アイシロンのスケールアウトNASはRAIDを超えるRAIDの限界を“シングルファイルシステム”で解消

エンタープライズ市場でストレージといえば、暗黙のうちにRAIDが想定される。しかし、実は10年ほど前から新しいアーキテクチャとしてスケールアウトNASが利用可能になってきている。スケールアウトNASは、大規模な“シングルファイルシステム”を実現することで従来のRAIDストレージで不可避とされていた運用管理負荷をなくし、次元の異なる使い勝手を実現できるのだ。

» 2011年02月08日 10時00分 公開
[ITmedia]
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RAIDの限界とは

 RAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)は、1988年に提唱されたアイデアで、現在でも依然として有効な優れたアイデアであることは間違いないが、課題がないわけではない。

 ディスクドライブの故障によるデータ喪失にどう対処するかという問題に対して、ドライブ側に高度な保護機能を盛り込むのではなく、安価なドライブで冗長構成を採ることでコストとデータ保護のバランスを最適化するというのがRAIDの発想だ。

 とはいえ、エンタープライズコンピューティングの領域ではデータ量の増大ペースが急速であり、IT予算全体に占めるストレージコストという観点から見れば年々高価になってきているという現実もある。さらに、ドライブ自体の価格はともかく、運用管理負荷の増大に伴うコストの負担も重い。ドライブだけが安価になっても、ストレージシステム全体のTCO(Total Cost of Ownership)が安価に抑えられないのが現状だ。

 また、多くのユーザーが当然のものとして受け入れてしまっていることからあまり問題視されていないが、RAIDには柔軟性に欠けるという課題がある。複数のディスクドライブをセットにした時点で実現できる保護レベル(RAIDレベル)やボリュームとして確保できる容量が決定されてしまい、後からの変更は基本的に作り直しが必要になる。つまり、事前の見積もりがどれだけ正確に行なえるかがポイントなのだ。事前の予測通りデータの増加ペースが推移している場合は問題ないが、予測通りでない場合には管理負荷が爆発的に増大してしまう。従来、こうした問題はストレージ管理者の“腕”の問題として片付けられてしまう傾向があったが、実のところRAIDという20年以上前に生まれたアーキテクチャの限界なのである。

スケールアウトNASによる解決

 RAIDでは、ドライブコストと信頼性のバランスの最適化という課題には見事な解決を示したが、データ量の爆発的な増大が続く現在では、問題はむしろ運用管理負荷の部分にある。RAIDが本来想定していなかったこの新しい問題に対しては、新しいアーキテクチャによる解決が必要だ。これが、スケールアウトNAS(Network Attached Storage)というアーキテクチャが生まれた背景である。

スケールアウトNASのアーキテクチャ スケールアウトNASのアーキテクチャ

 現在では、サーバの仮想化も普及してきている。仮想化環境では物理的な構成を隠ぺいし、抽象化したアクセスの実現が求められることから、ストレージではNASの重要性がますます高まっている。しかし、これまでのNASは、ネットワークプロトコルを処理するプロセッサ部分(NASヘッド)の配下にRAIDストレージ(ディスクシェルフ)を接続したアプライアンス型の構成となっており、RAIDの制約から逃れられない。

 さらに、シェルフに搭載するドライブ数を増やすことでディスク容量の拡張は可能だが、NASヘッドのパフォーマンスを増強するのは困難なので、容量を増やすとパフォーマンスは相対的に劣化していくという課題もある。パフォーマンスの劣化を避けるために複数のNASを並列で利用すると、今度は各NASがそれぞれ独立したファイルシステムを構成することから、マウントポイントが乱立して管理対象が増大し、バックアップやユーザー管理などの運用負荷が増えてしまう結果になる。

 一方、スケールアウトNASは、従来型のNASに比べて運用管理の対象を抽象化し、複数の物理ディスク装置(ノード)をまとめ仮想的な単一ファイルシステムを構成できる点が最大の特長である。ファイルシステムが単一ということは、管理対象となるマウントポイントも1つなので最小限の管理対象で済む。各ノードは従来型NASと同様にヘッドに相当する機能とシェルフに相当する部分との組み合わせで構成されるが、容量を増やすためにユニットを追加するとヘッド相当部分も増強されることになるため、パフォーマンスの劣化がない。

 従来型NASでは、容量の増加はパフォーマンスの劣化や運用管理負荷の増大といったトレードオフを伴っていた。しかし、スケールアウトNASでは、シングルファイルシステムを実現することでこうした問題を回避し、容量を増加させると自動的に処理能力も応分に増加し、かつ管理負荷は増えないという理想的な解決策となっている。

 アイシロンのスケールアウトNASでは、最大144ノードで10ペタバイトの単一ファイルシステムを構成できる。従来型のRAIDやNASでは、実現可能な最大ボリュームサイズは16テラバイトから100テラバイト程度というのが標準的なので、100倍以上の容量差がある。しかも、データ処理を担うプロセッサやメモリが各ノードに分散していることから、容量拡張に伴って処理性能も同時に向上していく。

 データスループットは45ギガバイト/秒で毎秒170万I/Oを実行可能だ。複数ノードの組み合わせを前提としていることから、データ保護に関してもノード単位のストライピングが併用されている。従来型のRAIDの制約にとらわれないため、データ保護レベルはRAID6相当のN+2に加え、最高でN+4(最大4ノードの同時故障にも対応)を提供できる。

 ファイルシステムが単一であることは、分断されたボリュームごとに空き領域を残しておく必要がないことも意味するため、容量効率が向上するという経済性も特長だ。

仮想環境での活用

 スケールアウトNASのメリットは、すでにユーザー環境で豊富な実績を積み上げている。図研ネットウエイブは、アイシロンとVMwareの双方に豊富な経験を有しており、サーバ仮想化環境におけるストレージシステムとしてアイシロンのスケールアウトNASを活用し、シングルファイルシステムのメリットを十分に引き出している。

 サーバ仮想化では、仮想サーバは物理サーバの制約から自由になり、仮想サーバの負荷やメンテナンスなど、運用状況に応じて物理サーバ間を自在に移動できる。このとき、仮想サーバが別の物理サーバに移動した場合でも従来と同じストレージを利用できるのが大前提となるが、自動的に実現できるというものではなく、技術的に高度な設計が必要だ。

 従来型NASでストレージ環境を構築した場合、仮想サーバはどの物理マシンからでも常に同一のNASヘッドにアクセスすることになるため、特定のNASヘッドに負荷が集中してしまうなどIOのばらつきが避けられない。一方、スケールアウトNASでは、論理的にはNASヘッドが各ノードに分散している形になるので、IOの平準化について管理者が頭を悩ませる必要はなくなる。また、多数のノードからなるシングルファイルシステムが提供されるため、仮想サーバがどの物理サーバに移動したとしても、アクセスすべきファイルシステムは常に1つだけなので、設定の負担も激減する。

 仮想化環境では、サーバイメージのライフサイクル管理も重要になってくる。物理環境とは異なり、仮想サーバはファイルで管理されるため、アプリケーション開発においては開発環境から本番環境に移行しても、万一に備えて以前のイメージも保存される傾向にある。ただし、本番環境と開発が終了した環境の仮想サーバでは保護レベルを変える方が合理的だ。RAIDだと保護レベルの変更は難しいが、スケールアウトNASではファイル単位/ディレクトリ単位で柔軟に保護レベルを変更できる。さらにサービスを止めずにオンラインで保護レベルを変更することも可能だ。仮想化環境は、スケールアウトNASとの親和性がきわめて高い用途だといえよう。

SSDの活用

 最近、フラッシュメモリを活用した半導体ストレージ(SSD)が急速に普及してきた。価格的にはまだ磁気ディスクに比べて高額だが、物理的可動部をなくしたことで高速、かつ省電力な記録メディアとして注目されている。テクマトリックスでは、アイシロンが用意するSSD搭載モデルを活用したシステム構築に豊富な経験があり、SSDの特性を生かしたストレージ提案を行なっている。日本最大級の住宅・不動産情報のポータルサイト「HOME'S」を運営するネクストでは、増え続けるコンテンツを高速に処理するためにアイシロンのSSD搭載モデルを採用している。

 アイシロンでは、SSD搭載モデルとして「IQ 10000x-SSD」や「IQ32000x-SSD」をラインナップしている。通常モデルではSATA(Serial Advanced Technology Attachment)もしくはSAS(Serial Attached SCSI)のHDDが12または36本搭載されるが、SSD搭載モデルではそのうちの1〜2本がSSDに置き換えられる。このSSDはユーザーデータの記録領域としてではなく、メタデータの保存領域としてシステムが利用する。

パートナー企業の強みや特徴を生かしたシステム構成も可能に パートナー企業の強みや特徴を生かしたシステム構成も可能に

 スケールアウトNASでは、複数ノードを仮想的に統合したシングルファイルシステムを実現できる点が運用管理負荷の軽減につながることはすでに紹介した通りだが、巨大なファイルシステムの中から特定のファイルにアクセスするのに多少時間がかかることがある。従来型NASでは、アーキテクチャの制約上不可避的に複数のファイルシステムに分割されてしまう。必要なファイルがどのファイルシステムに格納されているかはユーザーが判断することになるので、ストレージシステム側がファイル検索を実行する負荷は軽くなっている面があるが、これはRAID/従来型NASの抽象度が低く使い勝手に影響していることとの裏返しである。

 実際には、スケールアウトNASでもNASヘッド相当部分が分散しており、並列的にデータの検索が行なわれるため、運用上問題は何もないが、メタデータをSSDに格納することでファイルの検索は格段に高速化される。個々のファイルサイズはさほど大きくはないがファイル数はとにかく膨大にあるといった場合は、メタデータのアクセスを高速にするSSDモデルを活用すれば、シングルファイルシステムのメリットだけを享受できるようになる。

 HDDの単価は低下し続けており、そこだけを見れば「ディスクは安い」ということになるが、記録メディアとしてのディスクの価格だけではなく、運用管理やユーザーの使い勝手といったストレージ環境全体を総合的に見れば、実は従来型のNASや伝統的なRAIDのアーキテクチャでは負荷が増大することがあるのだ。アイシロンが提供するスケールアウトNASはこの制約をなくし、エンタープライズ・ストレージを新次元に導く次世代アーキテクチャなのである。

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提供:アイシロン・システムズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2011年3月7日

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