、経験のあるスタッフが辞めてしまうと、そのノウハウを完全に引き継ぐことが難しかった。でも今では、新しいスタッフのスキルを底上げするのに、データベース化された顧客情報が大変役に立っています。わたしたちが提供するのは、機械で動かすサービスではありません。人間がサービスをしながら、同時にその質を高いレベルで平準化しなければならないのです。

IT活用ポイント

必要な顧客情報はキャディーまで含め、すべてのスタッフが活用する。グリーンまでのアプローチ距離から、プレーヤーごとに最適な番手を、すぐに手渡せるよう事前に準備するという。


江口 なるほど、ノウハウがデータ化されていれば、新しいスタッフも仕事を覚えやすいから、スムーズに現場に入れますね。それ以外にも、ITを活用してみたいな、と考えている点はありますか?

遠藤 メンバー向けのクローズなWebサイトを作って、そこからゴルフ場の情報を発信していきたいとは考えていますが……当ゴルフ場のメンバーは社会的立場が高く、自分でWebサイトを見る、ということをあまりしないようです。

江口 言われてみれば確かに(笑)。Twitterで情報を発信することも、誹ぼう中傷の可能性だってありますし、難しい面がありそうですね。

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