最後に、中堅・中小企業が新興国マーケットでビジネスを進めるにあたり、以下の3つのポイントも留意したい。
(1)知的財産の保護
新興国では、知的財産権の概念が十分に確立しておらず、その法的保護を行う社会インフラも十分でない。そこで模倣品対策が重要なテーマとなる。もちろん模倣行為は犯罪なので、場合によっては地元当局などとともに毅然とした対応をすることが必要だが、一方で「模倣されるくらい現地での知名度が向上した証」といったあきらめの声も聞かれる。
(2)現地スタッフの人事労務管理
中国人は、明瞭な人事評価制度に基づき納得感ある評価を求めるとともに、将来どのようなキャリアアップが可能かという点を非常に重視するといわれている。よく中国人は長期間働いてくれずに、ころころと会社を変えるというが、その原因は、日系企業がステップアップ志向の強い中国人に対して明確な人事評価の仕組みを提示できていないことにある。
(3)品質管理
実際に営業するスタッフが中国人でも、顧客は日系企業と取引する以上、日本的な対応やサービスを期待している。顧客からの不満やクレームの多くが、期待のギャップによって生じている。「自分は対外営業で手一杯なので、品質管理は中国人スタッフに任せています」という日本人駐在員の話を聞くが、日本の品質レベルを維持することこそ日本人駐在員が現地にいる大きな役割なのである。
株式会社日本総合研究所 総合研究部門
社会・産業デザイン事業部 グローバルマネジメントグループ マネジャー
大手都市銀行の中国駐在を経て、日本総合研究所の上海現地法人である日綜(上海)投資諮詢有限公司にて中国コンサルティングに従事。帰国後、現職。通算12年の中国駐在歴を生かして、中国投資に関するコンサルティングを幅広く手掛ける。
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