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» 2011年05月19日 08時00分 UPDATE

まるごと! 中堅・中小企業とIT経営:【第1回】ベンダの言いなりにならないために (1/2)

本連載では、激変するビジネス環境を生き抜くために、中堅・中小企業がいかにITを活用して経営の舵取りをしていくか、そのエッセンスを散りばめている。初回は企業がITサービスを導入する上での勘所をお伝えする。

[春日丈実,三菱UFJリサーチ&コンサルティング]

企業を取り巻く経営環境の変化

 企業は大企業であっても、中堅・中小企業であっても、自社が活動するマーケットにおいて日々競争をしている。顧客(法人や一般消費者など)に対して自社の製品やサービスを提供し、その対価として収益を得ることで持続的な成長をしていくことが基本である。顧客のニーズの変化、ライバル企業の動向、自社の製品やサービスの状況、これらの情報を収集・分析しながら、企業はマーケットに対応しなければならない。

 昔であれば、自社のマーケットといえば、基本的には企業が存在する地域をベースにしていた。ライバル企業も同じ地域にいた。その後、マーケットが国内全域、そして世界に広がったことにより、顧客やライバル企業も全世界に存在するようになった。現在では、大企業のみならず、中堅・中小企業においても世界をマーケットとして商売しなければ生きていけない時代になっている。企業を取り巻く環境は大きく変化している。

 そうした中、中堅・中小企業がこれらの環境変化に対応するためにITを経営にどう生かしていくか。本連載では、これを主テーマとする。

 現在、PCを使っていない会社は少ない。総務省の調査によれば、従業員500人以上の企業では100%、500人未満の企業でも99.2%の企業がインターネットを利用している。平均すると企業全体では平成21年末時点で99.5%になっている(図1-1参照)。PCがあり、インターネットにつながり、表計算ソフトやワープロソフトがあれば、中堅・中小企業の事務処理はほぼできてしまう。

 ところが、情報システムとなると話は変わってくる。企業がシステム開発プロジェクトを行った場合の成功率は約30%といわれている。これだけ技術が進歩した世の中において、約70%の企業がシステム導入に何らかの問題があるということは深刻な問題ではないだろうか。10社の企業がシステム導入した場合、3社しか成功せず、残りの7社は失敗してしまう。なぜこのような事態が起きてしまうのか。

<strong>図1-1</strong> 企業におけるインターネット利用率の推移(全体)(出典:通信利用動向調査、2010年4月27日、総務省) 図1-1 企業におけるインターネット利用率の推移(全体)(出典:通信利用動向調査、2010年4月27日、総務省)

ITサービスとは何か

 企業がITを導入しようとする目的はさまざまである。もちろん、ITを導入することが目的ではなく、IT導入により企業経営を効率的に行い、企業競争力の向上を図るのが目的である。その目的に応じたITサービス(システム会社はこれらを「ITソリューション」と呼ぶ)とはどういうものであろうか。

 ITサービスとは、ソフトウェアとハードウェアにネットワークが構成されたものを指す。昔は情報システムといえば、ハードウェアの比率(費用構成)が高かったが、最近ではソフトウェアの比率が高くなっている。ソフトウェアの分類もさまざまだが、筆者は「守りと攻め」、「基幹系と情報系」の2軸で区分する(図2-1参照)

 例えば、営業マンの活動をITで効率的にしたいとする。この場合、筆者の区分でいえば、攻めのシステムであり、情報系のシステムであると分類できる。また、現在使っている販売管理システムが古くなり、更新を考えた場合、効率性の視点で考えれば攻めで、セキュリティやコンプライアンスの視点で考えれば、守りのシステムである。いずれも基幹系のシステムである。守りのシステムは内部統制(セキュリティ、コンプライアンスなど)を意識したシステムを指し、攻めのシステムは企業が成長するため、効率性を追及したシステムを想定している。企業経営にとっては、どちらも必要なシステムだ。

 基幹系とは企業が営業活動し、注文を受けてから、生産、仕入れ、在庫、出荷、請求、入金、支払といった基本的な機能(基幹系)をカバーするシステムを指す。一方、情報系とは、顧客の情報や競合他社の情報、自社の販売状況や在庫状況など、各種経営判断に必要なデータを集計・分析するためのシステムを指す。これらはすべてソフトウェア(アプリケーション)で提供されるわけだが、それを動かすためのハードウェアとネットワークなどが必要となる。

 これらは別々に購入するわけにはいかず、パッケージ販売しているソフトを除けば、一般的にはシステム会社(ベンダー)から購入することになる。全国には情報システムを商売としている企業が大小合わせて約2万社もあり、ITサービスの種類は、ソフトウェア×ハードウェア×ネットワーク×システム会社の組み合わせとなる。

 最近はこれらの組み合わせをクラウドサービスによって利用する形態(IaaS、PaaS、SaaSなど)も出てきており、ますます選択肢は増えている。企業はこれらの膨大な種類の中から、自社の目的(攻めor守り、基幹系or情報系)に合ったものをどうやって選ぶのか、これが大きな課題となっている。

<strong>図表2-1</strong> ITサービス(ソフトウェア)マトリクス表 図表2-1 ITサービス(ソフトウェア)マトリクス表
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