第4回 危機対応の3原則と危機管理広報のあり方東北地方太平洋沖地震からの復興 ── リスク管理、危機管理、そして復旧(4/4 ページ)

» 2011年03月17日 08時00分 公開
[戸村智憲,ITmedia]
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分かりやすい説明を心掛ける

 危機発生時において最も気掛かりなのは、市民や企業を支える社会インフラに関する情報だ。社会インフラに携わる企業では、特に危機管理広報が重要となる。今回の震災では、政府、原子力安全・保安院、東京電力の情報公開に日本中が関心を寄せた。しかし、残念ながらそれらの記者会見では専門用語が飛び交うばかりだ。非常に分かりにくく、かえって不安を増した。

 危機時には、分厚い専門用語のオンパレードになった資料はほとんど読まれることはない。大事なのは、

  1. 安全か、危険か
  2. どうすればいいか(どうすれば安全を得られるか)
  3. これからどうなるか

の3点を端的に分かりやすく伝えることだ。

 教科書通りに広報対応を考えれば、「5W1H」を明確にして話すことが求められよう。しかし、危機の混乱期に最後まで延々と会見を聞き続けなければ理解できない広報はかえって問題だ。要するに何なのかを伝えられればそれでいい。特に被災地では、わずかに聞こえるラジオだけが頼りということがある。そのラジオも電池の寿命が残り少ない。被災者は端的に情報が欲しいのだ。危機における広報のメッセージに少しでも希望の光を見出したいのだ。

 放射能の被ばくの危険は、何も専門家だけの問題ではない。幼い子どもやお年寄りまで、老若男女が危機の時は記者会見の視聴者だ。そして、その会見の視聴者一人ひとりが、尊い命を持つ人間だ。危機の混乱期には、先ず結果や上記の3点を説明しよう。その後、冷静に対応するために必要な情報を提供すべきだ。

 危機管理広報も、本連載の「第2回 リスクに備える7文字の原則」の記事にあるように7文字の原則(3つの「正」の頭文字と「適時適切」)で、正直に・正確に・正式に対応することを適時適切に行ってもらいたい。慰めにウソやごまかしはいらない。被災者に必要なのは、あるがままの現状に即した安全確保のための情報である。政府や企業などにとって都合の悪い情報こそ、積極的に開示してほしい。

 迅速に被災地の安全が確保され、一人でも多くの方が心身ともに救われ、そして一日でも早い被災地・被災企業の復旧・復興がなされることを祈りつつ、次回以降も引き続き、リスク管理、危機管理、そして復旧のためのポイントを改めて説明していきたい。

お知らせ

日本マネジメント総合研究所では2011年4月末まで、企業規模・団体の規模にかかわらず、災害対策に必要な相談やアドバイスなどの危機管理支援コンサルティングを無償提供することを決定しました。メール、電話、FAX、郵便で受け付け、時間の許す限り対応します。

日本マネジメント総合研究所 理事長・戸村智憲

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プロフィール 戸村智憲(とむらとものり)

戸村智憲

日本マネジメント総合研究所理事長。早大卒、米国MBA修了、国連勤務にて国連内部監査業務の専門官などを担当。企業役員として監査統括、人事総務統括、(株)アシスト顧問、JA長野中央会顧問、岡山大学大学院非常勤講師などを歴任する。現在、企業や医療福祉機関、農協などのリスク管理・危機管理を指導している。


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