管理効率やIT基盤の柔軟性の向上を目的に、ストレージの仮想化技術に対する関心も急速に高まっている。そもそもストレージは、物理ディスクのファイル空間がファイルシステムによって仮想化された製品だが、仮想化される範囲はRAID、さらにストレージシステム全体にまで広がりつつある。既に述べたシン・プロビジョニングも仮想化技術を応用した機能の1つだ。
ただし、仮想化技術のむやみな採用は運用リスクが高まることもあると鈴木氏は警鐘を鳴らす。
「シン・プロビジョニングによって、ストレージ容量やコストの削減が可能だ。ただし、運用ノウハウが乏しい場合、仮想ボリュームをいくつも作成したことで容量が一気に逼迫(ひっぱく)し、最悪の場合システムがダウンしてしまいかねない」(鈴木氏)
ストレージの容量当たりのコストは年々下落し続けている。そのため、運用経験の乏しい企業には従来からの手法で管理した方が良いとアドバイスすることもあるという。自社に見合った仮想化技術を、適宜、選択利用できる能力を養っておくことが肝要なのだ。
今後もストレージが進化を遂げていくことは間違いない。果たして近い将来、ストレージはどのように変貌を遂げるのか。その目指す姿はストレージやインフラとの連携がさらに進み、あらゆるリソースの一元管理が可能な、いわゆるクラウド型のストレージだと鈴木氏は断言する。
「クラウドの登場によって、ITをサービスとしてとらえることが一般化したことで、今後はサービスの迅速かつ柔軟な提供に対するニーズが高まるはず。その要求に応えるためにも、ストレージやネットワーク、サーバを個別に管理するのではなく、包括的に管理する仕組みの整備が欠かせなくなるはずだ」(鈴木氏)
仮想化技術によるサーバやストレージといったリソースごとの水平統合のみならず、今後は垂直統合も進むというわけである。ただし、そこでのストレージの選択基準も、ベンダーの声に左右されることなく、自社のニーズを踏まえた上で最適なものを採用するアプローチであることに変わりはなさそうだ。
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