ビジネスコミュニケーション進化論(後編)大競争時代を勝ち抜くワークスタイル(3/3 ページ)

» 2011年02月18日 08時00分 公開
[米野宏明,日本マイクロソフト]
前のページへ 1|2|3       

気になるコスト削減効果

 UCはコスト削減にも大きな効果をもたらします。分かりやすいところでは、「移動」の必要性が減り、出張費などのコストを削減できます。投資金額に対して、どのぐらい出張費が減らせたのかということが比較的明確に算出できるので、ここ数年はオンライン会議を利用して会議費用を削減するという目的が、UC市場を牽引するドライバになりました。

 もう1つのメリットにIT管理コストの削減があります。例えば電話インフラの統合による二重投資や保守費用の削減が挙げられます。多くの企業が電話回線とLAN回線を全く別々の部門で管理・運用しています。電話回線は主幹が総務部門、LAN回線はIT部門が多いようです。このことだけでも、回線の二重投資が発生します。

 また、LAN回線はIT部門が適切に管理できている場合が多いでしょうが、電話の場合は外線と内線をブリッジする役回りの「PBX(構内交換機)」が関係します。PBXの多くがブラックボックスになっており、総務部門が直接タッチできていないことが少なくないようです。人員の異動などにより、電話番号やグループの変更が必要になると、ハードウェアベースのPBXでは、専用のコマンドラインでそれらの編成操作をしなければなりません。勝手に操作するとサポート対象外になるケースもあり、高額な保守費用を支払ってでもベンダーに外注する必要があります。コンピュータシステムであれば、IT部門が簡単にできるようなことでも、電話ではそれができません。外線通話を含むUCの場合、電話機端末も含めて、すべての電話リソースをITリソースとして管理できるようになります。これにより、電話のための保守費用を大幅に削減できます。

電話リソースをIT資産と統合管理し、大幅にコスト削減(クリックで拡大)

 Microsoftではワールドワイドで年間数百万ドルの保守コストを削減しています。日本マイクロソフトでも、2月の本社移転に伴って、既存のPBXハードウェアと回線を全面的に撤廃し、Lync によるソフトスイッチ化とLANへの統合を実現しました。これによる実際の効果は、改めて紹介したいと思います。

これからの時代に必要なモバイルワークスタイル

 ビジネスがグローバル化し、そのスピードが加速している今、オフィスにある自席以外で働く機会が格段に増えています。このような状況で生産性を発揮できる場所が限られてしまうことは、競争の観点から大きなマイナスになります。必要なのは、どこに移動しても最高の生産性を発揮できる環境であり、UCはそのような真のモバイルワークスタイルを実現するものです。

 時差のある国とのコラボレーションが必要な時に、わざわざタクシーを使って早朝や深夜にオフィスに向かわなくても、自宅のPCで仕事ができれば圧倒的に生産性が高いはずです。商談前にオフィスに立ち寄らなくても、客先の近くにあるカフェで朝食をとりながら、ノートPCで準備した方が確実です。最近は電源や無線LANを備える店が増えています。自社のオフィスであっても、会議やディスカッションのために自席にいない場合がありますし、近年はフリーアドレス化によって自席そのものがない場合もあります。

 このような多種多様な労働環境は、もはや特殊な状況ではなくなりつつあります。「在宅勤務」のように場所を限った静的な「テレワーク」ではなく、どの場所に移動しても最高の生産性を発揮するための「モバイルワーク」が必要とされています。

 UCにノートPCやスマートフォンを組み合わせることで、モバイルワークスタイルが実現します。どこにいてもオフィスの自席と同等の生産性を発揮するには、(1)企業や組織内に蓄積される情報(データや文書)にアクセスできること、(2)必要な人と円滑にコミュニケーションがとれること、(3)入手した情報をストレスなく処理できること、(4)情報の伝達や管理を安全に行えること――が必要です。ネットワークや暗号化技術、デバイスの発達によって、(1)、(3)、(4)は十分なレベルに達し、誰もが容易に利用できる環境になりました。そして、(2)はUCの導入によってカバーできます。

 これまで述べたように、プレゼンス機能によって、相手がどこにいようとも、相手の状況を的確に把握できることで最良のコミュニケーション手段を選択できます。そして、各種のコミュニケーション手段が統合されているので、コミュニケーションの目的と、自分や相手の状況に応じて臨機応変にその手段を切り替え、最高の効率を手にできます。

 例えば連絡を取りたい営業マンがオフィスの自席にいないとき、プレゼンスの状態が「青」(連絡可能)と表示され、「場所」がオフィス外の場合は、恐らくカフェで朝食をとりながらPCを操作している最中かもしれません。まずIMで連絡を取って、必要に応じてビデオ通話やファイル転送、アプリケーション共有などに切り替えられます。

 もし状態が「赤」で商談の会議中となっており、場所がオフィスの外、そして、スマートフォンを利用しているとなれば、客先で商談中のためにPCがオフラインになっているのもしれません。緊急の要件がある場合は、相手のスマートフォンにテキストチャットで知らせ、「Yes/No」の返答をまずもらいます。詳細は商談が終わり次第コールバックしてもらうといったことがでるでしょう。一方の営業マンは、メールだけでなく電話の着信をノートPCやスマートフォンで取ることができ、Webカメラを使った臨場感のあるオンライン会議も利用できます。オフィスに戻らなければ処理できない業務が減り、その時々で自分が最も生産性を発揮できる場所や手段を自由に選択できるのです。

どこにいても同じパフォーマンスを実現するモバイルワークスタイル(クリックで拡大)

 ビジネスのグローバル化、業務の細分化と専門化、グリーンITやコスト削減、人材の流動化など、現在起こっているあらゆるビジネス環境の変化が、モバイルワークスタイルへの対応を求めています。この流れはもはや止めることはできず、個人や組織にとって重要な競争条件となりつつあります。UCはまさに、この変わりつつある現代ビジネスにとって最も重要な生命線になるはずです。

企業向け情報を集約した「ITmedia エンタープライズ」も併せてチェック

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ