中小企業の活力を高めるIT活用の潮流 豊富な事例を紹介

赤字の腕時計修理事業を立て直したカイゼン活動の舞台裏中小企業の活力を高めるIT活用の潮流(2/3 ページ)

» 2011年02月25日 08時00分 公開
[伏見学,ITmedia]

技術者の仕事にもメス

 いざプロジェクトが始まり、改めて外部の人間から指摘されると、これまでの「非効率さ」が次々と浮き彫りになった。例えば、修理品のずさんな管理体制である。同社には毎日数百個の修理品が届く。それらを専用棚に収納するわけだが、以前の戸棚は整理整頓がほとんどなされておらず、修理品の入った箱がどこにあるのか、誰が持っているのか分からない状態だった。また、セキュリティのためにと修理品を戸棚や倉庫に入れ鍵をかけて保管していたが、日常的に分量を把握できないため知らずに在庫が増えていたこともあった。

秋田秀仁取締役部長 秋田秀仁取締役部長

 「修理がキャンセルとなり返却しなくてはならなくなった場合、その時計がどこにあるかすぐに見つからないという事態がよくあった。社員が退社した後に、事務部門が会社の隅々を探し回ることもざらだった」と取締役部長の秋田秀仁氏は振り返る。

 コンサルタントの指示に従い、まずは「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」の5S活動から取り組んだ。床や机の上にカラーテープを貼って物の置き場所を指定したり、戸棚の扉をすべて取り払ってオープンにしたりと、簡単な改善活動から始めていった。

 社員の仕事の中身にもメスを入れた。業務効率を高めるため、技術者が各自行っていた作業のうち、時計の洗浄などは分業にした。技術者は何十年も一人で作業するのが当たり前だったので、「部品がなくなったり、商品を傷つけたりしたら誰が責任を取るのか」などの反対意見が出た。また、これまで技術者ごとにバラバラの形式だった日報を標準化し、正確に作業の進ちょく確認ができるようにした。現場からは不満の声もあったが、人事評価に組み込むなど、納得してもらうようトップダウンで働きかけた。

 業務の効率化とともに、クレーム数を減らし、修理サービスの質的向上を図った。同社ではこれまで再修理として持ち込まれる返却比率が5%だったが、出荷前に検品する工程を新たに設けることで、たとえ技術者がOKを出した修理品でも再度チェックするという体制を作った。その結果、現在では再修理率は2%を切っている。

「業務改善を進めた結果、新しいセクションができるなど、間接業務は増えている。しかし、そうすることで顧客からのクレームが減り、信用力が高まった」(秋田氏)

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