若い力を結集し、ネット業界のプロを育てる! サイバーエージェントが新事業

インターネット企業の多くがエンジニア獲得に躍起になる中、サイバーエージェントは学生を対象にした教育支援をスタート。将来の業界をけん引するエンジニアなどを育てていく。

» 2011年08月17日 08時00分 公開
[伏見学,ITmedia]

 ここ数年、インターネット業界における人材登用に関して大きなうねりが起きている。サイバーエージェント、ディー・エヌ・エー(DeNA)、グリーといった大手を中心に、各社ともエンジニアの採用に積極的な姿勢を見せている。従来のWebサービスに加えて、スマートフォンやタブレット端末など新たなプラットフォームの登場によってゲームやアプリなどの開発案件が増え、エンジニアの活躍の場が広がっているからだ。例えば、DeNAでは、早ければ2011年度中にスマートフォンの開発部隊を1000人規模にする見通しを立てている。

 そうした中、サイバーエージェントは今年5月、インターネット産業で活躍する次世代人材の育成支援を目的とした組織である「次世代人材開発室」を設立した。それに併せて、学生向けにインターネットビジネスのノウハウなどを提供する教育プログラム「サイバーエージェント・インターネット カレッジ」を開講。その狙いについて、次世代人材開発室の鈴木修室長は「多くの学生にチャンスを与えて、インターネット業界のエンジニアを盛りたてていきたい」と語る。

年齢は関係ない

サイバーエージェント 次世代人材開発室の鈴木修室長 サイバーエージェント 次世代人材開発室の鈴木修室長

 インターネット カレッジは同社・藤田晋社長の肝いりでスタートした。ここ数年、同社の新入社員はエンジニアでありながら、企画力があり、アイデアを形にできる人材が増えている。中には、内定者でヒットアプリや優れたサービスを作る学生もいるという。「ユーザー自身がサービスの作り手になることができるため、インターネット業界は年齢が関係ない。若くてもさまざまなアイデアを生み出すことができるのだ」と鈴木氏は説明する。その手伝いをするのがインターネット カレッジであり、そこでの教育は世の中へのアウトプットを前提にしている。

「ほかの企業でもインターンシップや学生向けの支援プログラムなどが存在するが、インターネット カレッジでは、サイバーエージェントだからこそできる独自性を追求した」(鈴木氏)

 インターンシップについては、これまでサイバーエージェントでも積極的に取り組んできており、約4割のインターンシップ生が同社に入社するほど高い内定率を上げている。こうしたところで培われたノウハウなどもインターネット カレッジに盛り込まれているのだ。

ネット業界の登竜門に

 では、その具体的な教育内容とは何か。インターネット カレッジは3つの特徴を掲げている。テクノロジーからメディア、広告などのビジネスを網羅的に学習する機会を提供する「総合学習」、役員陣、子会社社長、各部門のマネジメント層もカレッジに参加する「経営視点」、そして、単なるインプットや学習ではなく、アイデアをカタチにして、優れたサービスができればどんどん市場にリリースする機会を与える「創造前提」である。

 インターネット カレッジはビジネススクールのように定常的な授業があるのではなく、2週間のサービスプランコンテストと、2週間の開発合宿がセットになった「テクノロジーキャンプ」などのさまざまな短期コースが寄り集まって形成されている。コースは大きく、エンジニア向けの「テクノロジープログラム」、クリエイター向けの「クリエイティブプログラム」、メディアの企画営業やプロデューサー向けの「ビジネスプログラム」の3つに分かれている。

 学生の募集に関して、サイバーエージェントの社員らがブログやTwitter、Facebookなどソーシャルメディアを中心にPRするほか、大学の研究室やキャリアセンターなどへの地道な営業活動も行っている。応募してきた学生に対しては、書類選考や面接を経て、メンバーを選抜する。採用基準については、特にサイバーエージェントに入社したいかどうかは問わない。それよりも、物事を創造することにハングリーで、情熱溢れる人材を求めているという。

 さらに、産学連携に基づいたプログラムも積極的に推し進めていく。例えば、はこだて未来大学とはテクノロジーキャンプの枠組みで協同。講義は函館のキャンパス内で行い、開発演習はサイバーエージェントの東京オフィスで実施した。学生が都内で実習するための交通費や宿泊費などはすべて同社が負担した。今後も、さまざまな大学との連携を強化し、こうした取り組みを拡大していく方針だ。

 「将来的には、このカレッジがインターネット業界のプロフェッショナルを目指す学生の登竜門になってほしい。世の中に新しいものを生み出す、創造的な人材を輩出するような場にしたい」と鈴木氏は力強く語った。

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