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「真似せず、真似されず」の精神で龍角散がERP導入に取り組んだ理由とは?江口ともみのIT活用ビフォーアフター(2/2 ページ)

» 2011年05月16日 08時10分 公開
[聞き手:江口ともみ、構成:編集部,ITmedia]
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IT導入はチャレンジ――そして「新しい価値を生み出す」

江口 龍角散というブランドは知名度が高いのに、社員は100人程度ということで、少し驚きました。少数精鋭なのですね。龍角散の経営スタイルの強みは、どこにあるのでしょうか。

藤井 わたしは100人でも多いと考えています(笑)。経営には、アウトソーシングが大切です。海外に展開する際も、現地のしっかりとした代理店やパートナーと手を組む。その結果、仮想的には何倍もの企業組織として機能できます。

IT活用ポイント

龍角散の社員100人のうち、総務系のスタッフは6人。専任の情報システム部ではない彼らが、規制対応など本来の業務に加える形でITシステムの運用を担当しており、業務負荷が大きいという。


龍角散 取締役 業務推進本部長 菅野博氏

 だからといって手を広げすぎない――つまり「選択と集中」も重要です。やるものはやる。やめるものはやめる。コアの技術をしっかり持って、「真似せず、真似されず」の精神で経営しています。二番煎じはダメです。それよりもどうしたら世の中の役に立てるかについて、いつも考えています。

 わたしは音楽大学でフルートを専攻しました。プロのフルーティストを目指していたのです。音楽は素晴らしいものです。そしてオーケストラほど、精密に構成されたものはありません。

 実は毎週末、学生オーケストラを指導しています。ここでも会社と同じ人数、つまり約100人で、そろって1つの音楽を作り上げるわけです。わたしは指導する立場ではありますが、同時に学生とのかかわりを通じ、経営を学んでいると言うこともできますね。

江口 IT活用についてのお話も伺いたいと思います。今回、会計システムを導入したということですが、そのきっかけはどのようなものでしょうか。

菅野 従来は、いわゆる「オフコン」を利用していましたが、結局、帳票や伝票を出力して手作業で処理しなければなりません。出力した帳票はファイリングして保存していますが、参照する際には探さなければならないし、どうしても“ある担当者でなければ分からない”というケースも生じます。つまり、会計システムの合理化は積年の課題だったわけです。そこで富士通の中堅・中小企業向けERP製品であるGLOVIA smartを導入しました。

IT活用ポイント

龍角散が利用していた会計システムは、19年ほど前に当時メジャーだったオフコンを導入して以来のもの。年代的に陳腐化は否めず、効率を改善するため、「人手を介する必要がない」「属人化させない」といった認識を共有し、システムの刷新を進めたという。


江口 導入の結果、日々の業務においてどのようなメリットがありましたか?

菅野 従来は支払業務だけで、一人月をかけていましたが、現在は自動化できました。細かなところでは、現金支払いだった社員の交通費精算も、口座振込に移行しました。ですから経理部で現金を保有することはありませんし、参照する際、帳票を探す必要もなくなりました。

 今回は基本的に、カスタマイズもしていません。カスタマイズして従来のやり方を生かすよりも、新しいシステムの上で、合理的なやり方に変えていこうという趣旨です。ワークフローも定義して、従来は経理部で再入力していた伝票は、各自が申請書を入力し送信すれば済むようになりました。

 導入そのものは、半年程度で済んでいます。社内で会計システム刷新についてのワーキンググループを作り作業を進めました。その際、富士電機ITソリューション、富士通システムソリューションズから多くの助言をいただき、その内容を積極的に採用しています。社内で議論しても結論が出にくい部分を、外部からの指摘に沿う形で決断することが、短期での導入につながりました。ハードウェアは、今回新たに富士通の中堅・中小向けサーバを導入し、ワンストップでサポートを受けられるため助かっています。

IT活用ポイント

龍角散では、社内のコンピュータルームに富士通 PRIMERGY RX300を配置し、その上でGLOVIA smartを運用しているという。


藤井 確かに効率は上がったのかもしれませんが、楽をするためにITを使ってもらっては困るのです。次の課題を見出し、それを解決することで、新しい価値を生み出してもらわなければ。人間は、安心してしまうと退化します。

菅野 そうですね。今後の取り組みとしては、生産・販売管理システムを再構築しGLOVIA smartと連携させ、業務のさらなる効率化により月次決算を早く確実に出したいと考えています。

江口 経営の意思決定に迅速さが求められる中堅・中小企業にとっては、いわゆる経営の「見える化」が大切ですものね。本日はありがとうございました。

「GLOVIA smartを通じ会計システムと生産・販売管理システムを連携させ、経営の見える化を図りたい」と菅野取締役(写真=右)

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