“使える”ユニファイドコミュニケーションの展開を狙うAvayaMaker's Voice

ビジネスコミュニケーションの活性策として注目されたユニファイドコミュニケーションだが、市場でのブレークスルーはいまだに起きていない。「現状打破を狙う」と意気込むAvayaが最近の取り組みを語った。

» 2011年09月20日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]
エンツオ・シニョーレ氏

 企業ITの分野に「ユニファイドコミュニケーション(UC)」が登場して久しい。連絡をしたいときに、「相手がいない」「手段がない」「遠く離れた場所にいる」といった事情で生じるコミュニケーションのロスを解消し、個人や組織の生産性を高める。さらにはコストも削減できると、ベンダー各社がユーザー企業に訴求し続けてきた。

 ユーザー企業にそうしたメリットは浸透しているものの、ベンダーが提案する“本格的な”UCを導入しているところはまだ少なく、UCの“一部”を取り入れているというのが実情だろう。本格的なUCが広がらない大きな理由は、(1)投資対効果が見えづらいので優先度が低い、(2)PBXを含む通信インフラの大規模な刷新が必要、(3)マルチベンダー環境での統合の難しさ――という点で、それ故にUCの“一部”を取り入れ、必要があれば拡張するといったアプローチが取られている。

 米Avayaは、2010年(日本では2011年3月)にUCの基盤製品「Avaya Agile Communication Environment(Avaya ace)」を発表して、「業務プロセスとコミュニケーションを統合した“本当の”UCを実現する」と表明した。その後の進展をUCプロダクトマネジメント担当バイスプレジデントのエンツオ・シニョーレ氏が説明してくれた。

 シニョーレ氏は、同社のUC製品の柱が「コンテクスト型のコラボレーション」や「ユビキタスなコラボレーション」をユーザーが“きちんと”体験できることだと強調する。

 ユーザーが直に利用するUCの機能は、電話やメール、インスタントメッセージ、プレゼンス(在席確認)、Web・ビデオ会議、業務アプリケーション連携など。UCに対してユーザーは、これらの機能を自席や会議室、外出先のさまざまな場所で、PCやモバイル機器、卓上端末などで自在に利用でき、さらには、クリアな音質や高精細かつ明瞭な映像であること、コミュニケーションが途切れないこと求める。しかし、ユーザーと製品の両面でなかなか実現できていない。

 ユーザー側の課題としては、上述したような理由からUCのメリットを引き出せる環境になっていないことが挙げられる。製品側の課題としては、やり取りする相手先の通信事情が良くないといった外的な要因に左右されてしまうという点だろう。例えば、メーカーが海外の製造委託先と製品の設計について打ち合わせをする場合、途中の通信帯域が細ければ、音声と映像、設計図面データを交えながらリアルタイムにやり取りすることは難しい。途中で通信が途切れ、再接続にも時間がかかるとなれば、ユーザーの不満が募る。いずれにもしてもユーザーは、ベンダーのうたうUCのメリットを得られないとして、「UCは使いづらい」というレッテルを貼ってしまう。

 シニョーレ氏は、Avaya aceでこうしたUCにまつわる数々の課題の解消に努めているとした。Avaya aceの中核になるのが「SIP(Session Initiation Protocol)」の技術であり、まず、コミュニケーションが途切れるというシーンをなくすという。ネットワークの状態や通信事情をAvaya ace側で常に把握、解析し、コミュニケーションが途切れそうになれば、帯域をコントールし、う回路も確保して、確実につなぎ続ける。ユーザー体験も状況に応じてベストなものを実現させる。

 さらには競合製品も取り込むようにした。仮にユーザーが直に利用する端末が他社製でも、コミュニケーションを成立させる根幹部分をAvaya aceにすればベンダーの違いを吸収できると、シニョーレ氏はアピールする。もちろん、ユーザーが直に利用する端末環境をAvaya製品にすれば同社がうたっているUCのメリットをより多く得られるとのこと。

 ユーザー体験の部分では「Avaya Flare」というポータル機能の展開している。これは直観的な操作性とコンテクスト型が特徴という。タッチ操作が可能な端末なら、連絡先一覧から相手のリストを選んで電話やメールなどで発信するという操作を指先だけでできる。コンテクスト型という部分では、相手とこれまでにやり取りした履歴や内容を蓄積できるので、例えば、会議に途中参加する場合でも事情に状況を把握してスムーズに加わることができるという。

 AvayaのUCは、シニョーレ氏が言うように従来の課題の多くを解消したものになるようだ。しかし、ユーザーがメリットを得るには、やはり通信インフラを刷新させる必要があるという。シニョーレ氏はこの点について、UCの本格展開に踏み切った企業では平均18カ月で投資を回収していると説明している。UCのメリットを最も引き出しやすい企業は、従業員が4000〜5000人規模で、多数の拠点を持つようなケースだという。

 東日本大震災を契機に、ユーザー企業では事業継続性を強化する施策に関心が高まり、ベンダー側もその手段の1つとしてUCの提案を活発化させている。シニョーレ氏は、「見て、触れていただきたい」と控えめ述べるにとどまったが、ユーザー体験に重きを置いたという製品の実力に強い自信を抱いているようだ。

Avaya Flareを搭載したタッチ操作式のデスクトップ向け端末。iPad/iPad2でもほぼ同様の操作ができる

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