災害時に重要なのは平時からの備え――データ保護の観点からみたBCPITmedia エンタープライズ セミナー レポート(2/2 ページ)

» 2011年03月30日 12時00分 公開
[岡田靖,ITmedia]
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低コスト、かつ手間のかからないレプリケーションソフトウェア

日本CA ストレージ・ソリューション事業部 プロダクトソリューショングループ シニアコンサルタント 森正臣氏

 3つのスポンサーセッションでは、データ保護に役立つ各社の製品やサービスが紹介された。日本CA ストレージ・ソリューション事業部 プロダクトソリューショングループ シニアコンサルタントの森正臣氏は、「データを守れ! サーバの災害対策 現実解」と題し、ソフトウェアソリューション「ARCserve」シリーズについて紹介した。

 「事業継続の観点で備えが必要になるのは、自然災害だけではない。ある会計事務所は、スプリンクラーの誤作動によってサーバのデータが失われた。紙資料からの手入力を試みたものの業務を再開できず、廃業に追い込まれた」と、小さなトラブルが最悪の結果を招く場合もあると森氏警告する。

 しかし、最悪の事態を防ぐためにデータ保護が欠かせないことを理解していても、企業としてはデータ保護に要する手間やコストも大きな課題だ。森氏は、簡単で安価に利用できる方法として「ARCserve Replication」の活用を提案する。

 「サーバのデータを別のサーバにレプリケーションすれば手軽に運用でき、いざというときには複製先のサーバで運用できる。ARCserve Replicationは既存のサーバに容易に追加できるソリューションだ」(森氏)

 例えばある建設会社では、ARCserve Replicationを用いて現場事務所のサーバを本社のサーバにレプリケーションしているという。レプリケーションは自動で行われるため、現場に負担をかけずに済む。

 「本社では『ARCserve Backup』によって、データを定期的にバックアップしている。2つのソフトウェアが連携して、一連のデータ保護の流れが自動化された。この建設会社は、“手頃な価格で、簡単に実装できる”と評価して、ARCserveシリーズを採用した。中小企業や部門内利用にもARCserveは適している」(森氏)

平常時のリハーサルにも役立つ、低コストなDRサイトソリューション

オージス総研 プラットフォームサービス本部 計画部第二チーム マネージャー 谷上和幸氏

 「月額7万円〜でBCP対策を実現するクラウド型DRソリューションとは」と題したセッションを行ったのは、オージス総研 プラットフォームサービス本部 計画部第二チーム マネージャーの谷上和幸氏と、インフォコム データセンター事業本部 DCサービス部 DC営業グループ 課長代理の沼生国久(ぬまにゅう・くにひさ)氏。

 「災害対策では、『テープ別地保管』『リモートバックアップ』『DRサイト運用』といった手法が一般的だ。しかし、安価な手法はリカバリーに要する時間が長く、短時間でリカバリーできる手法はコストが高いといった課題がある。価格と時間のバランスの良い対策が求められている」と谷上氏は言う。

インフォコム データセンター事業本部 DCサービス部 DC営業グループ 課長代理 沼生国久(ぬまにゅう・くにひさ)氏

 谷上氏の挙げた3つの手法のうち、最も短時間でリカバリーできるのがDRサイト。物理的に離れた複数拠点を使うため、広域災害時にも被災していない拠点でシステムを運用できる反面、常に複数サイトを運用せねばならないことからコストが高くなりがちだ。このような課題を解消すべく、関東と関西のそれぞれを足場としてデータセンター事業を手掛ける同業者の、インフォコムとオージス総研が共同で作り上げたのが「お手軽DRサービス」である。両社データセンターに同一のクラウドコンピューティング基盤を構築し、ネットワークで結んでいる。そしてクラウドのメリットを生かし、平常時は負荷の軽い予備サイト側のリソースを最低限しか使わないようにすることで、コストの増加を抑えるという内容となっている。

 「お手軽DRサービスは、平常時には7万円からという、リモートバックアップ並みのコスト感であり、かつ、本格的なDR環境に匹敵するサービスレベルを実現した。BCPがいざというとき確実に役立つことを確認するためには、平時でも演習を行うなどの取り組みが求められるが、そういった場面でもお手軽DRサービスが役に立つ」(沼生氏)

このセッションに興味のある方にはこちらのWebキャストがおすすめです

月額7万円〜でBCP対策を実現するクラウド型DRソリューション 「お手軽DRサービス」

BCP対策が急務だが、専用のDR(ディザスタ・リカバリ)環境構築には巨額の投資が必要。そんなこれまでの常識を覆し、月額7万円からの低コストで実現するDR対策の切り札です。

Webキャストの閲覧ページへ (TechTargetジャパン)

衛星通信・放送技術の応用で実現したデータ分散保管サービス

スカパーJSAT 宇宙・衛星通信事業本部 事業開発部 担当部長 加藤健氏

 スカパーJSAT 宇宙・衛星通信事業本部 事業開発部 担当部長の加藤健氏の講演は、「衛星通信技術を応用したバックアップ不要なストレージサービス」だ。同社は、衛星放送の「スカパー!」、衛星通信の「JSAT」を中心とした衛星の運用を主に手掛けるアジア最大の衛星オペレーターだ。同社では、2009年からクラウド型ストレージサービス「S*Plex3」を提供している。

 「事業継続には情報保護と、ストレージが重要という考えで、2004年ごろから技術開発を進めてきた。このサービスの最大のポイントは分散保管だ。顧客から預かったデータを日本各地に分散して保管するようになっている。全体の70%程度の断片があればデータの内容を保持できる独自技術『消失訂正符号』を用いているため、現状では7地域8拠点のうち2拠点が失われてもデータを保護できる、広域災害に強いサービスである。暗号化して分散保存しているので、その一部だけ見ても解読はできず、安心できる」(加藤氏)

 キーテクノロジーとなっている「消失訂正符号」は、もともと衛星通信や衛星放送のノイズ対策として開発された技術だ。かつて、衛星放送は雨の日にノイズだらけになってしまったりしたが、そのノイズをなくし、安定した放送ができるようしたのが、この消失訂正符号だ。

 全体の一部が失われてもデータには問題がないという利点は、運用面でもメリットがあるという。ストレージサーバの運用管理を徹底的に簡素化しているのだ。

 「多数のサーバが自律的に協調することでSPOFを回避した構成となり、“少しくらい壊れてもいい”という考えでハードウェアを選定、コストも消費電力も大幅に削減している」(加藤氏)

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