ビジネスコミュニケーション進化論(前編)大競争時代を勝ち抜くワークスタイル(3/3 ページ)

» 2011年02月08日 07時30分 公開
[米野宏明,日本マイクロソフト]
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グローバル競争時代に不可欠なユニファイドコミュニケーション

 プレゼンス機能を含むIMに、オンライン会議、IP電話、電子メールといったコミュニケーションツールを統合したソリューションをして、「ユニファイドコミュニケーション」(UC)と呼ぶことがあります。言葉の起源は定かではありませんが、近年に至るまでさまざまなベンダーがソフトウェアやサービスの形で提供してきました。ただし、その名の通りに複数のコミュニケーション手段を統合したものであり、ベンダーごとに異なるUCが存在しています。

コミュニケーションの統合イメージ

 UC市場は、これまで堅調に成長を続けてきました。特に近年は、オンライン会議を利用した出張の削減、グリーンITへの対応、IT電話化による管理性の向上と運用コストの削減といった目に見える効果を求めての導入が進んでいます。しかし、UCの最大の価値は、複数のコミュニケーション手段を連携させる点にあります。残念ながらその価値をフルに享受している企業はあまりないようです。その原因は日本の企業や組織に特有の構造にあります。

 日本の組織は、「機能別組織」と呼ばれることがありますが、日本企業では伝統的に営業やサポート、製造、業務といった機能別に部門を組織しています。このような組織は統制が強く、指示命令系統が縦方向になっています。

 組織の戦略に誤りがなく、目標が明確で、従業員が的確に指示に従う状況であれば、この組織は非常に強い力を発揮します。営業は営業同士、製造は製造同士で切磋琢磨し、知識が組織の中に蓄積され、経験として脈々と伝えられます。その代わりに、部門を横断した活動を行うには、一度組織の上層部を経由する必要があります。組織を跨いだ横方向の連携が希薄になり、多様性が失われ、スピードと変化に弱くなります。このような組織では、日常のコミュニケーションが部門内で閉じられがちです。人間の均一性が高く、それほど綿密なコミュニケーションがなくても、意思の疎通や知識の共有ができます。またオフィススペースが狭く、お互いに顔が見える距離ですぐに声を掛け合うこともできます。顔の見えない相手とのコミュニケーション機会がさほど多くはありませんでした。

 しかし今は、グローバル化の動きがあらゆる企業に確実に浸透しつつあります。単に市場がグローバルになるだけでなく、人材も含めたリソースすらグローバル化しています。例えばMicrosoftでは、経理や調達のプロセスをアウトソースしています。実際に私が国内でマーケティング活動に関わる発注を行うと、日本語がある程度話せる中国人スタッフが中国にいながら処理をします。発注に問題があれば、メールなどで連絡が来ます。うまくコミュニケーションができないこともありますが、定型のプロセスなので、決定的に間違うことはまずありません。すぐに軌道修正もできます。

 このように言語に少々の難があろうとも、比較的単純でルーティン化された作業については、それを非常に安価に請け負い、スピーディーに仕事をこなすビジネスが国境を越えた形で提供されるようになりました。その競争は厳しくなっています。われわれはよりスペシャリティーを発揮していかなければ、このような競争の中で生き残ることはできません。グローバルな市場競争の変化に迅速に対応するには、部門を跨いだプロジェクト型組織の運営とリーダーシップも必要です。顔が見えないどころか、バックグラウンドも、組織文化も、場合によっては言語さえ異なる相手とのコミュニケーションが求められるようになるのです。

 新時代のUCは、これまでのような局所的な問題解決ツールとしてではなく、大競争時代のワークスタイルを支えるコミュニケーションの中核となる存在です。そして、その価値に気づき始めた企業が実際に増えているのです。

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