震災を“風化”させないためにオルタナブログ通信(2/4 ページ)

» 2011年04月08日 18時06分 公開
[森川拓男,ITmedia]

風化させない努力

 現在の非常時モードから、普段の日常モードが戻った時に、果たして私たちが「新しい日本を創ろう」という問題意識を持ち続けられるかどうか?(中略)「新しい社会」を実現するためには、他ならぬ私たち自身が、現在の問題意識を風化させないこと、そして、それを為政者に要求し続けることが必要である、と感じました。

 「そして、『いつもの日常』に戻ってしまう危うさ:永井孝尚のMM21


 大震災から間もなく1カ月が経とうとしている。高橋誠氏「点をつなぐ」の「日常」に埋没してしまう前にしておきたいことにあるように「原発の状況はまだ予断を許しませんし、放射能汚染騒ぎや計画停電などで混乱した状況は続いて」いるが、「被災地以外の方々はだんだんと日常を取り戻しているところ」だ。高橋氏が指摘するように、「日本の経済を回して復興していくためにも、早く日常生活に戻ることが大事」なので、それは歓迎すべきことである。だがここで、「日常に埋没してしまう前に、自分の人生をじっくりと見直してみることも重要」ではないかと高橋氏は言う。

 永井孝尚氏「永井孝尚のMM21」のそして、『いつもの日常』に戻ってしまう危うさは、震災をきっかけに「『これを機会に日本を大きく変えていこう』という意見が多く見られるようになった」ことを紹介した。そして「現在の非常時モードから、普段の日常モードが戻った時に、果たして私たちが『新しい日本を創ろう』という問題意識を持ち続けられるかどうか?」と問いを投げかけている。そして、1995年の阪神淡路大震災のことを回想。発生直後はマスメディアの一斉報道に全国が支援したが、2カ月後に発生した地下鉄サリン事件で様相が一変し、阪神淡路大震災の報道が急速に減ったという――この事実を踏まえ、「新しい社会を実現するためには、ほかならぬ私たち自身が、現在の問題意識を風化させないこと、そして、それを為政者に要求し続けることが必要である、と感じました」と締めている。

 阪神淡路大震災については、岩永慎一氏「THE SHOW MUST GO ON」の以前に神戸の「阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター」を見学に行ったときの事を思い出す先例としての神戸の復興のお話:新長田駅北での「阪神・淡路」復興区画整理が完了でも書かれているので、ぜひ読んでいただきたい。今回の震災からの復興のヒントが隠されているような気がする。

 今回の震災では、米澤豊氏「学校マーケットと企業の接点・・」の震災の連鎖倒産で指摘されているように、「負の連鎖」が発生している。直接の被災地でなくとも、被災地で作られている材料などが仕入れられないために工程がストップしたりといった影響が、さまざまな業界で起きているのだ。コメントに寄せられた内容も、身につまされる。米澤氏が返信したように、「自分のこと、そして自分のビジネスを立て直す事を精いっぱいやることが復興の足がかり」ではないだろうか。

海外は東日本大震災をどう見るか?

 このままでは、日本の中心である東京がアメリカ人の心の中で滅んでしまう。これがどういうことにつながっていくのか、考えるだけでも空恐ろしい。ビジネスや政治だけでなく、同盟関係にもひびが入る。今後東京だけでなく日本全体にこの震災の影響がじわじわと出てくる。日本は一国でも一人でも余計に世界を味方につける必要がある。滅んでもいないのに、世界から滅んだと思われては自滅だ。

 大震災、普通のアメリカ人にはどう見えているか:ヨロズIT善問答


 3月11日以降、雑誌などで震災の特集が組まれている。本荘修二氏「Dr.本荘の Thought & Share」の轟々だった週刊誌の問題 AERA、ポスト、アスキーは、中でも特徴的な3誌の対応を比較している。「ACの広告や本件など、それ自体は(他の課題と比べて)さほど重要なことではないが、その背景に議論の余地があると思い、書いてみた」と言う。

 もちろん、今回の震災は日本のメディアのみならず、世界中が連日報道している。特に、山崎秀夫氏「インターネットの第二の波とソーシャルメディアマーケティング」のメディアの歴史的転換のなかで起こった東日本大震災と言う異界の登場が日本を救うか?で紹介されたように、「日本の良さを見直す声が海外からいっぱい、聞こえてきた」。

 地震直後にインドネシアに行った夏目房之介氏「夏目房之介の「で?」」の帰国しましたは、「インドネシアでは、現地の人たちはもちろん、多くの外国人の方から心配されました」といい、「泊まったところの近くの高校でも、生徒たちが募金をしてくれたと聞きます」と外国人の声を紹介。ただし、「同じニュースを読んでも、日本の文脈を知っている僕と違い、現地の日本人でも相当過剰に物事を受け取り、ややパニックに近い判断をする場合も感じた」ともいう。

 また、タイに行った宮沢純一氏「無事今日も終了です」のタイ国の真実らしきもの その36 日本の被災とタイ人の考えでも、「どこへ行っても、まず聞かれるのは、『大丈夫かい』という言葉。友人というわけではなく、本当に知らない人が一言そんな声を掛けてくれます」と報告。「タイ人の話では、本当に多くの人が寄付をしてくれた」とも紹介した。海外の人の優しさを感じるエピソードだ。

 その一方、米国在住の岸本善一氏「ヨロズIT善問答」の大震災、普通のアメリカ人にはどう見えているかでは、「会う人会う人に聞かれるので、もう説明するのが嫌になったが、アメリカでの報道だけを見ていると、小さな国の日本では今、大地震と津波と放射能で、人々は食べ物も飲み水も無く避難所で寒さに震えながらばたばたと死んでいる、と思えてくる」と紹介。「日本といえば東京しか知らない彼らから見ると、日本の被災すなわち東京の被災なのだ」と言う。

 もちろん、「アメリカ人のこの思い込みはすべてこちらのメディアの報道による」ものだが、そのメディアが「日本政府の発表を信じていない」というから困りもの。「教育および知的水準の高い人」であっても、「今回の原発の問題は発表されているよりもかなり悪い状況だと信じてしまっている」という。岸本氏は、「事態を軽く見せようとした発表を繰り返すのではなく、すべての情報を公開すべきだ」と指摘。「このままでは、日本の中心である東京がアメリカ人の心の中で滅んでしまう」のを防がなくてはならないからだ。「日本は一国でも一人でも余計に世界を味方につける必要がある。滅んでもいないのに、世界から滅んだと思われては自滅」なのだ。英語ができる人は、ぜひ英語での発信を行い、正しい情報を伝えてほしい。

 「すべての情報を公開」するとパニックを引き起こすのではないかと思う人もいるかもしれない。しかし、「こうしたイメージも単なる思い込みにすぎない」と紹介したのが、小林啓倫氏「シロクマ日報」の情報開示がもたらすのはパニックなのか?だ。「現場よりもむしろ、その対応にあたる政府などの『エリート』の側で不合理な行動が取られることが多い」という「エリートパニック」という言葉まであるという。「パニックになることを恐れるあまり、非常に危険な状態になるまで何の情報開示もしない」ことこそ、問題なのだと。「正しい情報を、できるだけ多く、速やかに、そして広い範囲に届けるよう努力すること。当たり前の話ですが、いまこの姿勢を真摯に追求することが、あらためて求められているのではないかと思います」。

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