ビジネスコミュニケーション進化論(後編)大競争時代を勝ち抜くワークスタイル(2/3 ページ)

» 2011年02月18日 08時00分 公開
[米野宏明,日本マイクロソフト]

UCがもたらす絶大なビジネス価値

 ここで、前回取り上げたユニファイドコミュニケーション(UC)が威力を発揮します。プレゼンス機能により、まず話しかけようとする相手の状況を即座に把握できるのは既に述べた通りです。さらに、会話内での目的、また、自分や相手の状況に合わせて、会話を途切れさせることなく、最適なコミュニケーション方法に遷移できるという利点があります。

 例えば「取り込み中」となっている相手に急用があったとします。「会議中」ではないので声を掛けられるかもしれませんが、相手は何かの作業に集中している可能性が高いので、まずはテキストチャットで「XXの件ですが、今いいですか?」と問い掛けてみます。もし無視されたら、しばらく様子を見てみましょう。こちらの優先度が高いと相手が判断して返事をしてくれたら、そのままテキストチャットを続けることになるでしょう。もし話が込み入ってきたら、電話に切り替えたくなるかもしれません。この場合、テキストチャットのセッションを中断し、会話画面にある「通話」ボタンを押すだけで、そのIMがそのまま電話になります。相手の電話番号を調べてプッシュボタンを押す必要はありません。

Microsoft Lyncでのコミュニケーション手段のスムーズな切り替え(クリックで拡大)

 この小さなステップの差は、実は大きな効率の差になって現れます。電話番号を調べて、受話器を取り、ダイヤルするという手間は心理的な壁になります。恐らく多くの人がそのままテキストチャットで我慢を続けることになるでしょう。タイピングの手間や、文字情報だけで伝えることによる誤解なども含め、情報伝達の効率性という観点ではテキストチャットは音声に及びません。電話を掛け直すにしても、テキストチャットで我慢するにしても、時間のロスが必ず発生します。IMの同一セッション内でテキストチャットをそのまま音声に切り替えられれば、時間のロスは発生しません。さらにビデオ通話も利用できます。顔が見えるというのは、コミュニケーションを円滑にする上でも、また、コミュニケーションの初期段階では重要な点です。表情から相手の反応をうかがえますし、信頼感も増すでしょう。また、でき上がったばかりのモックアップを写真の代わりにビデオで直接見せるといったこともできます。

 さらに、ドキュメントやアプリケーションの共有機能も大きな要素です。例えばWindowsには「リモートアシスタンス」という、信頼した相手に自分のPCを遠隔操作させる機能があります。この機能は、主にヘルプデスクなどで利用されるものですが、これと似たようなことをIMツールでもできます。例えばMicrosoft Lyncの場合、PowerPointスライドの共有、開いている任意のアプリケーションの共有、デスクトップ全体の共有ができます。相手のLyncには、選択したPowerPointのスライドやこちらのアプリケーション、デスクトップが映し出されるのですが、権限を追加すれば、相手もそれらを操作できるようになります。

 この機能の価値はヘルプデスクのような用途だけにとどまりません。事実上あらゆるものが共有できるため、例えば特定のWebサイトを閲覧しながらディスカッションができます。CADアプリケーションを共有してアドバイスをもらうようなこともできます。Excelを共有して、シミュレーションをしながら意思決定もできます。わざわざ誰かの席に行ってPCの画面をのぞき込んだり、どこかの会議室に集まってプロジェクターで投影したりしなくても、密度の濃いディスカッションを自分のPC上でできるのです。

スライドやアプリケーションの共有により、文脈を間違えずに対話できる

 これにより、ナレッジマネジメントが直面した壁を超えることができます。形式化が困難な知識でも、口頭での伝達なら、より簡単になります。知識の理解は経験の共有が役立ちますが、アプリケーションの共有によって、こちらの課題をより伝えやすくなります。相手の視線で解決への糸口をつかめるようにもなるでしょう。人は、見えない相手のために形式化された情報を作成するよりも、カメラ越しであっても、見えている相手からの真剣な問いには答えやすいものです。従来は、なかなか相手に課題を伝えきれなかったり、コミュニケーションが円滑にはいかず途中で断念したりということがありました。UCが標準的なコミュニケーションツールとなれば、隣の席の人と雑談する感覚で、遠く離れた背景が異なる人とも、より緊密なコミュニケーションをとれるようになります。

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