IaaSの選び方 ハイブリッドで活用する方法適材適所のクラウド選び(2/2 ページ)

» 2011年09月08日 08時00分 公開
[近藤孝至, 水谷安孝,KVH]
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賢いクラウドの使い方

 このような、「部分的にクラウドへ移行してメリットを得たい」という場合に適しているのが「ハイブリッドクラウド」です。既存システムや自社構築のシステムとクラウドとを共存させるのです。

ハイブリッドクラウドにおける要件の考え方

 どのように共存させるのかという鍵になるのが、「インターネットに依存しない回線サービス」と「データセンターとの連携」です。

 上図のように、インターネット以外の接続を利用して既存のシステムに対して接続します。インターネットを経由しない閉じたネットワークになりますので、セキュリティの懸念もありません。もちろんインターネットVPNを利用してインターネット経由で連携させる方法もありますが、遅延などを考慮すると、特にエンタープライズのシステム同士の接続には不安が残ります。専用線や広域イーサネットであれば、このような心配はありません。さらに、この接続をデータセンターで借りているラックへと延ばすことで、データセンターに設置したシステムと連携することも容易にできるのです。

 このようなネットワークサービスやデータセンターとの連携を可能にするサービスは、これらのサービス基盤をもつ通信キャリアが提供するクラウドでは一般的です。しかしながら、他のプロバイダーのサービスではあまり見かけません。このようなサービスの一例としては、KVH IaaSの「外部接続」オプションがあります。クラウドに設置されたVLANセグメント(「レイヤ2スイッチ」とイメージしていただければ結構です)を、データセンター内のラックへ構内配線で接続したり、ユーザーのオフィスに広域イーサネットで延伸したりすることができます。

 上図は実際に利用されている例です。金融情報ネットワークとの接続は非常に厳しい性能要件が求められます。また接続機器も指定されていて、直接クラウドへ接続することはできません。しかしながら、情報を受信し、処理するシステムは非常にクラウドに向いています。データが日々増大するため、ストレージ容量の容易な拡張が求められ、データ処理の時間を圧縮するために、サーバを複数台並列にして同時処理をさせるスケールアウト型であることがその理由です。

 データセンターに金融情報ネットワークとの接続部分を構築して、その要件に応えつつ、サーバ部分については、クラウド化して両者を接続する構成となっています。サーバをわざわざ自社で構築することなく、クラウドを活用してコストを抑えることができたケースです。

 システムを部分的にクラウド化するこのような構成は、既に多くの企業が利用しています。これまでは端的に、クラウドに「する」「しない」といった議論が目立ちましたが、今では「どう有効に使っていくか」「どこにうまく活用していくか」というようにユーザー企業の意識が変わってきているのです。クラウドサービスはIaaSだけではなく、アプリケーションも含めたタイプや、ミドルウェアを提供するタイプなどもあります。クラウドを適材適所で活用すれば、電力やトータルコストの削減も実現できるでしょう。

筆者紹介

近藤孝至――システム&テクノロジー本部 サービス・ストラテジー&デザイン部 ディレクター。2003年入社。セールスエンジニア部門長を経て、データセンター、ITマネジメントサービスのサービス開発に従事。現在は「KVH IaaS」開発、提供における責任者を務める。

水谷安孝――マーケティング本部 マーケティングコミュニケーション部 シニアマーケティングエグゼクティブ。約6年間、Microsoft製品のアウトソースサポート業務を経て2007年に入社。KVHサービスデスクのスーパーバイザーおよびサービス企画担当を経て、現在は「KVH IaaS」をはじめとしたクラウドサービスのマーケティング担当を務める。


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