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覆面調査から営業代行まで 全国13万人のスタッフを支えるシステム基盤とは江口ともみのIT活用ビフォーアフター(1/2 ページ)

飲食店の覆面調査を行うメディアフラッグは、全国に抱えるスタッフの管理強化などを目的にシステム基盤を刷新。独特な業態である同社ならではのカスタマイズがポイントだったという。

» 2011年09月13日 08時00分 公開

 コンビニエンスストアやファミリーレストランなど複数の店舗をチェーン展開する企業にとって、各店が一定以上の品質を保ち、顧客に対してきちんとしたサービスを提供しているかどうかは大きな関心事である。当然、本部からの社員が巡回したり、店舗スタッフから報告書を上げさせたりするわけだが、これだけではチェックしきれない部分が大きい。

 そこで企業が活用するのが、一般客に紛れ込んで店のサービスレベルなどをつぶさに調べる覆面調査である。これによって、顧客目線で店の良し悪しを判断でき、問題点を浮き彫りにすることが可能になるのだ。

 こうした調査サービスなどを提供して、企業のマーケティング支援を行っているのが、東京・渋谷に本社を構えるメディアフラッグである。福井康夫社長は「ここ数年で依頼案件は急増しています」と話す。同社の成長の秘けつについて、タレントの江口ともみさんが聞いた。

コンビニ最大手で培った経験を生かす

江口 わたしもよく友人とレストランに行ってお店を評価するのが好きなのですが、そうした市場調査などを専門的に行っているメディアフラッグの事業内容について、まずはお聞かせいただけますか。

メディアフラッグの福井康夫社長 メディアフラッグの福井康夫社長

福井 当社は流通業やサービス業の店舗に特化したマーケティングを支援する会社です。具体的には「リアルショップリサーチ」と「リアルショップサポート」の2つの事業に分かれています。前者は、飲食店やコンビニエンスストアなど、店舗をチェーン展開する企業が、本社の指示が店舗に行き届いているか、きちんと顧客対応しているかどうかを覆面調査する際にお手伝いします。

 後者は、例えば食品メーカーが新しい商品を発売するときに、彼らに代わって店舗で販促キャンペーンコーナーを設営したり、商品を陳列し販促物を設置したりというサポートを行います。また、ラウンダーによる店舗巡回によって、自社の商品が店頭でどのように売られているかといった調査なども行います。

江口 以前であれば、こうした仕事はそれぞれの企業が自分たちで考えながら行っていたはずですよね。なぜこのような事業を立ち上げようと思われたのですか。

福井 20〜30年前とは異なり、現在は店舗をチェーン展開する企業が増えていますし、販売するモノやサービスは山のようにあふれています。お客様に足を運んでもらうためには他社との競争に勝っていかなければなりません。そうした中で店舗や店頭をより良くするサービスが求められているのです。それは飲食や物販に限らず、顧客との接点がある店舗、例えば銀行なども対象になります。

梅原 また、こうしたビジネスに着目した背景として、福井とわたしが共にセブン-イレブン・ジャパン出身であることも関係しています。セブン-イレブンはマーケティングにおいて一般的にPOSシステムが優れているというイメージがありますが、実はお客様とのコミュニケーションを最重視しています。スーパーバイザーは一人あたり7、8店舗を担当し、週に2度巡回して本部からのアドバイスなどを基に売り場作りを行います。セブン-イレブンのコンセプトは現場に集約されています。

 セブン-イレブンを離れて改めて感じたのは、日本の流通は、メーカーの意向を反映した売り場作りがなされていなかったし、お客様が商品を買いやすい売り場にもなっていませんでした。そこにこそビジネスチャンスがあり、セブン-イレブンで学んだフィールドマーケティングのノウハウが活かせられるのではないかと考えました。

全国に13万人のスタッフを配備

江口 メディアフラッグならではの強みとは何でしょうか。

福井 1つは、ITを活用してより効率的、効果的に現場を把握し、現場から上がってきた情報をデータベース化していることです。もう1つは、全国で約13万人のスタッフネットワークを持っていることです。スタッフのうち毎月約4000人が1万〜1万5000もの店舗を調査したり、販促支援したりしているわけですが、彼らは当社の経営理念を共有するとともに、顧客企業の意向をきちんと理解した上で働いています。ITと人的ネットワークという双方をうまく活用しているのが大きな強みといえるでしょう。

「覆面調査にとても興味がある!」と話す江口ともみさん。装飾品協力:ネックレス…DIO(サン・シャレーヌ)、ピアス…LANVIN COLLECTION(栄光時計

江口 リアルショップリサーチにおいては、調査するスタッフの方々の“素”の意見というのも大切だと思う一方で、調査レポートの品質も保っていかなければならないはずです。そうしたトレーニングはどのようにされているのでしょうか。

福井 調査の中で客観的に判断しなければならない部分は、しっかりとマニュアルを作成して、それに基づき公平な目線を持って調査してもらうようにしています。また、インストラクター、社員合わせて100人ほどが全国のスタッフを適宜教育しています。新人スタッフの研修はもちろんのこと、例えば、地方銀行の窓口サービス調査など難易度の高い案件であれば、対面でのトレーニング研修などを別途実施しています。

 業務の面でも工夫しています。スタッフには調査が1店舗終わるごとにWeb上のレポートシステム「Market Watcher」を使って、その場で報告させているのですが、それに対して「主観が入っている」「調査のポイントがずれている」などリアルタイムで訂正依頼をかけることで、レポートの精度をより向上させています。

江口 過去に企業が行っていた調査というのは、スタッフが調査用紙に書き込み、それを回収し、中身を読み、データに打ち込んでいたので、非常に時間がかかっていました。やはりスピードはこうした調査において重要なのでしょうか。

福井 調査の品質や内容はもちろんなのですが、スピードはさらに重要です。特に飲食店などでは従業員の入れ替わりが激しいため、調査結果が出るまでに1、2カ月もかかってしまうと、そのころには既に従業員が辞めているというケースも多いわけです。当社は、早ければ調査の翌日、遅くとも1週間以内には前述の「Market Watcher」に調査レポートをアップし、すぐに顧客企業が閲覧できるようにします。1週間以内であれば、調査時の状況を鮮明に覚えていて、店舗の問題解決や改善につなげることができます。ITを活用したスピーディーな対応は、もはや当社のビジネスに欠かせないですね。

江口 メディアフラッグは設立して今年で8期目に入ったわけですが、事業が成功していると実感するようになったのはいつごろからでしょうか。

福井 当社のビジネスはある程度の規模にならないと利益が出てきません。当初は調査スタッフの数が少なく、大型の案件をこなすことは難しかったわけです。3、4年前から一定の規模を超えてきたので、ノウハウが蓄積され、提供できるサービスも充実してきました。それに伴い、仕事の依頼も増えています。

江口 企業からの調査依頼が増えているのは、時代背景も影響しているのでしょうか。

福井 おっしゃる通りです。景気が悪くなり、消費が縮小している中、お客様はより良い売り場で買い物をしたい、より快適な店で食事をしたいといったニーズが高まっています。東日本大震災以降はこうした動きが顕著です。質が高く人気のある店にはどんどんお客様が足を運び、サービスが悪く不人気の店には誰も行かなくなっています。取捨選択が進み、その差は今まで以上に目立つようになりました。

 こうしたお客様のニーズに合わせて、メーカーや流通も変わっていく必要があり、そこで当社を選んでいただく機会が増えています。

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