企業が常備すべき「防災グッズ」の再点検生き残るために(2/2 ページ)

» 2011年04月11日 08時00分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]
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オフィス内での事前対策

 書類棚やキャビネットなど、地震で転倒する可能性のあるものはL型金具でしっかりと壁に固定させます。2つの棚が上下で分離できるタイプでは分離しないようにしっかり連結するように金具で留めてください。また、「つっぱり棒」は使用してはいけません。揺れが大きいと外れてしまう可能性があります。耐震粘着マットやすべり止め、転倒防止ベルトなど補助製品も有効に活用すべきです。

 扉が開くタイプのものは扉開放防止グッズを使い、地震時に扉が開いて中のものが飛び 出すことのないようにしておきます。またガラスがはめ込まれている扉にはガラス飛散防止フィルムを貼っておきます(窓ガラスも同じです)。

 最近の事務机や会議テーブルは、デザインを重視するあまりに防災に耐えないタイプもあります。ぜひ防災の視点で購入時にチェックしましょう。

 防災訓練は重要です。適切に避難するためにはドアや窓を開く、机の下に潜り込むなどの基本動作を訓練でしっかり身につけておきます。訓練によって机の下に物を置いてはいけないといったことが実感できます。

非常時の体制やマニュアル

 企業は地震災害発生時のシミュレーションを行って、各種マニュアルや行動指針を策定しなければいけません。以下に列挙したものは一般的なものであり、実際には企業の業種、規模、環境、経営方針などの要因で変わります。

  • 災害対策本部の体制策定と実際の運用
  • 行動マニュアル(部門単位、事業所単位)の整備
  • 防災マニュアル策定(短期と中長期に分けて事前対策をスケジュール管理する)
  • 緊急時連絡網の作成
  • 防災グッズの整備と保守、運用
  • 避難訓練マニュアル整備
  • 実際の訓練+教育の指針策定
  • 帰宅難民を最小化するための対策
  • 翌日以降の行動マニュアル(連絡が取れないことを想定して、出勤か、自宅待機かを本人が判断できるようにしておく)
  • BCP(事業継続計画=地震ならその対策の位置付けや大きな考え方を記載し、企業として事業を継続するためのレベルを決める。普段より意識した行動がとれるよう具体的な作業について明示する)

 企業として災害対策を事前にまとめ、マニュアルの作成、社屋の地震強化工事の実施、備蓄食糧の確保、通信手段の代替ルート確認などを実施することは極めて重要です。しかし、「仏作って魂入れず」になる愚は避けなければなりません。そのためには、日頃から対策の必要性を全社員に説き、避難訓練を実施することが大切です。セキュリティ教育やコンプライアンス教育の一環として啓発するのも良いですが、できれば災害教育をきちんと行い、従業員一人ひとりがその意識レベルを高めることが一番重要だと思います。今からでも遅くはありませんので、一分一秒でも早く事業を正常に近い状況に戻すことができる準備をしていただきたいと思います。

萩原栄幸

一般社団法人「情報セキュリティ相談センター」事務局長、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会技術顧問、ネット情報セキュリティ研究会相談役、CFE 公認不正検査士。旧通産省の情報処理技術者試験の最難関である「特種」に最年少(当時)で合格した実績も持つ。

情報セキュリティに関する講演や執筆を精力的にこなし、一般企業へも顧問やコンサルタント(システムエンジニアおよび情報セキュリティ一般など多岐に渡る実践的指導で有名)として活躍中。「個人情報はこうして盗まれる」(KK ベストセラーズ)や「デジタル・フォレンジック辞典」(日科技連出版)など著書多数。


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