国内に、海外に、正確な情報を――日本を元気にするチカラオルタナブログ通信(2/3 ページ)

» 2011年05月06日 16時50分 公開
[森川拓男,ITmedia]

久方ぶりの急上昇

 今回の「オルタナブログ通信」は、4月14〜27日にかけて「オルタナティブ・ブログ」へ投稿されたエントリーの中から、「ソーシャルメディア」「緊急地震速報」「発電」「支援」といったテーマを紹介する。読者がオルタナティブ・ブログを読む際の参考にしていただければ幸いだ。

 それでは、4月21〜27日を4月4週とした、過去8週分のオルタナティブ・ブログへの投稿状況グラフを見ていただこう。

4月21〜27日を最新としたオルタナティブ・ブログのステータス

 前回と比べて飛躍的にエントリー総数が増加した。しかし投稿されたブログ数自体は微減している。4月26日に新たなオルタナブロガーとして加わった内藤順氏「Social Reading」が、オルタナティブ・ブログ初投稿となるご挨拶のほかに、書評を投稿しているのに気付かれただろうか。「ご挨拶」にも書かれたように「2011年に読んだ中のおススメ本を紹介」ということで、実際に読んだ日付で書評を投稿したもののようだ。そこで、今回は特別に、以前の日付のエントリーに関しても4月26日投稿分として集計した。この4月26日以前の投稿が70本あったため、エントリー総数が飛びぬけて上昇した形となったわけだ。

 ここで全エントリーのキーワードランキングを見てもらいたい。

順位 キーワード(カテゴリー) エントリー数 先週順位
1 書評・本 83 ↑(7)
2 社会 79 ↓(1)
3 ビジネス 47 ↓(2)
4 イベント 31 ↓(3)
5 ソーシャルメディア 26 ↓(4)
6 ストリーミング・動画 17 ↓(5)
7 Twitter 16 ↓(6)
8 グローバル 14 ↑(19)
雑感 14 ↑(12)
10 Facebook 11 ↓(8)

 まずは、今回のランキングは本稿を休載した4月3週分からの変動を示しているため、一部の前回順位が異なることを了承いただきたい。また「書評・本」が一気に1位に躍り出たのは、先述のように新ブロガー内藤氏の過去日付エントリーも今回の投稿として組み入れたためだ。これは一時的なものとなるが、内藤氏は初回投稿以降も精力的に書評エントリーを書き続けているので、今後「書評・本」が上位に来る可能性は高いだろう。

 それ以外の全体的な動きは少ない。ただし、徐々に「社会」のキーワードが減少しており、中でも震災以外の話題が増えていることに注目。「雑感」が上がっていることからも分かるように、オルタナティブ・ブログもだいぶ日常ペースに近づいている。

 ベスト10以下には、11位に「音楽」(10)、同率12位に「テクノロジー」「ハードウェア」(9)と続いた。

 それでは4月14〜27日にオルタナブロガーが取り上げた話題から振り返ってみたい。

ITで日本を元気に!ネット通販を活用した支援

 「福島県産の野菜がネット販売で大人気」とのニュースがあった。(中略)汚染に対しても自主検査をしており安心できるとのこと。かなりの商品は既に売り切れとなってしまったようだ。なによりも、購入者の多くに「風評被害に負けないで!」とのメッセージが込められていることと思う。

 ECがなす震災支援のブレークスルー〜JA全農福島のネット販売の人気に見る支援の在り方〜:Godspeedな生活


 震災から派生した原発事故は、あらゆる方面へ影響を与えた。森島秀明氏「こんなところにも、グローバリゼーション2.0」の原発問題:海外からの「風評被害」を沈静化させるアイデアでは、「最近の日本製品の放射能問題に関して、国内のみならず海外の過剰反応が激しい」ことを紹介している。「被災地とは無関係な地域における観光客も激減しているとの話」があったり、「中国に立ち寄ってきた外人からは、最近の中国料理店では、日本から食材を輸入していないので安全だと言っているらしいという話を聞かされた」という。この反応について、森島秀明氏は「米国のBSE(狂牛病)問題のときは、全頭検査を主張した潔癖症 日本人である。立場が変わって因果応報と言われてもやむをえない」としているが、実に困った風評被害だ。森島氏は海外の風評を鎮静化させるために、「まだまだ日本人としては、やることがありそうだ」としている。つまり、「英語での情報発信を目的とした首相官邸のFacebookはどうなっているかというと。。記者会見の日付の羅列だけ。見出しにはまったくメッセージがない」など、海外向けの正確な情報発信がなされていない部分を指摘しているのだ。

 このような中でも、大里真理子氏「マリコ駆ける!」のこの時期に日本に遊びに来たアメリカ人家族4人に感謝!で紹介されたように、海外から来日するケースもある。この家族の場合は、「震災前に切符をすでに手配していたし、子供が春休みなので来た」というが、7つのポイントから、子供の「東京の友達と遊びたい!!! という懇願を聞き入れる事が出来た」という。しかし、大里氏も指摘するように、これはまれなケースだろう。やはり森島氏が指摘した、正確なメッセージの発信が急務だろう。

 IT企業も結束した。吉政忠志氏「ベンチャービジネス千里眼」の「ITで日本を元気に!」実行委員会に参加しましたでは、そうそうたる面々が「ITで日本を元気に!」実行委員会を立ち上げたことを紹介。しかもメンバーに複数のオルタナブロガーが含まれていることが、鈴木麻紀氏のコメントで指摘されている。

 永井千佳氏「永井千佳の音楽ブログ」のことばを尽くすでは、「福島の元気野菜フェア」が開催されたことを紹介。しかし、ここで残念なことがあったという。このフェアには、「福島から農家の奥さまが販売員として」来ていた。そして、「ある女性のお客さんが、販売している方が福島の方だと分かったとたん顔色が変わった」というのだ。「農家の奥さまが身体に触れたとたん『触らないで!触らないでよ!』と強く言いながらその場を去って」いったというのだ。正直、このエントリーを読んだとき、言葉が出なかった。海外だけではない。国内でもまだまだ正確な情報が伝わっていないことを、あらためて思い知らされた。

 その一方、稲川卓治氏「Godspeedな生活」のECがなす震災支援のブレークスルー〜JA全農福島のネット販売の人気に見る支援の在り方〜は、「福島県産の野菜がネット販売で大人気とのニュースがあった」ことを紹介した。稲川氏はこのニュースを「ネット(EC)がもたらした風評へのブレークスルーかもしれない」とし、「マジョリティを対象としている」大手物流は「伝搬性の高いネガティブメッセージ」を「結果として受け入れざるを得ない」が、「ECが持つ流通の中抜きにより、ネット取引による少数派へのパスが震災支援の1つの在り方として見えた」という。さらにネット通販の活用形としては、高橋誠氏「点をつなぐ」のアマゾンの「ほしい物リスト」を活用した、被災地を直接支援できる仕組みでユニークな方法が紹介された。

 アマゾンといえば書籍というイメージを持つ人が多いと思うが、Kindleを使った支援も始まっている。佐川明美氏「佐川明美の「シアトルより愛を込めて」」の「2:46 Aftershocks」...一つの呟きから一週間で本ができるまでで紹介された、「東日本大震災の被災者を救済するチャリティー・プロジェクト」だ。Twitterを通じて生まれたKindle本、『2:46: Aftershocks: Stories from the Japan Earthquake』は、「売上げ全額を日本赤十字社に寄付」されるという。Amazon.comで発行されたのは英語版だが、「現在、日本語版はじめいろいろな言語への翻訳が、ボランティアの手で進んでいる」とのこと。佐川氏のいうとおり、「ソーシャルメディアの威力発揮」である。

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