ヘッドセットやハンドセットとUCの関係Maker's Voice

ユニファイドコミュニケーション(UC)の使い勝手を左右するポイントの1つが「ユーザー体験」とされる。ヘッドセットメーカー大手のPlantronicsに、コミュニケーションツールとUCの連携を聞いた。

» 2011年09月26日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 最近のスマートフォンブームを背景に、都心の街中を歩くビジネスマンの中で、耳元に小さなヘッドセットを装着している姿を見かける機会が増えている。Bluetoothを介してスマートフォンと接続し、ハンズフリーで会話ができる便利さやファッション性が徐々に浸透しつつあるようだ。

 米Plantronicsは、企業IT市場でのユニファイドコミュニケーション(UC)の広がりに注目して、ヘッドセットやハンドセットとUCシステムとの連携を進めている。同社でアジア太平洋地区のセールス・マーケティング バイスプレジデントを務めるスーザン・ハンセン氏と、日本プラントロニクス 社長の村田浩志氏に話を聞いた。

スーザン・ハンセン氏と村田浩志氏(右)

 Plantronicsが主力としているのは、業務分野のコミュニケーション。航空管制での管制官とパイロットの交信といった特殊なものから、コンタクトセンターのオペレーターのインカムまで、その用途は多岐にわたる。アポロ11号の月面着陸で、二ール・アームストロング船長と地上の管制官とのやり取りにも同社製品が使われた。近年はビジネスコンシューマーを中心にヘッドセットでも人気を集める。

 UCでは、ユーザーが最も触れる機会の多い端末の使い勝手がその利用に大きく影響するといっても過言ではないだろう。この点についてハンセン氏は、「例えば、ヘッドセットでは都会の雑踏の中でも相手の声をはっきり聞き取れるクリアな音質や、体格が異なっても違和感のない装着性が重要なポイントになる」と話す。

 音質については、同社製品の利用実績が示すように、宇宙空間のような極めて特殊な環境でも円滑にやり取りできるレベルにあるという。装着性に関して、同社では地域ごとのユーザーの特徴を分析し、デザインに反映させている。

 UC分野では、同社はAvayaやCisco Systems、IBM、Microsoft、Polycomといった主要なUCベンダーと協業関係を構築している。特にAvayaとはコンタクトセンター向けシステムでの協業もあり、約40年にわたって共同での技術開発や製品展開を行ってきた。

 最近の製品ではUC連携機能を採用したものが多いという。例えば、PCと合わせて利用するハンドセットではハンドセットのスイッチを押すだけで、PCのソフトフォンを介して相手と会話できる。ヘッドセットでは、ユーザーの動作に応じてUC側でプレゼンスを切り替えられる。ヘッドセットを耳に装着いれば、UCが相手側に「在席」と通知し、ユーザーが耳から離して机上に置けば、UCが自動的に「不在」と相手に通知する。

ヘッドセットの最新モデル。耳に装着していても違和感がなくスタイリッシュなデザイン。デスク利用型(右)では本体もスタイリッシュな外観

 村田氏は、3月の東日本大震災以降にUCの企業ニーズが着実に高まりつつあると話している。震災時に多くの固定電話や携帯電話が利用できなくなり、社員の安否確認に手間取るケースが相次いだ。しかし、インターネット回線は電話のような状況にはならなかった。IPベースのUCシステムは、こうした災害時の連絡手段、また、企業の海外展開の際に通信コストを抑制する手段としても注目を集める。震災以前からUCとの機能連携を進めてきた同社だが、震災をきっかけに、UCでコミュニケーションの活性化を図る企業ニーズを獲得したい考えだ。

 前述したヘッドセットを装着して街中を歩くユーザーの姿は、欧米やアジア各国と比べると、日本ではまだ目にする機会が少ない。村田氏は、「日本は携帯電話で通話をするよりもメールを使う場合が多いのではないか」と分析する。自動車の運転でハンズフリーを使う機会が広がったように、今後はUCとの組み合わせで、ヘッドセットを目にする機会がより増えていくかもしれない。

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