日体大が新設した図書館の情報端末――稼働まで2カ月も、コストは5分の1に導入事例(2/2 ページ)

» 2011年02月09日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]
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気になる使い勝手

 日体大では学内の認証システムにLDAPを採用しており、ユーザーごとにIPアドレスを割り当てる運用を行っていた。しかし、MultiSeatの導入では端末ごとにIPアドレスを割り当てる仕組みであったため、導入初期は認証方法の面で苦労があったという。このため電算課では、2010年10月にActive Directoryを導入。LDAPとActive Directoryを同期させ、MultiSeatを利用するユーザーがActive Directoryのドメインに参加させる仕組みにすることで、認証面での課題を克服した。

子機のログイン画面

 世田谷キャンパスに設置されたMultiSeatは、1台の親機に6〜8台の子機を接続する構成となっている。利用する際は、職員や学生が子機に付与されたIDとパスワードを入力すると、上記にある認証を経て親機にローカルのユーザープロファイルが作成される。ログインから子機の画面上にデスクトップが表示されるまでは数分程度だ。ユーザープロファイルは作成から24時間で消去される。

 デスクトップ画面はWindows 7に類似しており、WebブラウザとOfficeアプリケーション、PDF閲覧ソフトなどを利用できる。新入生のオリエンテーションや試験期間などで情報端末の利用が集中する時もあるが、平時は親機1台当たり3〜4人程度であり、負荷によって使い勝手が損なわれることはほとんどないという。

親機の「HP MultiSeat ms6000 Desktop」。利用する学生や職員に、USB機器を利用できないという注意事項やオンラインストレージの利用方法などを掲示している

 取材時に子機でPDFファイルの論文を閲覧していた学生に尋ねたところ、「PCが新しくなってとても便利になった」とのこと。MultiSeatはPCではないが、PCとほぼ同様の使い勝手であり、ユーザーに違いを意識させることはないようだ。別の座席でも学生がYouTubeの動画を閲覧していたが、再生画面がフリーズするような様子は見られなかった。

 だがMultiSeatには幾つかの課題が残されている。その1つが、USBメモリやディスクドライブなどの周辺機器を利用できない点である。例えば、学生が自宅で作成したレポートのファイルをUSBメモリに保存しても、図書館のMultiSeatでは続きの作業ができない。このため電算課では、職員や学生にオンラインストレージのサービスを提供することで解決を図った。ユーザー1人当たり数ギガバイトの容量が割り当てられ、学内の端末や自宅のPCから利用できる。

図書館課の衞藤俊介氏

 また、従来はPCでDVDなどの教材の映像を視聴できたが、MultiSeatではこれができないため、専用の視聴覚スペースを用意した。図書館課の衞藤氏によれば、学生や職員から不満は寄せられておらず、図書館業務にも影響はないという。「全体的に図書館サービスの質が高まり、好評をいただいている」と話している。

 MultiSeatが抱えるもう1つの課題は、「親機の障害復旧をどうするか」(荒井氏)である。現在まで親機に深刻なトラブルは発生していないものの、1台の親機が故障すれば、それに接続するすべての子機が一斉に利用できなくなる。従来のPCに比べて子機の障害対応が容易になり、管理する親機の台数も減少したが、相対的に親機1台当たりの重要性が大いに増した。

 このほかにもソフトウェアの動作検証がまだ十分に進んでおらず、特にカスタムアプリケーションなどをMultiSeatで運用するには慎重な対応が求められる点も課題として残されている。

 荒井氏は、「日本HPやパートナーには、ユーザーがMultiSeatの利点を生かしてより良い運用ができるよう、ノウハウの蓄積と提供に取り組んでいただきたい」と話している。

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