「廉価版ではない、真にSMB向けのシステム管理製品を作る」――米Hitachi Data Systemsに聞く

日米で共同開発された中堅・中小企業向け運用管理ソフト「IT Operations」は、エンタープライズ向け運用管理ソフトの廉価版ではなく、SMBのニーズを緻密に調査した上で投入した製品だという。

» 2011年04月13日 08時00分 公開
[石森将文,ITmedia]

 中堅・中小企業がビジネスにITを活用するに当たり等しく直面するのが、社内のIT環境を管理するための手間やスキルといった問題である。そもそも、人材を確保することさえ難しいケースも多い。そのような場合、“社内で比較的パソコンに詳しい人”が片手間にパッチマネジメントやソフトウェアの資産管理などを行うわけで、当人にとって作業付加が多いし、万が一対応漏れがあった場合には、経営を脅かす事態にもつながりかねない。

 こういった中堅・中小企業の課題を解消することを目的に開発されたのが日立のIT Operationsだ(製品についてはこちらの記事参照)。IT Operationsはワールドワイドに展開する製品のため、日米共同でリサーチと要件定義を行った。セキュリティ管理や資産管理を行うDirectorと、サーバ、ストレージなどのハードウェアについて障害監視を行うAnalyzerをラインアップするが、中でもAnalyzerについては、国際的に認知されたデザインアワード「IDEA 2010」で銀賞を受賞したという特徴を持つ(ちなみに2009年にはiPhone 3Gが銀賞を受賞している)。

 これは米国や欧州でその「使い勝手」を評価されたIT Operationsが、日本でもデビューしたとも言える形だ。その製品化の狙いについて、米Hitachi Data Systems(以下HDS、日立製作所の100%子会社となる米国法人)でIT Operationsを担当するナンシー・ラジスティー氏と、サラブ・バトラ氏に話を聞いた。

廉価版ではなく、中堅・中小向けに特化した運用管理製品

HDSのナンシー・ラジスティー氏。IT Operationsのマーケティングを担当。ゴルフは玄人はだしの腕前だという

――製品定義を始めたのはいつからで、またその際に重視したポイントは?

ラジスティー 2007年の6月頃からリサーチを開始しました。米国の中堅・中小企業は、1人あるいは少ない人数で、社内ITをすべて管理しなければならないという課題を抱えています(編注:日本の中堅・中小企業と似た状況だ)。ですから「Ease of Use(使いやすさ)」に特にこだわって要件定義を進めました。

 ここで強調しておきたいことは、IT Operationsはエンタープライズ向けアプリケーション(日立の場合、例えばJP1)のエントリー版ではないということです。中堅・中小企業のシステム管理者が抱える課題を解決するために、特化して開発したアプリケーションになります。

バトラ 実際、日本と米国の中堅・中小企業が運用管理について抱える課題は、とても似ています。それは、障害によるダウンタイムを減らしたいとか、社内システムを俯瞰できる一元的なビューが欲しいとか、トラブルが発生した箇所はもちろん、その根本原因を迅速に特定したいといったことです。しかもこれらを、「Ease of Use」で実現することを、彼らは求めています。こういった点は、ガートナーや日本のノークリサーチといった調査会社の協力やパートナーやユーザーからなるフォーカスグループのヒアリングで判明したことです。

 その上でわれわれは、こういった課題に対して、(IT Operationsの)Topological List View(TLV)や、Route Cause Analysis(RCA)といった機能を提供することで解決を図ろうと決めました。障害時にメールアラートを出すだけでなく、原因の特定を進め、その後の作業フローも定義してあげることで、少ないクリック、少ない作業負荷で解決する。こういったことが、中堅・中小企業が求める要件です。

技術的観点からIT Operationsの製品定義にかかわったというサラブ・バトラ氏。社内では“マヌ”の愛称で通っている。4才と2才の子供と遊ぶのが週末の楽しみだという

――競合製品はありますか。また「Hitachi」というブランドは、米国のソフトウェア市場でどのように認知されているのでしょうか。

バトラ ネットワーク管理中心のSolarWinds社が近い分野をターゲットにした製品を提供しています。ですがわれわれは、先ほど述べたTVL、RCAといった機能で差別化できていると考えています。

ラジスティー ブランドについては、正直なところソフトウェアよりもテレビやストレージベンダーとして、「Hitachi」は認知されています。ですからユーザーに提案する際「Hitachiのソフトウェアだ」と言うと、驚かれることもありました(笑)。今回は中堅・中小企業向けの製品ということもあり、ライセンス価格の設定についてもセンシティブになりましたね。

――将来的にIT Operationsシリーズに実装していきたい機能はありますか。非公式な見解で構いません。

バトラ 競合との競争だけを念頭に置いて、単なる機能追加を重ねるキャッチアップゲーム(いたちごっこ)を続けるつもりはありません。あくまでも中堅・中小企業のニーズに沿った形で、使い勝手を損なわないよう改良を続けます。具体的には、そうですね……変更管理の機能は今後必要かと感じています。

――パートナー向けの施策としてはどのようなものがありますか。

バトラ (オフラインでの)オプショナルトレーニングの実施はもちろんですが、教則ビデオや、IT Operationsを導入することによるユーザーのROI(導入効果)を測定するツールの提供も行っています。またIT Operationsの販売パートナー向けに、トレーニングを実施したうえでの認定プログラムを制定することも検討中です。

――今後のIT Operationsのロードマップを教えてください。

バトラ 今後、6カ月ないし8カ月の周期でアップデートしていくことを公表しています。それとは別に、管理対象となるIT製品の種類は多くあるわけで、IT Operationsでそれらを管理するためのプラグインを、2週間から4週間で配布できるよう、米国での体制を組んでいます。これはもちろん、IT Operationsを使ってくれる中堅・中小企業ユーザーの期待に応えるためです。

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