抗がん剤やメタボ治療薬の開発をスパコンで――東大先端研と富士通が共同研究

東大先端研と富士通は、がんや生活習慣病の治療薬候補となる化合物をスーパーコンピュータ上で設計する共同研究を開始した。副作用や毒性の少ない新薬を、短期間/低コストで開発するという。

» 2011年06月13日 13時17分 公開
[本宮学,ITmedia]
photo 富士通の小倉誠特命顧問

 東京大学 先端科学技術研究センター(先端研)と富士通はこのほど、がんや生活習慣病の治療薬候補となる低分子化合物をスーパーコンピュータを利用して設計する「IT創薬」の共同研究を開始した。新規化合物の設計からシミュレーションまでをスーパーコンピュータ上で行うことで多数の実験の手間を省き、副作用や毒性の少ない新薬を短期間/低コストで開発できるという。

 肝臓がん/乳がん/前立腺がん/膵臓がんとメタボリックシンドロームなどの生活習慣病の治療薬となる候補化合物の設計を目指す。先端研が研究している病気の原因物質の情報をもとに、富士通が原因物質の働きを抑制する化合物の設計からシミュレーション評価までを専用ソフト上で実施。副作用が少なく効果が高いと評価された構造式をもとに先端研が実際の合成・評価作業を行い、合格したものを医薬候補化合物として製薬企業に提供する。

 富士通の小倉誠特命顧問は、「(共同研究終了予定の)2014年の時点で、数カ月の期間と数千万円の費用で医薬候補化合物を創出できるようにしたい。ひとまず今後2年間で2万の構造式を創出し、そのうち2〜3個を候補化合物として出せればと考えている」とした。

 

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 新規化合物の創出には富士通のソフト「OPMF」を利用。従来の新薬開発の多くは既存化合物の改良という方式で行われていたが、同ソフトは新しい化合物の構造式をゼロから創出できるという。また、設計した化合物の結合シミュレーションには同社の「MAPLE CAFEE」というソフトを利用する。実際の体内を想定した3次元の仮想空間で、精度の高い効果測定ができるという。

 先端研の児玉龍彦教授は「既に国内の大手製薬企業2社と提携を結んでおり、他の1社も交渉中」とし、創出した候補化合物の臨床試験・販売までを見越した研究であることを強調した。

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